サンビオティック体験記

スナップエンドウ(豆類)は、活着促進と初期生育で決まる!

スナップエンドウ(豆類)の栽培

暑い時期の生育不良を乗り越えろ!

多くの野菜では、発芽直後や定植直後の初期不良といのは、なかなか取り返すのは難しいですね。特に暑さなどで発根不良や活着不良があると、回復には必要以上の時間と労力がかかります。

熊本県でスナップエンドウを栽培しているある生産者も、初期の生育不良に悩まされている生産者のお一人でした。
熊本県では、スナップエンドウの長期取りの作型が推奨されており、イチゴやトマトよりも生産や出荷にかかる労力が少ないことから、徐々に作付けが広がっています。

しかし、栽培上の課題もあります。長期取りだけに、初期生育に失敗すると、いつまでも生育不良を引きずることになり、収益が上がらないのです。

なかなか生長しないスナップエンドウ
なかなか生長しないスナップ(12月上旬撮影)

「困っている」ということで、こちらの圃場にお伺いしたのは12月上旬でした。(写真)

この作型では、9月上旬に播種し、11月上旬には収穫が始まる栽培スケジュールです。

お伺いした12月上旬には、通常ならすでに背丈は胸くらいにまで伸びて、収穫が進んでいる時期だというのに、右写真の通り、まだ膝丈にも伸びていないような生育状況の株も見られました。

「ここなんて、このまんま、じっとしてる感じで育ってこないんですよ。なんでですかね?」

問題は、定植後の初期生育のところなんですね。つまり、発根に問題があるのです。

原因は、定植時期の暑さです。熊本県の9月上旬というのは、まだ平均気温が25℃を超える日が多くあります。
冷涼を好むスナップエンドウにとっては、25℃を超える環境というのは、非常に過酷な時期なんですね。

だから、このように発芽不良や活着不良、または立ち枯れなど様々な要因で、生育が止まったり、欠株が出たりしやすいという訳です。こちらの圃場でも、生育にばらつきがあったり、ひどいところは欠株も見られる状態で、収量への影響が心配される状況でした。

生育のばらつきが大きいスナップエンドウ
生育のばらつきが大きい
欠株も少なくないスナップエンドウ
欠株も少なくない

「やっぱり気温ですか~!こんごろ(近年)は、暑かとですもんね~!これさえうまく乗り切れたら良かとばってん。」と、生産者も例年悩んでいらっしゃる様子でした。

初期生育を促進するいくつかの方法

そこで、初期生育を助けるための方法は、サンビオティック資材でも、いくつかご提案が出来ます。

その中でもまずお勧めは、やはり「菌力アップ」です。菌力アップには、非常に多くの種類の微生物が含まれており、マメ科の植物の根に共生する根粒菌も含まれています。
トータルで土壌環境を整え、活着や発根を促すには、とても実績のある資材です。特にスナップは過湿は嫌うため、土作りから良質な有機物と菌力アップを使用し、土壌を団粒化させておくことは、大変重要な技術となっています。

さらには、定植後から菌力アップを施用することで、根粒菌を含めたさまざまなタイプの共生微生物を増やすことが非常に重要です。特に、小苗の時期は、光合成能力も未熟で、根の働きも非常に弱いですから、根圏微生物などの助けは非常に重要となります。
小さい時期から菌力アップを手潅水してあげることで、根の周りに共生微生物が発達し、水分や栄養を供給してくれるようになります。それにより、スムーズな活着や良好な初期生育を実現することが出来るんですね。

そのほかのプラスアルファの対処法として、イーオス本気Ca(マジカル)を薄く潅水することにより、初期生育を促進することも出来ます。たとえば、イーオスなら1,500~2,000倍希釈、本気Ca(マジカル)なら2,000倍希釈で潅水します。
すると、初期の発根を促進し、根の栄養吸収も助けてくれるんですね。この時期、暑さの影響で根の糖類の消耗が激しいのです。イーオスや本気Ca(マジカル)で、それを補ってあげる、という考え方になります。

※菌力アップとイーオスの組み合わせについては、できるだけ混用せず、別々に潅水することをお勧めします。

簡単な作業で生育が変わる

今回は、途中からの対応ですが、まだまだこの時期なら、菌力アップでの回復を試みる価値はあります。

「今からだとちょっと対応が遅くなってしまいましたが、これからでもやってみる価値はあると思いますよ。」そのようにご説明すると、「いやー、潅水するだけでいいならやってみたいですよ!」と、生産者の方もやる気満々です!

本来ならもうどんどん収穫している時期でしたが、このまま手をこまねいて、何もしないよりマシです。

やり方は簡単です。具体的には、「菌力アップ」5L/10aを毎週(1週間に1回)、潅水チューブで流すだけです。

非常に簡単に取り組めることが菌力アップの魅力の一つです。菌力アップには、非常に多種多様な微生物が含まれており、土壌潅水すると、これらの微生物がおよそ7日~10日ほどで増殖のピークを迎えます。
そして、徐々に微生物相が変化したり、土着微生物(病原菌を含む)がまた増える可能性があります。そこで、菌力アップは、理想的な微生物バランスをできるだけ高いレベルで維持するために、1週間~10日に一回の間隔で潅水するという方法をとります。これがポイントなんですね。

このような微生物の変化は、他の微生物資材もみな同じように、皆様が通常思っているよりも短い増殖期間しかないんですね。その後は、徐々にその微生物は勢いを失い、土着菌や病原菌は回復のチャンスをうかがうことになります。ですから、微生物資材は、定期的に、何度も与えることが大切なんですね。

(このことは、例えば皆さんが、おなかの調子を整えるために、ヨーグルトやキムチや納豆を毎日食べるたり、食物繊維を意識して食べることに例えればわかりやすいと思います。食物繊維や発酵食品を、一度にたくさん食べても、実はおなかの中の腸内細菌は、ほとんど変化しません。しかし、毎日食べることを習慣にすると、徐々に腸内細菌が変化し、健康的な生活を送れるようになりますね。これと全く同じことが、土壌の微生物相(微生物叢:マイクロバイオーム)にもいえるんですね。)

菌力アップが効いた!みごとな変化!

それから1ヵ月後、再び生産者の圃場を伺いました。

どうでしょうか?当初の生育不良の株も見事に回復し、他と分からないくらいに順調に生育しています。

良い花も、良い実もなっており、土壌改善や発根促進による効果が如実に現れています。

草勢は均一になり生育不良株も回復してきたスナップエンドウ
1月上旬、草勢は均一になり
生育不良株も回復してきた
花も実もしっかり成っているスナップエンドウ
花も実もしっかり成って
収穫を楽しんでいる
生育の良さが分かるスナップエンドウ
勢いの良さが分かります
立派なスナップエンドウ
プリプリの甘みのある
実が採れているとのこと

この生育には、生産者の方も喜び、「最初からやっときゃ良かったですね!菌力アップ!来年は、最初からやりますよ!」とのお言葉でした。

「良かったですね!根が出来たら、今度はコーソゴールドや本気Ca(マジカル)の潅水や葉面散布を試してみてください。きっともっと良い実が増えますよ!」とこれからのことも、お伝えして帰りました。

今回は、初期生育で手こずると、結構その影響を引っ張ってしまうという事例でした。来年はぜひ土作りから導入されたら、初期から発根促進し、11月にはバンバン収穫できていることでしょう。

このように、良い生育のために、やはり「根」の大切さはおろそかにできませんね。
皆様も、ご参考にしていただければ幸いです。