サンビオティック体験記

温暖化対策イチゴ栽培 切り札は「海王」(うみおう)!

地球温暖化対策のイチゴ作り

地球温暖化が問題だと言われて久しいですが、様々な作物で「これまで通り」の栽培がなかなかうまくいかない事例が発生しています。夏には、ゲリラ豪雨に代表される大雨や、遅い台風の襲来。そして、秋から春にかけて育てる作物では、いわゆる「暖冬」の影響が「いつもと違う」状況を作り出しています。
温暖化の影響を最小限に減らし、むしろ逆手にとって、生育の味方に方法はあるのでしょうか?
今回は、その参考になる事例をご紹介します。

大雨・台風・高温の三重苦との戦い

佐賀県で、昨年からサンビオティック栽培に取り組んで奇跡の好成績を出したイチゴの農家のYさんです。
12月ごろ、久しぶりに圃場にお伺いすると、なぜか浮かない様子でした。

「サンビオティック資材は、全面的に取り入れたんですが、今年はダメですね。。。台風で根が切れてから、花は来ないし、根があんまり動いてないみたいなんです。」とYさん。

写真は12月17日、ご相談があったときの写真です。

「花芽が遅れ、葉の展開が止まって、全然動かなくなってしまった」ということでした。確かに、悪いところは葉の周囲が枯れ込み、新芽が全然展開していない状態のものもあります。
ダニや病気があるわけではなさそうです。どうやら、根がやられているようでした。

以下の写真は、同じく12月17日時点の写真です。

最も大きな原因は、大雨、台風、そして高温です。Yさんの地域では、8月下旬に想定をはるかに超える豪雨がありました。3日間降り続いた雨は、500ミリを超えるという猛烈な雨で、数日で8月の平均降水量の2倍を超え、観測史上最高の24時間降水量を記録するほどの異常気象に見舞われたのでした。
近隣の武雄地区では、鉄工所の油が流出し、近隣の圃場が全滅したニュースをご記憶の方もいらっしゃると思います。

その大災害で、Yさんの圃場も苗床は腰近くまで冠水し、苗は丸1日以上冠水してしまいました。おまけに、定植直後に来た台風です。猛烈中吹き返しの風で、植えたばかりの苗は、根が切られてしまい、活着が遅れ、大きな被害が出ました。そしてさらには、9月以降の高温でした。イチゴにとっては、つらい残暑となりました。
このような度重なるショックから抜け出すことができず、Yさんのイチゴはなかなか回復できないでいたのです。

特に、イチゴの場合、秋の温度が高いというのは、調子を狂わせる原因となります。半強制的に花芽分化をさせ、生殖生長に傾いてている苗が、また栄養生長に戻ってしまうのです。
イチゴの花芽分化は、頂果房、腋果房、と果房ごとにその時の環境条件(温度や日長)と樹体内の栄養状態(栄養生長か生殖生長か)で決まっていきます。頂果房に立派な花が来ても、そのあとの果房で花が飛ぶ、ということは、実はよくあることです。

今回、Yさんの圃場の状態は、高温からくる炭水化物の不足が、発根の遅れと栄養生長型への傾きが、株の回復と花芽分化を阻害していると考えられました。特に2番果が悪かった。花が来ない、来ても飛んでしまうような現象があったのです。

高温条件だと、葉からの蒸散が活発ですからそのぶん水を吸って窒素を多く吸収してしまうことになります。それに、光合成が高まることは良いんですが、同時に呼吸も上がってしまうから、炭水化物が消費されてしまって、根に栄養が十分供給出来なくなって、発根が悪くなるんですよ。」と私。

自然災害ですから台風などは仕方ないとしても、特に近年の「高温」の影響は目に見えない重要ポイントです。
イチゴは、低温で花芽分化が促進されますから、高温だと栄養生長型になり、根の動きが悪く、花芽も飛んだり、遅れたりします。

「対応策ですが、まずは、葉の炭水化物を増やして、根への転流を促してみましょうか。こういう時は、海王(うみおう)が良いと思いますよ。ついでに、ミネラルも加えたらいいですよ。」

私の提案は、『海王(うみおう)』です。海王は、海藻を冷凍粉砕して水溶性処理してあり、海藻の組成がそのまま含まれています。光合成を促進して炭水化物を増やす作用や、アミノ酸やミネラル、そして植物活性を上げるホルモンが含まれています。これを、鉄などが含まれるミネラル資材と一緒に、噴霧器で葉面散布することをご提案しました。(サンビオティック総合キレートミネラル資材を現在開発中です。夏までには販売開始予定です!お楽しみに♪)

4日後から回復し始めた驚異のイチゴ!

結果は、すぐに現れました。なんとその4日後に電話があったのです。
もう動きましたよ!新芽がいきなり展開してきましたよ!

以下は12月21日時点の写真です。

なんと、海王を散布して、わずか4日後の写真です!すごいですね!!

急に展開してきた葉!きっとエネルギーは溜まっていたのかもしれません。一気に新芽が展開して突き上げるように伸びてきました。急速な展開で、葉には若干の苦土欠乏なども見えますから、まだ根の働きが追いついていないのが見て取れます。

Yさんが行ったのは、海王の葉面散布です。葉面散布と言っても、煙霧機を使って圃場に霧状に広げるやり方なので、簡単です。(写真のような機械でやっています。)

通常、海王は5000〜7000倍希釈で散布するのですが、Yさんはこの煙霧機に、1回海王を25g/10a程度噴霧させるやり方をしています。
週に1回程度の散布でも十分効くといいます。

それにしても、嘘かと思うような反応の速さです!
やはり、植物生理を理解して、どの部分で引っ掛かっているかをクリアーしてあげると、植物は素直に生長を始めるんですね。今回の場合は、特に海王に含まれるオーキシンやサイトカイニンなどのホルモンが効いたかもしれません。一斉に葉が展開し、花が上がってきました。

Yさんがその後も海王とミネラル剤の葉面散布を続けたところ、葉の展開、花芽分化はみるみる回復し、葉にも驚くほどのワックス層が発達してきました
ワックス層が発達するというのは、それだけ光合成が進んで、炭水化物が蓄積してきたということです。

イチゴの花が大渋滞

うまく光合成のエンジンが回り始めたYさんの畑は、この後どんどん理想的な展開になってきました。
周りの農家さんは、相変わらず高温などの影響で調子が悪い中、Yさんのイチゴは旺盛に花芽をつけ始めています。
まるでイチゴの大渋滞ストリートです!

この時、部会でトップの出荷量の生産者が1日で50ケース出荷していたそうですが、Yさんは70ケース出荷するレベルだったそうです。絶不調からぐんぐん追いつき、ついにトップを追い抜いてしまいました。

以下は1月23日時点の写真です。

Yさんは、人懐っこい笑顔で、「これだけ花が上がってくれば、昨年並みに挽回しそうですよ。本当に良かった!」と話してくれました。

サンビオティック資材は、一発でぱっとは効果は出ないですけど、着実に確実に変わりますよね!」ととても喜んでいただきました。これから海王を継続して、昨年の記録を超えるように頑張っていきたいということでした。

温暖化対応のイチゴ作り

イチゴ栽培では、近年の温暖化に対応した栽培法が求められるようになっています。
温度が高いことにより、水と窒素を吸収しやすくなってしまいます。その反面で、炭水化物の蓄積が進まず根が動かないために、リン酸やミネラルが足りず、急速に葉の展開が悪くなったり、花が飛んだり遅れたりします。
気象条件を変えることは誰にもできませんが、少しでも生殖生長型をキープするように管理することは、可能だと思います。

温暖化対応のイチゴ作りでは、次のポイントを意識して検討してみてください。

1.土づくりでは、元肥のチッソ成分を控え、有機質と微生物で土壌団粒化

土づくりでは、元肥のチッソ成分を減らすことが温暖化対策では重要です。秋口の高温では、昼夜を問わず、葉が活発に蒸散を行うため、水と一緒に土壌中のチッソを吸収してしまいます。
元肥のチッソ成分は、これまでの半分〜1/3程度に減らしても問題ありません。チッソは、天候を見ながら、液肥で供給するほうが、気象条件に対応しやすい管理法になります。

また、リン酸やマグネシウム、カルシウム、鉄やその他のミネラルなどを十分に施用することも重要です。そのため、発酵リン酸肥料「鈴成」を基本に、「カニキング〜」や「五穀堆肥」もおすすめです。
または、近隣で手に入る牛糞堆肥などに、もみ殻や、かに殻、かき殻や転炉スラグ肥料、その他の有機資材原料を混ぜて施用するのも良いです。こういった良質の有機質を施用後に、「菌力アップ」を散布し、耕耘することで、初期の土壌微生物相を強固なものにし、センチュウの発生や土壌病害の発生リスクを減らします。さらに、土壌が団粒化することで、根が張りやすい適切な土壌環境を作ることができます。

2.カルシウム、リン酸、ミネラルを効かせる

定植後、適度なチッソとともに、カルシウムやリン酸、ミネラルを効かせることが重要です。特に、活着が遅い、根の働きが悪いときは、葉面散布は重要な技術となります。
定植後からの「コーソゴールド」や「海王」はお勧めです。光合成を高めると同時に、酵素やホルモン用物質が、葉の展開、根の働き、花芽分化を促進します。病気や害虫(ダニなど)が多いときは、「本気Ca(マジカル)」や「本格にがり」を葉面散布します。

このように、カルシウム、リン酸、ミネラルなどを効かせる技術があると、病害虫に強く、花も旺盛に上がってきます

3.日照不足と着果負担に負けないアミノ酸液肥

上の1/23の写真を見てわかる通り、しっかりと生殖生長型に生育したときには、ものすごい数の花が見られます。
花は、花びらや花粉や種子や胚を作ったり、次世代に残すための種子に栄養分を運んできたりと、とてもエネルギーを要します。つぼみが上がってくる頃から、しっかりと栄養補給をしなければ、樹勢が低下し、成り疲れになってしまいます
チッソ供給のタイミング、そして量が大切です。収量を上げるポイントは、ここにあります。

特に、12月中旬以降、寒くなってくる頃から日照時間が減るうえに、曇天の日も多くなります。そのような時には光合成が低下しやすくなりますので、アミノ酸態チッソがおすすめとなります。
アミノ酸は、糖とチッソが結合した物質です。アミノ酸は、土壌微生物の働きを活発にしますし、施用したアミノ酸が直接、または間接に根から吸収されることで、光合成の不足を補う働きもします
もちろん、アミノ酸そのものがチッソですから、チッソの供給方法として優れています。(化成とアミノ酸を混ぜてももちろん良いです。)

サンビオティックでは「糖力アップ」や「特濃糖力アップ」という魚のエキスをベースにしたチッソ肥料があります。このようなアミノ酸系の肥料を施用します。なお、糖力アップ、特濃糖力アップは、点滴チューブでは使用が難しいため、その場合は市販のアミノ酸入り液肥をご利用ください。

さらに、前述の「海王(うみおう)」もお勧めです。多糖類をはじめ、アミノ酸やビタミン、核酸物質や植物ホルモンを含んでいて、植物の光合成エンジンを急速に回してくれます。

温暖化の対策として、皆様のご参考にしてください。

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