思い切った転換!クロルピクリンから太陽熱消毒へ!「土が変わった!!」
突然の喜びのお電話一本
ひときわ熱い情熱を持つ男がいる。
今回私が訪れたのは、全国的にも有名な新進気鋭のカーネーション農家のTさん。カーネーション作りへの人並み外れた情熱と高度な栽培技術を武器に、東京の市場でも高値が付けられる花業界の実力者であり、また新しい技術に果敢に挑み続ける開拓者でもあります。
久しぶりに突然、Tさんからの1本の電話。「一言いいたくて電話しました!本当に、全然違う!こんなに違うのかと驚かされました!すごい資材です、これは。ありがとうございます!」
Tさんの圃場を前回伺ったのは、3年ほど前の事だったと思います。
久しぶりのことで驚きましたが、しばらくご連絡が無かったので「使ってくださっていたんだ!」と嬉しくなりました。「いやー、嬉しいです!とりあえず、近いうちに遊びに行きますね!」とお約束しました。
立枯病激発圃場を変えたのは、、、やっぱり土作りでした。
ちょうど近くに用事があり、圃場にお伺いしたのは7月下旬。日差しが厳しく、じりじりと焼けるように暑いお昼過ぎでした。
倉庫に着くと、さっそく「お久しぶりです~!」と出迎えてくださいました。相変わらず顔を見るだけで元気さが伝わってくるような、情熱的でかっこいい方です。
Tさん「生田さん、良く来てくれました。今年、この暑さでしょ?でも、ぜんっぜん!(畑の状態が)マジで良いですよ!」と自信満々の挨拶をいただきました。マジですか、早速見せてください、と言いながらわくわくしてきました。

7月といえば、早くも圃場に苗を植える時期です。「この暑さの中、苗を植えて、うまく育てるのが本当に難しいです。」
振り返ると3年前、お伺いしたときに、そう教えてもらったのを思い出しました。
「見てください、立枯れがどうしても出るんです。苗はひょろひょろ、そしてこの暑さ。カーネーションの苗は高いですから、苗代だけですごい損失ですし、売上も減ですから。これが課題です。なんとかなりませんか?」
これが、3年前に共有した課題でした。
写真の通り、圃場には無残に欠株だらけのベッドがありました。品種によっては、とても弱いものもあり、何パーセントとかではなく、何割という感じで立枯れ病が出てしまうこともザラだったと言います。



そんなつらい過去を思い出しながら、今年の状況報告に花が咲きます。
Tさん「あれから、いろんな資材を試しましたよ。もちろんサンビオティックも良いなっていうのも思ってたんですけど、いま流行のバイオスティミュラント。高いヤツ、いろいろあるじゃないですか。そういうの勧められて、やってたんですよね。あれも良いんですよ、確かに。初年度、ボーンって来るんですよ。でもですね、なんか違うんですよ。去年は効いたのに、あれ、今年は効かんなと。それで量を倍にする。ああ、効いた。でもまた次の年、あれ去年より効かんな、それでまた量を増やす。」
「マジであれ、カネの無駄遣いって気づいたんですよ!結局、ああいうバイオスティミュラントなんて、その場しのぎのパフォーマンス上げるだけで、土はどんどん痩せてるんですよ。土作りせんで、バイオスティミュラントをいくら使っても、ムダな努力やなーって。やっぱり土作り、基本に戻らんとダメって事ですよね?」
サンビオティックで、土が変わった!
「それで、やるならやっぱりサンビオティックで土作り見直したかったんですよ。前いろいろやったとき、やっぱり良かなーって思っとったんで。」とTさん。
そうこう話しながら、圃場に着きました。「ここ、先週植えたところですよ。」と言いながら案内してくださったハウスは、入った瞬間に、前回来たときと雰囲気が全然違います。
「まじですかー!もう活着して、新芽が動いてるじゃないですか!」というと、Tさん嬉しそうに答えます。
「そうなんですよ。去年までは、植えてもじーっと1か月くらい動かんこともザラやったですもんね。マジで活着いいですよ。もう土が全然違うって思います。今まで暑さのせいにして諦めとったんですけど、やっぱり土作りやったんですよ。」
「ここはですね、サンビオティックの堆肥を入れて、あとケイントップとコフナを入れて、菌力アップをやって太陽熱消毒したんですよ。そして、太陽熱消毒後に、肥料いれて畝立てして、そしてもう一回、菌力アップを全面にバーってたっぷり潅水ですよ。これでOK!バッチリ仕上がりますよ。」
※ケイントップは、他社のサトウキビの細断葉の商品名。コフナは、他社の固形タイプ微生物・有機物資材の商品名。
「定植してからは、菌力アップとマジカルを定期的に流してます。菌の餌代わりに、木酢液もやりますし、コーソゴールドも良いですね。素晴らしい連鎖で、安定してます。」
「それで見てください、通路もサンビオティックのブログ見て、全部ケイントップば敷いてますよ。バッチリでしょ?」とTさん。Tさんによると、本当に今までの夏植えのカーネーションとは、「ガラッと変わった」といいます。活着不良も、立枯れ病などの病気もゼロ。
「土が全然違いますよ。トラクター打ちながら、あれうちの土ってこんな柔らかかったっけなぁーって思うくらいですよ。どうぞ、通路も歩いてみてください。」
通路を歩いてみると、まるで絨毯の上を歩いているようです。土の弾力が、足の裏に伝わります。ベッドの上は、触らなくても分かるほど、土の状態が良いです。
ちなみに、通路に有機物マルチをやるのは、以前から私もお勧めしている方法です。(公式ブログ参照「通路にもみ殻のすすめ」)これによって、通路が踏み締められるのを防ぎ、水はけが良くなるので、たっぷりと水やり(潅水)ができるようになります。十分に水やりができることは、多くの作物にとって品質アップ、収量アップの最重要ポイントです。また同時に、作物にとっては柔らかく養分のある土壌が、畝だけで無く通路にまで広がるのですから、根域が広がり、より成長が良くなるのは当然のことです。さらに、通路に敷いた有機物は、徐々に分解され、栽培が終わる頃にはほどよく腐熟しています。これがまた、次作の土作りの有機物として良い働きをしてくれるわけです。
通路に有機物マルチをやる場合の注意点は、白絹病などの病害発生リスクです。一般の農業指導員の多くは、通路にモミガラや敷きわらするのはお勧めしないという方も多いことでしょう。ところが菌力アップを定期的に散布すると、このリスクを打ち消し、メリットに変換することができます。ぜひやって欲しい技術です。
夏の定植、猛暑対策もバッチリ
Tさん「もう、サンビオティックのブログも、Youtubeも、全部見ましたよ。時々ハッと気になって、夜中に起き上がってブログ読んでたこともありましたよ!そのくらい、一生懸命勉強しました。それで思ったんですよ。やっぱり、微生物やって。今まで、微生物ば殺すやり方ばっかりやってきたんですよ。それで、土ができる訳なかですよ!」
そう言いながら、次に見せていただいたのはケイトウを植えている畑です。
ハウスには一面のケイトウ。まばゆいほど鮮やかな赤や、爽やかなオレンジや黄色などのケイトウが所狭しと並んでいます。
一見して、花も良いですが、葉の状態が素晴らしい。ツヤがあり、適度な大きさと厚み、弾力があります。いかにも健康そうな、メリハリのある葉の形です。
「ここはですね、少しでも夏の収入にって思ってケイトウをやり始めたんですけどね、調子が良いんですよ。もちろん、菌力アップから、木酢液とかマジカルとかバッチリ効かせてます。これで、あと2~3日後に、最後の仕上げで菌力アップとコーソゴールドの潅水すれば、ぐっときて、バッチリ決まるはずですよ!葉っぱと花のバランス、理想のボリューム感、タイミング、バッチリです。」
「もう植物が、思った通りに育ってくれるっていうか、反応してくれるんですよ。根っこの状態、葉っぱの状態が良かけん、今これやったらこうなるやろうな、っていうイメージがそのまんま出てくるんですよ。これが土作りの成果かなって思います。」
子どもにも見せられる「持続可能な農業」を!
Tさんの徹底ぶりには驚きました。微生物の事、土作りのことを本当に真剣になって研究し、そしてこれまでのやり方をあたかも全否定するかのような、大幅な技術転換です。新しいことをはじめるということは、当然ながら失敗するリスクも背負ってのチャレンジになります。言うは易しですが、これまでやってきた方法を変えるのはとても勇気が要ることです。
「Tさん、なんでここまで徹底して、新しいやり方にチャレンジするんですか?」と、私は何気なく聞いてみました。
すると、Tさん。これからの農業への想いを語ってくださいました。
「うちは息子がおるんですけどね。子どもには、別に農業を継いで欲しいとか、継がせたいとか思っとる訳じゃなかとですよ。自分のしたか事ば、すれば良かですよ。でもですね、もし子どもが、『農業ばしてみたか』『農業ば継ぎたか』って言われたときに、『俺の今までのやり方が見せられるやろうか』って思ったとですよ。クロルピクリンでですよ、命の危険まで冒して土壌消毒して、そいでも天候に左右されるようなリスクのある農業ばしてですよ。こいが息子に継がせられる農業やろうかって。」
「いま、花卉農家はクロルピクリンが当たり前なんですよ。それもですよ、効かんもんやけん、使う量がどんどん増えよるとですよ。それが普通ですよ。ホントに考え直さんばですよ。お金掛けて、命も掛けて、そいで土はガチガチで、微生物もおらん。植物が育つ環境じゃなくしよるとですよ。」
「俺はそれば変えんば、息子に農業ば継がせられんって思うとです。だけん、太陽熱消毒に一気に変えたんですよ。じゃないと、今までのやり方じゃ、持続可能じゃなかですよ!子どもにも、胸ば張って農業ば見せられんですよ。自分がいま考えよるとは、そのことばっかりですよ。」
Tさんの、熱い想いがほとばしります!本当に、Tさんの気持ちが分かります。「持続可能な農業」と、口で言うのは簡単ですが、これまでの農業技術が、本当にそれと反するような状態だったんです。そこに風穴を開けたい、新しい技術を開拓したい、そういうことでしょう。これは単に自分の問題じゃ無く、自分の息子さんや、または花卉業界の未来、次世代まで考えたうえで、大きなリスクを覚悟してのチャレンジなんですね。本当に感動しました。
「微生物や土の生き物を殺す農業と、活かす農業。考え方はまるで正反対です。それによって、これまでやってきた管理、必要な資材や肥料の考え方も、すべて一から考え直しです。でも、今まで積み重ねてきた経験や知識が、全部つながったんですよ。いま、めちゃめちゃ面白いですよ!」と笑うTさんの笑顔は本当に素敵でした。
「最後に、ここも見ていってください」と案内してくださったのは、ポンプ室です。
きっと最新鋭のポンプや混入機があるのかと思いきや、そこに有ったのはシンプルな構造のタンクとポンプ。

「あれ!見所はどこ?」っと思ったら、目の前にありました!サンビオティック資材が!
「別に難しいシステム組まなくていいんですよ。シンプルがいいです。菌力アップとかコーソゴールドとか潅水できれば、十分です。なんせ効きますから!ここポイントですから、写真撮っていってくださいね!はっはっは!」と、サービス精神も一流のTさんでした。
今回、Tさんのもとを訪れて本当に良いお話を聞かせていただきました。これからの花卉農家の新しい技術革新のためにも、ぜひこれからもTさんの応援をさせていただきたいと思います!