サンビオティック体験記

菌力アップで炭酸ガス(CO2)濃度が上昇するのか、普及所が調査した。

高知県でキュウリを栽培されていらっしゃるKさまより、非常に面白い情報がありましたので、ご紹介します。

K様は、キュウリ栽培の天敵であるセンチュウ被害に悩んでおられた生産者でした。いろいろと調べたところ、「菌力アップ」という資材があるとの情報を得て、今年の2月から菌力アップの導入を始めた経緯がありました。

K様の圃場では、環境制御を取り入れており、温度や二酸化炭素(CO2)濃度を計測し、植物にとって最適なハウス内の環境を作り出すような仕組みとなっています。

ところが、環境制御においても、土壌中の環境を良くしたり、線虫の抑制を行うことはできません。環境制御という技術は良いものの、土づくりや土壌環境への対策が必須と感じていらっしゃったとのことです。

早速菌力アップを使用し始めると、非常に生育が良くなったとのことで、大変喜んでおられたのですが、実はあることに気づいたというのです。

それは「炭酸ガス(CO2)濃度が下がらないから、なんでかな」ということです。

ハウスの中は、日中は植物が盛んに光合成するためにCO2が植物に吸収され、外気のCO2濃度の400ppmよりも低めになってしまいます。200ppmまで下がってしまう事もあるそうです。そのため、CO2不足を補うために、炭酸ガス発生機でCO2ガスをハウス内に供給し、センサーで400ppmを切ったら炭酸ガスが発生して、CO2濃度を400ppm前後に維持する仕組みとなっています。
これが、環境制御のメインの技術の一つです。K様のハウスも、そのように仕組みになっています。

ところがK様のハウスは、春先以降、常にCO2濃度が420〜430ppmをキープしていたんです。他の生産者のデータではそうしたケースはありません。

ご存じの通り、植物はCO2を吸収して光合成をしています。光合成をたくさんするためには、光、水、温度、CO2の4つの条件が重要です。ハウスの中には、光や温度や水は、十分に条件を満たしており、実質的にはCO2濃度が、光合成速度を律している場合が多いのです。

それほど重要なCO2濃度ですが、それが高く維持できているという事は、とてもすごいことなんですね。

Kさんは、原因を探るために、きちんとデータを取りたいと思い、地元の農業普及所にお願いして、調整をした濃度センサーを複数台おいて半月ほど測定してもらいました。

これが、その時に記録したデータです。このデータを見ると、驚くべきことが分かると思います。

そうです、微生物資材(菌力アップ)を投入後に、明らかにCO2濃度が上がっています

菌力アップをやる前と、後では、早朝のCO2濃度は480ppmから、570ppmくらいまで上がっています。光合成の盛んな、12:00ごろのCO2濃度も比較すると、380ppmくらいから420ppmくらいまで上昇しているのが確認できますね。

それも、よく考えると、微生物資材投入前の日中CO2濃度は、センサーが働いて炭酸ガスが供給された状態での数字です。炭酸ガスが供給されていなかったら、もっと下がっていたでしょう。

これは、すごい発見ですね!!

この理由について、農業普及所の方も、「微生物による有機物分解時に発生する炭酸ガスが原因であろう」という見解をおっしゃられたそうです。

そのエビデンスとしては、比較した他の生産者ではこのような現象は見られず、微生物資材(菌力アップ)の投入もしていないこと。Kさんのハウスでは、週に一度の資材(菌力アップ)投入の後には、とりわけ濃度が上昇することが確認されたことにあります。

また通路にある残渣にも定期的に分解しやすい米糠と微生物(菌力アップ)散布をしていることも効果を高めているものと思われます。とのことでした。

「この調査結果により、来期は機械による炭酸ガス施用期間を短縮して、燃油コストの低減を図ろうと思います。そもそも化石燃料を燃やすことにも抵抗感がありますので、SDGs的にも良いことですよね。もちろん微生物資材散布には土壌環境改善という目的がありますので、この副次的効果はとても大きなものと感じています。」とのお考えでした。

素晴らしいですね!菌力アップで土づくりするとこんな効果もあるのかと、改めて感動した事例でした。K様、データ提供のほど、ありがとうございました。

※このデータは、あくまでも春先の地温が上がってきてからのデータですから、冬期は、地温も低いため微生物によるガスの発生は、ここまで期待できず、冬期は、炭酸ガス施用は必要だろうと思います。