太陽熱消毒(養生処理)マニュアル
太陽熱消毒とは、太陽の熱と微生物の発酵熱で土壌を高温にし、病原菌やセンチュウなどを駆除する方法です。
メリットとポイント、サンビオティックおすすめの方法をご覧ください。
太陽熱消毒処理のメリットとポイント
太陽熱消毒処理のメリット
- 低コスト
薬剤消毒では7〜9万円/10aかかるが、太陽熱処理なら2〜3万円/10aと格安! - 安全
人にも土にも作物にも安全で効果が高い - 土づくりの効果
土壌団粒化も促進し土づくりになる!
太陽熱消毒処理のポイント
- 天気
7〜8月の晴天が1週間以上続く日がベストタイミング! - 有機物+水+菌
好気性微生物の爆発的な繁殖が重要! - 透明マルチ
二重被覆できればベスト!
太陽熱消毒処理の概要
太陽熱消毒処理の方法には大きく分けて2タイプありますが、サンビオティックでは「改良法」をおすすめしています。
一般法(畝立て前処理)
薬剤消毒と同じように太陽熱処理を行ってから、肥料を施用し、畝立て、定植という順番で作業します。
メリット | ・一般的で分かりやすく、失敗してもやり直せるので安心。 |
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デメリット | ・一工程で50日程度を要し定植が遅れるなどの支障がある。 ・潅水チューブを敷設しないで実施する場合は、土がぬかるみ、透明マルチの被覆が作業しづらい。 ・消毒後に畝立てをするため、地温が上がらず消毒できなかった土層を掘り上げ、消毒効果を無くしてしまうリスクがある。 |
上の表は横スクロールで確認できます。
改良法(畝立て後処理)
★サンビオティックおすすめ★
堆肥や元肥などを施用し畝立て後、太陽熱処理を行います。
メリット | ・潅水チューブを使用するため、確実に水分調整ができ、処理の効果が安定する。 ・一工程30〜40日程度と一般法より期間短縮し作業軽減。 ・消毒後の畝をそのまま使うため、病原菌汚染のリスクが低く、雑草も減る。 ・土づくりの効果が高い。 |
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デメリット | ・失敗したとき、やり直しがしにくい。 ・化学肥料(水溶性)の元肥を使用した場合、流亡しやすい。 |
上の表は横スクロールで確認できます。
太陽熱消毒処理(養生処理)の作業手順
前作残渣片付け
前作残渣は、地際から刈り取り数日間乾燥させる。
トマトやキュウリなどツル性のものは、20cm程度に裁断し、トラクタに巻き込まないようにする。
前作で土壌病害(伝染病)を発症した場合は根ごと引き抜き、圃場外に持ち出し、処分する。
有機物施用
有機物は、バーク堆肥、裁断わら、もみ殻、米ぬか、ふすま、落ち葉、廃菌床、茶殻、コーヒー粕、などの植物性のものが望ましい。その他、牛糞堆肥や鶏糞堆肥、豚糞堆肥、馬糞堆肥なども使用できる。
10a当たり施用量は、バーク堆肥・牛糞堆肥は2〜3t、鶏糞堆肥・豚糞堆肥は500kg、その他は1〜2tを目安にする。
土壌pH調整資材施用、マグネシウム・微量要素の補給
土壌pHは、微生物の繁殖を促すため大変重要なため、必ず調整資材を施用する。土壌pHを計測し、最適pH6.0〜6.5にするために必要な資材の量を計算する。資材は、苦土石灰や牡蠣殻石灰、または転炉スラグ肥料などを使用する。
一般的な必要量は10a当たり100〜200kgで、pHを1.0上げることができる。苦土や微量要素の土壌分析をしている場合は、これも参考にして、不足するものがあれば(必ず、ク溶性の資材を)施用しておく。
元肥の施用
栽培マニュアルや地域栽培暦に基づき、元肥を施用する。
改良太陽熱処理(畝立て後処理)の場合は、施肥後大量の水を流すため、元肥に水溶性の化学肥料を使用すると、肥料成分が流亡してしまい、肥料代が無駄になる可能性があるため、有機質肥料を中心に施肥設計を組み立てる。
サンビオティックのマッスルモンスターや鈴成は、有機質中心であるため使用に適している。
なお、太陽熱処理を行うと、有機肥料は窒素の無機化が進むため、生育初期に窒素が効きやすくなることが多い。
そのため、施肥設計上は、やや1〜2割程度窒素肥料を少なめに設計するほうが徒長しにくく、失敗しにくい。
太陽熱処理の一般法の場合は、④元肥の施用を、⑧の後に行い、その後畝立てする。
耕耘、混和
①〜④を、耕耘し土壌混和する。極力深耕することとし、20〜25cm程度に混和できることが望ましい。
土壌があまりに乾燥している場合は、次の工程の畝立てがしにくく、また潅水で水が全体にいきわたりにくい可能性があるため、適度に水を撒いてから混和すると良い。
この時、菌力アップ300〜500倍を散布すると、初期発酵がさらにうまくいきやすくなるため、非常に良い。
畝立て
通常通り畝立てをする。畝高は20cm以上が太陽熱処理の効果が高く、また栽培も失敗が少ない。
なお、一般法の場合も、水分過多により冠水状態になるのを避けるため幅60〜120cm程度の畝を立てるほうが良い。
透明マルチ(ビニール)の被覆
改良法の場合は、被覆する前に畝上と通路部分に潅水チューブを敷設しておく。
一般法の場合は⑧の潅水作業を、マルチ被覆の前に行う。マルチは、地温をできる限り上げるため、必ず透明マルチを使用する。できれば新品を使用したほうが良いが、穴の開いたものはテープでふさぐなど必ず補修して使用する。
マルチ被覆は、水分と熱の発散を防ぐことが主要な目的である。できる限り厳密に、端から端まで圃場の全体をしっかりと被覆する。
最もよい被覆方法は、畝立て同時マルチ張り機を使用して6.7.を同時にする方法で、畝全体を密封状態にすることで、確実に畝部分の水分と熱の発散を防ぐことができる。
そして、さらに通路部分を被覆するために、畝と通路の全面を覆うように被覆する「二重被覆」の方法が最も良い。
(通路部分に潅水チューブがない場合は被覆する前に、動噴その他の方法で、通路部分に十分に潅水をして、全面被覆を行う。)
菌力アップと水の潅水
太陽熱処理は、太陽の熱と微生物の発酵熱で土壌を高温にし、病原菌やセンチュウなどを駆除する方法である。
そのため微生物は必ず嫌気性ではなく、好気性微生物を使用する。菌力アップは、太陽熱処理に最も適した好気性微生物で安心して使用できる。
潅水は、一度に大量に行うと畝を崩してしまう恐れがあるため、2〜3日に分けて行う。
まず、菌力アップ10L/10aを200〜300倍に希釈し、2〜3t程度の水量で潅水する。不耕起栽培や半不耕起栽培で、有機物(堆肥等)を土壌混和していない場合は、微生物のエサとして、糖蜜などを使用する。
糖蜜を10aあたり500〜100L程度準備し、菌力アップと一緒に潅水する。その後、半日程度空けたのち(微生物の定着時間)、水のみで本潅水を始める。
潅水量は、土壌の隅々まで十分に水がいきわたる量であり、水はけの程度等によって非常にばらつきがある。
一般的には、100t/10a程度であるが、400〜500tを要する畑もある。太陽熱処理では、水分過多も良くなく、しっかりと湿っており、なおかつべちゃべちゃしていない状態がよい(水分率60%)。
数百t以上、大量に潅水する場合は畝を崩すことがないように、様子を見ながら数日をかけて潅水を行う。
太陽熱処理の失敗の多くは、最初の温度上昇に失敗することである。平均気温が30℃前後の晴天が続く日をめがけて、この潅水作業を終わるようにする。
最低でも4日以上の連続した晴天日を確保すれば、おおよそうまくいくことが多い。潅水後は、ハウスを締め切り密閉し、熱が逃げないようにしておく。ハウス内は、昼夜の平均気温45℃以上を維持できる日数が多いほど成功しやすい。
温度管理
太陽熱処理(⑧)開始後は、3日に1回程度、昼間の温度を計測すると良い。棒温度計を突き刺し、畝上の地面から30cm深が40℃になっていれば成功。30cm深で40℃を10日以上キープできれば、消毒は成功したと考えて良い。
なお、圃場の真ん中と、端の方では温度が違うことが多いので、どちらも定点観測する。
太陽熱処理(⑧)開始後、1週間しても温度が30℃を超えない場合は、温度不足と思われる。原因は、天候不良、水分不足、水分過多または有機物の不足である。
水分不足の場合は、再度菌力アップを希釈した水を潅水することで対処する。水分過多の場合は、酸素供給材を潅水する方法で対処する。
太陽熱処理終了
畝上から30cm深の温度×日数で積算温度を算出し、これが800℃以上になれば終了してよい。(例えば40℃×20日=800℃)800℃を下回っていても、スケジュールが迫っていれば終了し、余裕があれば900℃〜1000℃までやってもよい。太陽熱処理を終了する際は、マルチを剥ぐ。
ハウス内の通気を良くして数日〜数週間、土壌を乾燥させる。土壌表面に地衣類(コケのような微生物)や菌糸が出ていたり、土壌団粒化している、土が柔らかいなどの現象が見られれば、土づくりも大変うまくいっていると考えて良い。
改良法の場合は、すでに元肥を入れてあるため、できるだけ雨に打たせることなく、そのままの状態で植え付けの作業に入っていくのが望ましい。(台風でハウスビニールを剥ぐ場合は仕方ない。)
ただし、定植までカラカラに乾燥させないよう、適度な水分率を保持するようにしたほうが良い。
一般法の場合は、この後雨に打たせても差し支えない。乾燥したら、作付けのスケジュールに合わせ、元肥を施用し、畝立て、定植を行う。