新規就農でもうまくいくイチゴ栽培
初めての育苗、大きな不安。
右写真の大変良い状態のいちごを栽培しているのは、昨年よりいちご栽培を始めた新規就農の生産者Iさんです。
Iさんは、まだ30代前半ととても若く、希望に燃えています。昨年までは勉強期間でしたが、今期より圃場を借りて、いよいよ新規就農となりました。
Iさんから初めてご相談があったのは、夏頃だったでしょうか。苗作りの時、猛暑による生育不良や花芽分化の不良を心配されていました。
なにしろ近年の夏の暑さは異常なほどです。高温により呼吸量が増え、同化作用が停滞し、炭水化物の蓄積が進まないことが原因です。炭そ病や萎黄病などの病害リスクや、花芽分化がうまくいかったり、生育不良が毎年恒例のように騒がれています。
JAの指導員さんや、先輩にいろいろと教わるほど、不安が増してきたのでしょう。地域では、炭そ病が蔓延し、昨年もひどい状況だったと聞いています。ベテランの農家さんでも対応に苦慮しているのです。新規就農のIさんにとって、近年の夏の暑さは、いきなりの高いハードルです。
何か少しでも良い情報がないかと勉強していたとき、サンビオティックの情報を聞いたそうです。一度話を聞いて、勉強してみたいと、早速連絡をくださいました。
「とにかく病気を出さないようにしたいんです。良い方法ないですか?」とのご相談をいただき、早速圃場に出向きました。
育苗での菌力アップで、なぜかうまくいく。
お伺いしたときは、育苗を進めているところでした。親株から切り離したポット苗、これからの管理に悩んでいました。
まずはお勧めしたのは、やはり『菌力アップ』です。土壌環境の改善と発根促進がすべての原動力になります。毎週200倍希釈で頭上潅水します。肥料は一般の緩効性肥料を通常通り施用。根が動いてくれれば、条件は整います。
そして、猛暑対策として、『イーオス』をお勧めしました。こちらはスポット的に、猛暑が続きそうな天候の時、300倍希釈で頭上潅水します。イーオスというのは、酢酸15%の資材です。酢酸には、ジャスモン酸という防御ホルモンの生成を促す作用があるらしく、猛暑対策の切り札として、またもっとも強力なBS資材として近年、大変ユーザーが増えています。
必殺技は、芯打ち!イチゴの苗が変わる。
8月に入ると、いちご育苗期にお勧めの作業「芯打ち」をお勧めしました。
芯打ちとは、苗の生長点、クラウン部分に直接液肥をかけ、これから展開する葉芽の部分にしっかりと肥料を効かせていく技術です。一般に、植物は生長点や新芽は、葉面からの吸収力が高く、さっと濡らす程度でもかなり吸収してくれるようなのです。イチゴの場合は、株の中心の芯の部分に新葉の展開部(生長点)があるので、名付けて「芯打ち」です。
芯打ちに使用するのは、『コーソゴールド』500倍、『マジ鉄』3000倍、『海王』5000倍を混用します。一株当たりの潅水量はわずかでも構わないのです。クラウン部分に直接散布し、効かせていくことが効果を発揮します。
継続的な菌力アップの潅水と、芯打ち作業が効いたのでしょう。暑さを感じさせない様な、本当に見事な苗が仕上がりました。
「炭そ病は、まったく無いと言っていいですよ。花芽も順調に来てるし、なんか最初にしてはうまく行き過ぎって感じですよ!(笑)」とIさんも嬉しそうに笑っておられました。
菌力アップやイーオスが守りの育苗管理だとすると、芯打ちとは攻めの育苗かも知れませんね。つややかで活力のあるイチゴの苗は、とても美しいものです。
本圃での生育は目を見張るほど素晴らしい
本圃に植えてからの生育は目を見張るようでした。あまりに生育が良いので、周りの先輩たちからは「こりゃもうちょっと抑えんば、花芽の飛ぶぞ」と言われるほどでした。生育が良すぎると、軟弱徒長により病害虫の被害が発生しやすいものです。そしてそれ以上に問題なのは、花芽の問題です。暑さのため、ただでさえ花芽が遅れがちです。生育が良すぎると、イチゴの場合は、花芽が飛ぶ(遅れる)という経営上のリスクが大きくなりますから、先輩方のご指摘はごもっともなのです。

それはそれは、太い太いランナーが出てくる状況です。確かに心配にはなりました。しかし、クラウンの成長や葉の厚みや状態は悪くありません。病気を抑えるため、元肥はかなり抑えてあります。徒長という状況ではないと信じられました。
「きっと大丈夫。」一抹の不安を抱きつつ、芯打ちの効果を信じて潅水作業を続けたと言われていました。
その甲斐あってか、10月末には、1番花から5枚目の展開で2番花が来ました!
「よしっ!って思いましたね!花芽が来ないともちろんダメだし、早く来すぎても良くない。ほんと理想的ですよ!うちの人員体勢にとっては、ほんとベストなタイミングと思います。」とIさん。
先輩から苗を求められる栄誉
ちなみに、本圃では太いランナーが沢山発生しました。これ自体は若干困ったことではあるのですが、良いこともありました。もったいないので発生したランナーをそのまま受けて、苗にしたのです。それは、みごとな無病苗でした。
地域の先輩達はそれを見て、良い苗だということで、「来年の親株用にしたいから、分けてくれ」と近隣の農家さんに求められているそうです。近隣では今年、炭そ病が激発した農家さんも多く、大変喜ばれているそうです。新規就農者の作った苗を、先輩農家から求められるとはなんと栄誉なことでしょうか。
私もその話を聞いてとても嬉しかったのですが、Iさんも、心密かに喜びをかみしめたことと思います。


年明けに様子を伺いに圃場にいくと、喜びの声が返ってきました。
「おかげさまで、年内もしっかり採れましたよ!単価もやばかったですから、1年目で軌道に乗って、ほっとしてますよ。本当にありがとうございます!」とIさんも安堵の表情です。
夏の暑さを乗り越え、年明けからは寒さと日照不足との戦いかも知れませんね。実が留まってからは、肥大促進のため、引き続き菌力アップと共に『ななちゃん』の潅水をお勧めしています。これできっと冬場の果実肥大もさらに良くなると思います。
気象条件が厳しい状況の中、新規就農でもここまでできる、という素晴らしい事例となりました。将来は地域を牽引する農業生産者になってもらえるよう、これからも応援していきたいと思います。





