サンビオティック体験記

草生栽培で目指す持続可能なミカン作り。そして最高の味。

最高にうまいミカンの味

秋も深くなって参りましたが、先日お伺いした圃場は、とても先進的で素晴らしい圃場でしたので皆さんにご紹介します。

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実は先日、近くのスーパーの直売所でたまたまサンビオティックを導入されているミカンを発見したので、買ってみたのです。サンビオティック資材を買われている、知っている生産者のミカンです。

そしたら、このミカンがうまいのなんの。私が一番好きな早生ミカンの素晴らしい食味や食感、味わいを実現してくれていたのです。

「あぁ〜、これは美味しい。。。俺が好きなやつやん。」と一人納得し、子どもにも食べさせてみたところ、「これ、ほんと美味しいね」と言いながら、ペロリと5個も食べてしまいました。しかも、食後に。
よほど口に合ったのでしょうね。子どもの舌は、正直ですから、その品質の高さがわかるというものです。

弊社は「ミカン屋さん」でもありますから、専門的な立場でありますが、私は勝手ながら、「最高にうまいミカン」の定義を、「何個も食べたくなるミカン」と考えています
飽きの来ない、いや食べれば食べるほど、もう一個食べて、確かめたくなる味。それが最高のミカンの味ではないでしょうか。何しろ、そういうミカンは、売れるのです。このミカンは、その「最高の味」に、とても迫っているなと思ったのです。

サンビオティックとの出会いで「手応え」

そこで先日、畑の様子を確認するためさっそくこのうまいミカンを作った畑にお邪魔して、その秘訣を確認してきたという訳です。

その生産者は、長崎市でミカンの栽培に取り組んでいる野中果樹園さんです。野中さんは、ご覧の通りお若いのですが、お父様も素晴らしい柑橘農家で、地域の柑橘農家の指導者的な方でした。

その血を受け継いでいるのでしょうか。
野中さんはこの若さで、とても熱心に柑橘栽培に取り組んでいて、原口や田口などの早生品種を中心にしつつ、越冬完熟ミカンや、せとかなど、付加価値の高いものもやっています
どれも魅力的な品種や栽培体系を展開して、「努力していらっしゃるな」と感じます。

野中さんは、まさに次世代を担う柑橘専門農家という、地域にとってとても貴重な、そして有望な生産者です

そして、圃場にお伺いして、開口一番、先日のミカンの感想をお話ししました。

「野中さん!ミカン買いましたよ!今年のミカン、めっちゃおいしいですね!」

すると、びっくりのお返事が帰ってきました。

「あ、ありがとうございます。あれは、ちょうどこの畑のミカンで、今年初なりのミカンですよ。」

これには驚きました!!なんと、あのお店で買った最高に美味しいと思ったミカンが、初なりのミカンだっとは!!

普通、ミカンというのは、木を植えてから間もない、初なりや幼木のミカンは、美味しくないというのが常識です。
それは、早く樹を大きくするため、栄養管理がどうしても窒素主体で栄養成生長を促そうとするためだと思います。糖を蓄積するよりも、葉や根の生長に糖が取られてしまうからです。
「初なりであの味が出せたら、たいしたものですね!」というと「いえいえ、それは、サンビオティックさんのおかげですよ。」とうれしいお言葉を返してくれました。
確かに、野中さんは去年あたりから、サンビオティックを導入して、ミカン栽培に手応えを感じるようになられたといいます。

最初は、ハウスの田口早生(ミカン)や、せとかの樹勢をよくするために、鈴成菌力アップなどの資材を導入されたのですが、その効果にご納得いただいたのだと思います。

有機物と菌力アップをやった部分に旺盛に根が発達していた(9月上旬)
土や有機物の表面に大量の放線菌の菌糸が見える状態に

今では、露地の早生ミカンなどにも、全面的にサンビオティックの肥料や液肥を導入されています。ほとんどのサンビオティック資材を使いこなし、土作りや発根促進をベースに、栄養生長と生殖生長のコントロールを常に意識して、施肥や葉面散布を実施されています

その勉強熱心さと技術習得の早さは、私が見ていてもさすがだなと思う生産者なんですよね。

それにしても、あの口溶けの良いまろやかな食感、素直な甘みと複雑なものを感じさせる心地よい余韻は、なかなかに、早生ミカンの到達地点に近いと感じました。

「今日は、その秘訣を探しに行こう」と思ったのです。

あの味を生み出すのは、草生栽培

それは、圃場をみて、すぐに気づきました。草です。草生栽培です。

この圃場は、いわゆる一般的な「ミカン畑」よりも遙かに多くの種類の草にまみれていました。それも、普通の畑と違って、多種多様な、おそらく種をまいたのだろうという様々な草が生育しているのです。

一見して「草刈りが大変でしょうね!」と思わず言ってしまうほど、草が絨毯のように土壌を包み込んでいました。

なるほど、初なりの樹で、ミカンがあそこまで心地の良い風味を生み出すわけは、この草生栽培だったのかもしれません
草生栽培というのは、読んで字のごとく、草を生やして栽培する方式のことですね。

もちろん、この圃場は、ただ結果的に雑草が生えている手抜きの畑ということではありません。
聞くと、野中さんはミカンの苗木を植えるときに、一緒にクローバーの種子を撒いたそうです。

ただ雑草を生やすというのではなく、あえて草を生やす、積極的に草を生かす方法を採用していると言うことです。

「草生栽培」という持続可能な栽培法の魅力

草生栽培の何が面白いのかというと、それは土壌に複雑かつ自然な生態系を構築できると言うことです。

ご存じの通り、自然の土壌には、数え切れないほどの微生物が生息していますね。そして、その無数の微生物を食べる原生動物や、線虫、そしてミミズなどが活動しています。
さらに、それらを捕食するより大きな節足動物(昆虫など)や小動物が、毎日毎日、必死に餌を探し回っています。

このような土壌生物というのは、自然界ではとても重要な働きをしていて、簡単に言うと、彼らが良い土を作っているという紛れもない事実があるんですね。
大げさに言えば、地球上に豊かな土壌があるのは、彼ら土壌生物のおかげです。当然ながら、それは人間のおかげではないんですよね。

無数の生き物が、それぞれの生活環境を作り、また食べ物を探し回る間に、土壌粒子をくっつけたり、空間を広げたり、穴が掘られたり、有機物がちりばめられたりしながら、土壌は豊かになっていきます。

とても大切なことは、そこ(土壌)に生態系があるということです
そして、その生態系の出発点が、じつは、多種多様な植物の「根」なのです

夏には緑の絨毯。干ばつにも強く、大雨でも流亡の心配もない。

これ、とても重要なことなんですよね。どういうことかというと、土壌中の活動している微生物のほとんどは、植物の根の周りにいるということなんです。

あまり知られていないかもしれませんが、土壌中の微生物の多くは、休眠状態で寝ているものが多いんですね。それは、栄養が少ないからです。もちろん、微生物にとっての栄養というのは、多くの場合「水分と有機物」です。

ところが、九州のように暖かい地域であれば、有機物の多くは、すぐに微生物に消費されてしまいますから、自然の土壌中には、意外に有機物は少ないんですね。ですから、土壌中の微生物の多くは、耐久態となって、また餌が近くに来るまで、眠った状態で休んでいる訳です。

そこに、植物の根が近くにくるとどうなるでしょう?

植物というのは、光合成しますね。光合成して、糖を作り出すのが、植物の最大の特徴と言っても良いでしょう。
そして、面白いことに、ほとんどすべての植物は、作り出した糖の多くを、根に転流させ、根から分泌(排出)するんです。

これを、滲出液(しんしゅつえき)といいます。

なぜ、植物は、わざわざ大切な栄養を、根から分泌するのでしょう??
エネルギーの元である糖は、植物にとっても生きていくために最も重要な栄養でもあるに関わらず、なぜ、その大部分を捨ててしまうんでしょうか?

そうです、それは、微生物を増やすためなんですね。植物の根の周りには、栄養たっぷりのエキスがあふれ出てきますから、そこでは無数の微生物が活性化し、増殖し、そして多くの有機物(代謝物)を生成してくれるということです。

ある意味で、植物は、微生物を飼っているのです

もちろん、草生栽培には、土壌や肥料の流亡を防ぐ役割や、干ばつや乾燥に強くなるという物理的なメリットも大きく、温暖化や異常気象の時代において、草生栽培の魅力はますます大きいものになっています。

根と菌と根がつながる、とても壮大な話

「自然」というのは、とてもシンプルな法則と、複雑な作用で、絶妙なバランスをとりながら、確実に生長するメカニズムを持っているものです。驚くべきことは、植物と微生物の関係です。微生物が増えることで、生態系が生まれ、土壌が豊かになり、そして巡り巡って、植物はそのメリットを享受するのです。

果樹園の土壌について、特に注目すべき役割を担うのは、糸状菌(しじょうきん)という微生物です。
いわゆるカビやキノコの仲間です。

糸状菌というのは、読んで字のごとく、まるで綿(わた)のように、四方八方に菌糸を伸ばし生長する性質があります。その菌糸は、糸のように、場合によっては何メートルも伸びることもあります。

面白いのは、その菌糸が非常に複雑なネットワークを構築しながら、時には糸状菌同士が合体し、時には植物の根と合体する性質があることです。

有名な、「菌根菌(きんこんきん)」という言葉は、植物の根と合体することのできる糸状菌のことです。

菌根菌というのは、本当にどこの畑にも、野原にも、森にもいる、ごくごくありふれた微生物です
彼らは、生存に適した環境があれば、土壌の中に毛細血管のように菌糸を張り巡らせながら、多くの他の細菌とも共生します。そして、ほとんどの種類の植物の根とつながることができるのです。
そして彼らが、あたかも植物の根のように、栄養や水を土壌から吸収して、植物に渡す機能を果たしているのです。

この素晴らしい特殊能力のおかげで、ミカン園に菌根菌の生育環境があるとき、その畑は、雑草もミカンの樹も、すべての根がつながります。畑に生息するすべての植物が、まるで一個の生命体のようなつながりを持つと言うことです。これって、ものすごいことだと思いませんか?

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つまり、地面に絨毯のごとく広がる「草」が、みな精一杯に光合成をして「糖」をつくり、その「糖」を土壌へ放出する。その「糖」は、糸状菌を介して、ミカンの樹にも供給されると言うことなんです。

たとえば、アゾトバクターなどの窒素固定菌が作り出す窒素は、糸状菌と共生し、糸状菌を通じてミカンの樹に供給されます。
クローバーなどのマメ科植物が作り出す窒素も、巡り巡ってミカンの樹に供給されると言うことです。

つまり、このような微生物のネットワークが構築された畑は、一本一本の樹や草と言うより、一枚の畑が、まるで一つの生き物のようにして生長しているということなんですね。

本当に、壮大な話になってしまいました。

これからの果樹栽培の土作りは、草生栽培、低肥料。

先述の菌根菌や糸状菌の生育が適する環境というのは、大きく二つあります。
一つは、耕さないことです。これは、果樹園では当然のことですから、問題になりません。

そして、もう一つは肥料が少ないことです。糸状菌は、栄養の少ない環境でこそ働きます。
また、炭素率の高い繊維系の有機物を好んでいますから、植物性原料のみの堆肥や、植物由来の有機物を施用している畑では、特に適した環境になりやすいといえます。
もちろん、草生栽培では多くの草が有機物を作り出します。その量は、おおよそ1t/10a以上の堆肥に相当すると言われていて、草刈りの労力を帳消しにしてくれるだけのメリットがあります。

ちなみに、肥料が少ないと、とても心配になる方も多いと思いますが、このような微生物が増える環境を作っていくと、多くの場合、その心配は要らなくなります。なぜなら、土壌微生物が栄養を作り出してくれるからです!

肥料高騰が叫ばれる時代において、微生物の役割は、ますます重要になっていると言うことですね
実際に、この野中さんの圃場では、今年の施肥量は、窒素量でわずか4キロ/10a。通常なら幼木でも10キロ以上やる生産者が多いのではないでしょうか?

野中さんは、移植年以降、かなり少ない窒素量でも早期に樹幹形成を促進し、しかも、しっかりと美味しいミカンを収穫した意味は大きいと思います。

そして、ミカンのまろやかな味わい、クセのないストレートな甘さを作り出すのもやはり、微生物なんだと思います。根の周りの、非常に豊かな微生物叢(びせいぶつそう)が、様々な栄養を作り出し、ミカンの樹に与えてくれているからです。

こういったことが、子どもの正直な味覚を刺激して、ついつい何個も食べてしまう最高に美味しいミカンを生み出したんですね。

すべては樹の持つ力を最大限に引き出すため

野中さんが今ミカン栽培で最も意識していることは、このように草や微生物の力で土の環境を良い状態にしたいと言うこと。土が良くなれば、樹は自ずと力を蓄え、毎年ミカンを成らせてくれます。

そして、さらにミカンの樹が持つ能力を最大限に引き出すために、固形肥料は最低限にして、菌力アップや糖力アップでの発根促進切り上げ剪定技術と、コーソゴールド本気Ca、および海王などの葉面散布による栄養供給や植物ホルモンの活性化を重視しています。

すべての技術は、無理矢理に生長させるような押し込みの栽培ではなく、土の力や樹の持つ能力をどれだけ引き出せるかという、いわば引き出しの栽培法なのですね。

非常に理にかなった栽培法を実践されていますよね。畑に行って、現場を見て、すぐに合点がいきました。
すべてが緻密に計算されていて、本当に素晴らしい技術で作られたミカンだったんですね。

このような栽培管理技術は、これからの温暖化や異常気象の頻発する環境では、本当に重要な栽培方針になると思います。また、昨今のように、肥料が高騰し、不足している環境では、やはりこの方針をいち早く取り入れる方が、安定した農業経営を実現していくのかもしれないなと感じた圃場視察でした。

私もとても勉強になりましたし、ミカンに限らず、リンゴやナシ、ブドウなど、果樹を栽培されている皆さんにもぜひご参考にしていただきたいなと思います。こういった栽培法にチャレンジしてみたいという方は、ぜひお問い合わせください。皆様の圃場や現状にあったやり方を、一緒に考えていけたらいいなと思います。

最後に、この美味しいミカンを皆様にも味わっていただきたく、野中果樹園様のホームページもご紹介しておきます。LINEやお電話(AI認識?)でのご注文もできるようです。自然で優しくて、心に染み渡るような甘さのミカンをぜひお試しいただければと思います。(もう、売り切れている可能性あり。。。)

野中果樹園オンラインショップ
https://nonakakajyuen.raku-uru.jp/