ノウハウ手帳

イチゴ栽培 アミ果対策(春先の着色不良果対策)

近年、イチゴ「ゆうべに」など大玉品種で相談の多いのが春先の着色不良(アミ果)です。痩果(つぶつぶ)のまわりだけ色が乗り、その間が淡いまま残るので、果面が網目のように見える場合などが典型的です。基本的には気温が高くなることにより発生しやすい着色不良の症状です。

着色不良(アミ果)の原因を知る

熊本県の分析では、着色不良果のカルシウム含有率は0.50%、正常果は0.69%。正常果を100とすると72しかない。

なぜカルシウムが足りないと色が乗らないのか、詳しい仕組みまでは分かっていません。ただ、カルシウムは細胞壁の構成成分であり、光合成産物や養分の転流にもかかわっていますから、細胞の成熟に大きくかかわっている成分です。カルシウムの不足は、大きな発生要因の一つと考えて良いでしょう。

ですから、対策のアプローチは単純です。果実にカルシウムを届けること。基本的な対策技術について、順に抑えていきましょう。

手順① 徒長抑制(草高のコントロール)

熊本県の調査においても、窒素施肥量を増やすほど、着色不良果は増えることが明らかとなっています。大玉果の生産には積極的な窒素施肥が欠かせませんが、過多となると着色不良を招きます。徒長による光合成量の低下や、糖類の蓄積が不足することが原因です。

  • 密植を避ける
  • 施肥量、定植時期、マルチ、ビニル被覆、保温は栽培指針を守る
  • 春先は草高25〜30cm以下を目安に、日中は積極的に換気して過繁茂を防ぐ

株が茂りすぎると、カルシウムは勢いのある新葉に優先して運ばれ、果実まで回らないことも着色不良果の発生メカニズムの一つでしょう。果実はもともと蒸散量が少なく、カルシウムが届きにくい器官であるため、草勢を抑えることは、カルシウムを果実に残すということでもあるのです。

手順② かん水は少量多回数で

熊本県試の研究により、かん水量を変えた試験では、差がはっきり出ています。

かん水量着色不良果発生果率
多かん水11.1%
中かん水1.3%
少かん水0%

土壌が過湿になると根が傷み、吸水も蒸散も乱れます。カルシウムは水と一緒に蒸散の流れに乗って運ばれるため、この乱れがそのまま果実への供給不足につながる。

  • 少量多回数を基本とし、1回の多量かん水と過度の乾燥をどちらも避ける
  • 天気予報を確認し、降雨が予想される場合はかん水の間隔と時間を調整する
  • 最低気温が10℃以上になったら夜間も換気部を開放し、湿度を下げて蒸散を確保する

換気は湿度対策の作業に見えますが、カルシウムを果実へ送り届ける作業でもあります。

手順③ 窒素は「量」だけでなく「形」を選ぶ

窒素の形態についても、実は非常に重要な研究報告があります。窒素の施用量を同じ(N50mg/株/回)にそろえ、液肥の種類だけを変えた比較で、同じ窒素量にもかかわらず、最大約20倍もの発生率が確認されました。

液肥の種類着色不良果発生果率3/10草高
有機入り尿素複合液肥19.7%27.5cm
無機尿素複合液肥17.9%27.2cm
アミノ酸系液肥1.1%26.8cm
水(液肥なし)1.3%26.5cm

草高がほぼ同じことに注目してください。これは「窒素が多くて茂りすぎた」という話ではありません。速効性の尿素系窒素そのものが、果実のカルシウムに影響していると読める結果です。しかもアミノ酸系液肥の1.1%は、窒素を与えていない水区(1.3%)と同じ水準でした。

こちらも詳しい仕組みは分かっていません。ただ、尿素やアンモニア態の窒素が根で急激に吸われるとき、カルシウムの吸収が押しのけられるという説明はよくなされます。追肥は、量を抑えるだけでなく、ゆっくり効く形に変える。現場で打てる手として、これは覚えておく価値があります。

手順④ カルシウム資材は、症状が出る前に

県の試験では、カルシウム剤の施用により着色不良果の発生が軽減され、特に葉面散布の効果が高いという結果が出ています。ただし、効果が現れるまでに施用後2週間程度必要です。

カルシウムは、植物体内をほとんど移動し直せない養分です。一度細胞壁に組み込まれると、他の部位へは動かないのです(固定)。すでに色が乗らなかった果実に、後から効かせることは難しいと考えるべきでしょう。

  • 症状を確認してからでは遅い。予防的に、継続して施用する
  • 定植後の高温時は肥料の溶出が早まり多肥条件になりやすいため、特に注意する
  • かん水施用と葉面散布を併用する

サンビオティック資材での効果的な対策

上の①〜④に対して、弊社では次の組み合わせをご案内しています。

追肥をアミノ酸系に切り替える ― 強力アミノ酸液肥「糖力アップ」

イワシやサバなどの魚エキス、天然黒糖、海藻エキスを原料に、酵素で低分子化したアミノ酸液肥(N:P:K=5:1:1、特殊肥料)。手順③でいうアミノ酸系液肥にあたるタイプです。

アミノ酸は有機態窒素です。アンモニア系の窒素と違い、カルシウムの吸収と拮抗しにくいと考えられます。また植物は無機態窒素を吸収すると、それをアミノ酸やタンパク質に変えるために、光合成でつくった糖とエネルギーを使います。有機態窒素なら、その工程を省いて直接使えるため、糖の節約=糖の蓄積にもつながるのです。糖は変化して色素になるので、色が良く、そして美味しいイチゴづくりの強い味方となります。

根張りと土壌環境を整える ― 微生物資材「菌力アップ」

約250種類の好気性土壌微生物を配合した資材。バランスの良い肥料成分の吸収や、乾燥・過湿を防ぐ物理性に優れた土が、健康な生育の土壌・基盤です。カルシウムを吸うのは根ですから、根が健全でなければ①〜④のすべてが効きにくくなります。土壌環境の改善と発根促進が期待できます。

細胞壁の材料を切らさない ― 有機酸キレートカルシウム「本気Ca(マジカル)」

キレートカルシウム8.95%(CaOとして)に加え、水溶性ホウ素1.15%を含む液体肥料。カルシウムは細胞壁のペクチンと結びついて組織を固め、ホウ素はそのペクチン同士を橋渡しします。材料と留め具の関係で、両方そろって細胞壁が丈夫になる。市販のカルシウム資材でホウ素まで入っているものは多くありません。

資材施用方法希釈倍率目安量
本気Caかん水施用500〜1000倍反当2kg
本気Ca葉面散布1000〜2000倍反当2kg
  • 基本的には定期的に潅水に組み込み、症状が出やすい圃場や品種では、葉面散布も並行して行う。
  • 春先のカルシウム施用は、軟果対策にも有効。

おわりに

4つの手順は、ばらばらの対策ではありません。すべて「果実にカルシウムを届ける」という一つの目的でつながっています。

なかでも手順③の液肥の形は、施肥量を守っていても見落としやすいところです。追肥を見直すだけで結果が変わる可能性がありますので、ぜひご検討ください。


参考
熊本県農林水産部 農業研究成果情報 No.768(平成29年5月)「イチゴ『ゆうべに』における着色不良果の発生条件と対応策」農業研究センター農産園芸研究所野菜研究室
熊本県農林水産部農業技術課 普及振興企画班 公開資料