ノウハウ手帳

露地の太陽熱消毒で連作障害対策!

露地のニンジンやタマネギにも、太陽熱消毒処理が大活躍!

露地での太陽熱消毒、太陽熱養生処理も、大変有効です。特に、露地の場合は、殺草効果を狙って実施する方も多いようです。ニンジンやタマネギの露地栽培では、雑草が問題となりますが、太陽熱消毒によって、60℃くらいまで温度が上がりますから、地表面付近の雑草の種を焼き切る、という目的です。

こちらは、超極早生タマネギの作付けを控えた圃場です。農研機構が提唱している、いわゆる「陽熱プラス」とおなじ手法で、太陽熱消毒を行っています。

「陽熱プラス」というのは、太陽熱消毒後に、トラクタで耕したり、畝たてをしたりしないで、最初からpH調整と肥料を入れ、畝を立ててから、太陽熱消毒をする方法のことです。

※サンビオティックの太陽熱消毒処理(養生処理)マニュアルの「改良法」に記載されている方法です。

これなら、消毒後に土壌をかく乱しないので、畝の部分は完全に消毒された状態で作付け出来ることが期待できるというわけですね。しかも、この方法が、雑草対策には非常に有効となります。地中の種を掘り起こすことがないからです。

太陽熱消毒(露地)の実例

こちらの圃場は、太陽熱処理をスタート(8月1日)して5日後の日中、地面が61℃、地中25cm下部分が40℃でした。(晴天続き)

今後1週間、天気が続きそうなので、十分に高温を維持できそうです。

この圃場の太陽熱消毒の方法を確認しました。

  • かき殻石灰 100kg/10a を全面散布。
  • 発酵途中の「中熟堆肥」(まだ熱があるもの)約2t/10aを散布し、その上から菌力アップ10L/10a(100倍希釈)を散布して前作残渣とともに土壌混和。
  • 数日後、元肥(マッスルモンスター10袋、鈴成10袋、硫酸マグネシウム40kg/10a)を散布し、土壌混和。
  • 雨を待つ。
  • 雨(約10mmの雨が降りました)の2日後の朝、透明マルチで被覆。

この時は、たまたま良い雨が降りましたが、雨が降らない場合は、潅水チューブやスプリンクラー等で、10t/10a程度の散水をする必要があると思います。(または、マルチ下に潅水チューブをセットして起き、被覆後に水を流す方法もあります。)

太陽熱消毒は、7月の梅雨明けのタイミングで行うのが最も成功率が高く、少なくともスタートから3日〜1週間程度の晴天が続くことが理想です。

しかし、作物によってはその時期は難しいということもあると思います。そんな時は、太陽熱処理をする意味がないかといえば、そうではありません。

太陽熱処理は、露地でも晴天が2日続けば、春先や秋口でも、地表温度が60℃付近まで上がります。雑草の種は55〜60℃程度で死にますので、これにより、殺草効果は期待できます。

太陽熱消毒の土づくりの効果

上記のように、太陽熱消毒によってセンチュウや病原菌、また雑草の種を殺してしまうという効果は、確かに生育に大きく影響します。しかし、太陽熱消毒のもう一つの側面としては、土づくりの効果が高いということがあります

一般的には、土壌消毒は良い菌も、悪い菌も殺してしまうので、土の微生物や小動物の自然生態系を破壊し、土を疲弊させるものと考えられています。しかし、太陽熱処理は違います。高温でも死なない土壌菌が多く、しかもそのような微生物は、団粒構造を促進するものが多いのです。

たとえば、放線菌の仲間は、菌力アップでもメインの微生物として位置づけられていますが、これらは80℃でも死なないものが多く、またセンチュウや糸状菌のキチン質の殻を破るキチナーゼ酵素を持ったものがあります。
そのため、放線菌の豊かな土壌では、土壌病害や連作障害のリスクが減るのです

また、同様に高温に強い放線菌やバチルス菌は、粘着物質を産生し、土壌団粒構造を作る立役者と言われています。団粒構造が発達した土壌では、土壌病害のリスク要因が格段に下がります。植物の健全な生育と土壌微生物バランスが整うことにより、土壌病原菌が完全に殺菌できていなくても、発病リスクが格段に下がります。さらに、菌力アップを使用すれば、薬剤土壌消毒とそん色のない、むしろそれよりも良い生育を期待することができます。

また、菌力アップに含まれている酵母菌は、地中深くに浸透することによって、地下から大量の発酵ガス(二酸化炭素)を一気に吐き出すことによって、土壌の耕盤を破壊することもあります。(これには、事前に有機物を仕込んでおき、太陽熱処理時に、ある程度の温度と大量の水分が必要です。)

このように、太陽熱消毒は、善玉菌も悪玉菌も皆殺しにするのではなく、良い微生物を残しつつ、土づくりにもなるという意味で、大変優れた方法になるわけです。ですから、もちろん理想は7〜8月に実施するのが良いのですが、高温が確保できない4月〜10月ごろの実施でも、太陽熱処理の効果は、期待できるものがあるわけですね。

なお、前作で甚大な土壌病害やセンチュウ被害が出た場合や、太陽熱消毒処理(養生処理)で、思うように温度が上がらなかった場合は、太陽熱消毒処理(養生処理)が終わったのちに、マルチを剥ぎ、再度植付け前に菌力アップ10L/10aを100倍希釈して、畝上に潅水します。

その後、タマネギなどの定植後、ニンジンなどの播種後に、菌力アップ5L/10aを100倍希釈して、週に1回の間隔で、4回程度潅水することで、理想的な土壌微生物相を維持し、土壌病害やセンチュウ被害リスクに対応することができます。

以上、太陽熱消毒、太陽熱養生処理、陽熱プラス処理の実際をレポートしました。ご参考にしてください。