良い堆肥・ぼかしの見分け方
良い堆肥・ぼかしとは
堆肥およびぼかし肥料は、一般的に土壌にとって大変有用なものです。どのような農業、園芸のテキストを読んでも堆肥の重要性が書かれています。しかし、一方で先進的な農家の中には、堆肥を一切使わず、堆肥は百害あって一利無し、と断言する方もいらっしゃいます。(ここでは、堆肥とぼかし肥料はほぼ同義として扱います。ぼかし肥料は、一般に肥料成分の高い堆肥と考えてください。)
このギャップは、いったい何でしょうか?
それは、ひとえに「腐熟度」の問題です。堆肥は、たんぱく質やアンモニアなどの成分の高い原料を混ぜ合わせたものですから、微生物によって、これがよく分解され再合成され、全体に均一になじんでいないと、ガスや高濃度のアンモニアなどが根を傷めることになるのです。この分解・再合成がうまくいっている状態を「発酵」といい、失敗している場合を「腐敗」といいます。また、発酵の進み具合を「腐熟度」といいます。
さあここで、問題が発生します。
いったい、どれくらいの腐熟度であれば、植物に害がなく、そして植物に有益なのでしょうか。つまり品質評価の問題です。
この問題は、なかなか難しく、確定した方法があるわけではありません。それは、堆肥にした原料によって、判定方法がまちまちだからです。しかし、ここでは一般的な品質評価の方法をご紹介しましょう。
堆肥・ぼかしの品質評価法
1.におい判定
まず一番にわかりやすいのは、においで判定する方法です。堆肥を一握り手に取り、においをかいでみましょう。
次に、ジョウロで水をかけて、一晩おいた状態の堆肥のにおいをかいでみましょう。より正確に分かります。
- くさい、どぶの様なにおい
これは、腐敗臭です。害があるので使えません。 - アンモニア臭、刺激臭
これは、未熟堆肥です。 - 木(針葉樹)のにおい
これは、バーク由来のにおいで、未熟堆肥です。 - 甘酸っぱいにおい
これは、未熟堆肥または嫌気発酵の堆肥です。 - 香ばしいにおい
これは、8割がた分解が進み、発酵が終わりかけています。 - 無臭、土のにおい
これは、発酵が終わり、ほとんどの有機物の分解が進んだ状態です。
以上の中で、香ばしいにおい、または無臭、土のにおいがするものを選ぶことが重要です。
とくに、原料に植物性の原料が多い場合は、安心して使用することができます。
メーカーの品質管理の体制によっては、同じ商品であっても、腐熟度がまちまちの場合もあるので、購入堆肥の場合は、ロットごとに見極めましょう。
2.触感・目視判定
堆肥を手にとって、よく見てみましょう。原料に何が使われていますか?
よく腐熟した堆肥やぼかしは、原料に何が使われているかが分からなくなっています。これが「ぼかし」の語源です。さまざまな原料がよく腐熟し、何が何だか分からなくなってぼけている。だから「ぼかし」です。
原料に何が使われているかわかる場合は、注意が必要です。特に、木質原料を使っている場合は、わかりやすいですね。バーク、のこくず、もみがらなど、こういった原料が、原形をとどめているということは、それだけ微生物による分解が進んでいないことを示しています。
さらに原形をとどめているものを、手ですり潰してみます。手で容易にすりつぶせるものは、繊維質が残っているだけですが、固くて潰せないようなものは、分解がほとんど進んでいないということです。
こういった堆肥は、においがいいので、安心して使っている方が多いですが、実は植物への害が心配されます。主なデメリットは、下記のとおりです。
主なデメリット
- 土壌中で分解が進むときに、窒素肥料を消費し、植物への窒素供給が不足する
- 最初は柔らかいが、水にぬれるたび土が固く締まりやすく、通気性が悪くなり、根の呼吸を妨げる
- 大量に土壌に混和した場合、未分解の繊維を好む病原菌(モンパ病、萎凋病、青枯病など)の住みかとなる
また、一般的には黒い色をしているものが腐植物質が多く、腐熟度が高いものが多いです。
3.お湯の抽出で判定
堆肥を透明のコップに1/10程度入れ、お湯を注いでみましょう。10分ほど経過したところを観察します。
まず、水面に多くの堆肥が浮かんでくるものは、木質原料などの分解が十分に進んでいないということです。これは、通常はほんのわずかに浮かぶものがありますが、ひどいものだと堆肥の半分程度がプカンと浮くものもあります。これはNGです。
次に、お湯に腐食物質が溶け出し、褐色のグラデーションが観察できると思います。これが、コップの底面にのみ溶出している場合は、未熟堆肥です。コップ全体に褐色を帯び、徐々に下方に濃くなるグラデーションが観察できる場合は、栄養豊富な良い堆肥といえます。
さらに、この抽出液を用いて発芽実験を行う方法もあります。コマツナなどの種を浸漬し、発芽率や根の状態をみるためです。直播の畑に用いるような堆肥の場合は、こういったチェックも必要かと思います。
以上のように、比較的簡単なチェック項目でも、十分に堆肥の品質を評価することができます。品質評価をし、有益な堆肥を選択することが、病害予防、収量アップにとても重要です。
未熟堆肥の再生・利用法
やむを得ず未熟堆肥を利用する場合は、注意が必要です。
未熟堆肥には、病原菌の繁殖を招いたり、植物の根に障害を引き起こしてしまうことが多いです。
特に畜産堆肥や生ゴミや下水のコンポストでは、未熟堆肥が多く出回っています。必ず次の対策をとりましょう。
未熟堆肥を再生する場合
菌力アップ200倍希釈液を全面に散布し、混和します。
このとき、できれば米ぬかやふすま、裁断わらなどを1割程度混ぜます。
数日おいて温度が上昇するようであれば、温度が下がるまで1週間おきに、切り返しを行います。
温度が上がらない場合でも、においなどの判定により未熟状態と思われる場合は、すこし乾燥させて1年間寝かせると良い堆肥に変わります。
未熟堆肥を畑に施用する場合
やむを得ず未熟堆肥を畑に施用する場合は、施用後に菌力アップ200倍希釈液を全面に散布します。
その後、土壌混和しないか、ごく浅めに土壌混和します。深めに混和すると病害発生を招きます。