農業用語集

あ行

青枯病
あおがれびょう

土壌伝染性の植物病害で、感染した植物や土壌中に存在する細菌が原因で起こる。数日のうちに青いまま突然枯れてしまうことから「青枯病」と呼ばれる。トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモをはじめとした多くの植物で発生する。地温が20度以上になると発病し始め、25~30度で多発する。原因菌は土壌の水中を泳いで移動し、根などの傷口などに集まって侵入する。そして、導管の中で増殖することにより導管が詰まり、水分の移動が妨げられ、萎凋、枯死する。被害株の茎を切ると細菌の集まった白濁液が流出することが診断の手がかりとなる。原因菌は感染した株や土壌中で2〜3年ほど生存できるが、乾燥させると死滅する。防除対策として、剪定に使用するハサミの消毒や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、窒素過多を避ける、マルチング、抵抗性品種あるいは抵抗性の高い接木苗を選ぶことなどが有効である。

アオミドロ
あおみどろ

淡水に生息する藻類の総称。水田で大量発生すると、苗の倒れや生長抑制などの悪影響がある。水温20度前後、有機物の使用、窒素やリンの過多などの条件で多発する。

秋肥
あきごえ

秋に行われる植物への追肥。収穫後のなり疲れの回復と、冬期に備えるための栄養補給などを目的とする。

アゾトバクター
あぞとばくたー

アゾトバクター(Azotobacter)は、土壌や水中に広く分布する窒素固定菌の一種である。自然界における窒素循環の役割を果たしている。

アブラムシ
あぶらむし

新芽や新梢、葉裏などに群棲して植物の汁を吸い、生育を阻害する吸汁性害虫。体長1〜4mmぐらい、体色は緑、赤、黒、黄色など種類により様々。繁殖力が旺盛で、一年中発生するが、特に春と秋に発生が目立つ。ウイルス病を媒介したり、甘い排泄物がアリを誘引することがあるため、早めに防除することが望ましい。

アミノ態窒素
あみのたいちっそ

有機物中に存在するアミン類の窒素のこと。アミン類はアミノ基を含む有機化合物であり、アミノ基に結合した窒素がアミノ態窒素である。生物にとって重要な栄養源であり、タンパク質合成や生物の成長・発育に不可欠な役割を果たす。

アレロパシー
あれろぱしー

アレロパシー(Allelopathy)とは、ある植物が環境中に放出する化学物質によって、他の生物に何らかの影響を与える現象をさす。アレロパシーの農業利用として、一緒に植えることで雑草抑制、害虫除去、生長促進をするコンパニオンプランツが知られている。

アンモニアガス障害
あんもにあがすしょうがい

土壌からアンモニアガスが発生することが原因で生じる障害で、施設栽培で多く発生する。アンモニアガス障害は、石灰質肥料を多量施用した土壌に窒素肥料や未熟堆肥などを施用した場合にアンモニアガスが放出される。土壌のpHがアルカリ性である場合に発生しやすく、葉が白化したり黒ずんで萎凋するなどの症状が現れる。

EM
いーえむ

EM(Effective Microorganisms)とは、乳酸菌や酵母、光合成細菌など、自然界に存在する有用な微生物の総称。農業や畜産、環境浄化などに幅広く活用されている。なお、通称EM菌として知れ渡っているが、特定の菌の名称ではない。

萎黄病
いおうびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。気温22〜26度の多湿を好み、初夏から梅雨時と初秋の肌寒い気温のころに発病しやすい。下葉に淡黄色の斑点が現れ、葉や株の片側だけが黄色に変色して萎れ、のちに株全体が枯死する。ナスの他、トマト、ジャガイモ、メロンなど多くの作物に見られる。病原菌は、土壌中で菌核の形で3年以上生存可能であり、連作によって被害が拡大する。病原菌は根から侵入し、導管を伝って地上部へと広がっていく。防除対策として、感染した株の除去や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、抵抗性の高い接木苗を選ぶことが有効である。

異常気象
いじょうきしょう

通常の気温や気候パターンから、大きくかけ離れた気象現象のこと。異常気象の例としては、ゲリラ豪雨に代表される大雨や、遅い台風の襲来などがある。

萎凋病
いちょうびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。トマトやネギ類など、さまざまな農作物に見られる。露地、施設栽培ともに晩春から初秋にかけて発生し、高温時に多発する。下葉から黄化し、萎凋がひろがり、やがて枯死する。被害株の茎などを切断すると、維管束が褐変していることが診断の手がかりとなる。病原菌は、感染植物の残渣や土壌中で厚膜胞子の形で5〜15年生存可能であり、連作によって被害が拡大する。新たな作物が栽培されると、厚膜胞子は発芽し、根に侵入する。防除対策として、感染源となる感染植物の撤去や土壌消毒、根を傷めるセンチュウなどの防除などが効果がある。

イトミミズ
いとみみず

水田などの泥土質の場所に多く生息する土壌生物で、頭部を泥の中に突っ込んだ状態で生活する。泥に埋まっている頭部から有機物を摂取し、尾の側から糞を排出する。イトミミズが排出する糞は栄養豊富な層を形成するため、土壌の栄養循環を促進し、農作物の生育をサポートする。

うどんこ病
うどんこびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。葉面にうどん粉(小麦粉)を振りかけたようなカビが生えることから「うどんこ病」と呼ばれる。葉に白い粉状のカビが生え始め、徐々に株全体に広がって黄変し、最終的には枯れることもある。キュウリやトマト、バラなど、あらゆる植物に発生する。一般的に多くの糸状菌の植物病害は多湿で発生しやすいのに対し、うどんこ病は湿度が低い環境下でも発生するという特徴がある。
うどんこ病の菌は、糸状の菌糸から成り、胞子の入った子のう殻を作る。胞子は飛散して伝染し、地面に落ちた子のう殻は越冬し、翌年の作物に被害を及ぼすことがある。感染初期の段階であれば、病変箇所を除去することで自然治癒できるため、早期発見と対処が感染拡大を防ぐために効果がある。

うね

水はけ改善や畑の通路確保、根腐れ防止のために、直線状に一定間隔を空けて土を盛り上げた栽培床のこと。畝を作ることを「畝立て」と呼び、畝の作り方や高さは栽培する作物や地域の環境によって異なる。

裏作
うらさく

主な作物を収穫した田畑に、次の作付までの期間、他の作物を栽培すること。後作(あとさく)とも言う。日本では耕地面積が狭く、その有効利用を図るため裏作が発達した。二毛作における主たる作物栽培を表作、その収穫後の別の作物の栽培を裏作という。また緑肥として栽培されるレンゲソウなど裏作と呼ばれる。

上澄み液
うわずみえき

固形物を溶解させた後に、沈殿物の上に浮いている透明な液体のこと。固体肥料の上澄み液は、肥料成分が植物の根や葉から効率的に吸収されやすいため、葉面散布や潅水散布などの方法で利用されることがある。

液肥
えきひ

液肥(液体肥料)は、水溶液状の肥料を指し、花や野菜などあらゆる植物に使用できる。土壌灌注だけでなく、葉面散布による施用も可能。使用する際には、用途に合わせて希釈して施用する。液体肥料は即効性があるが、水と一緒に流れやすいため、効果が持続しない。液肥は土耕栽培だけでなく、水耕栽培でも利用することができる。

疫病
えきびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。トマトやカボチャ、ピーマン、じゃがいも、スイカなど多くの野菜や花などに見られる。雨によって伝播するので、多湿時に発生しやすく、梅雨や台風、秋の長雨の時期に多発する。水が浸みたような褐色の病斑が葉の先に現れ、茎や果実にも広がり、腐敗して枯死する。湿度の高い環境では、白い霜状のカビを生じる。病原菌は土壌中に被害残渣とともに生存し、雨や灌水の時に水が跳ね返ることで、葉、茎、果実に付着し、病気を引き起こす。病原菌は菌糸を伸ばして胞子を形成し、水に濡れて飛散した胞子は、遊走子となって泳いで移動し、気孔から侵入する。病原菌は、感染植物の残渣や土壌中で厚膜胞子の形で越冬する。防除対策として、感染源となる感染植物の撤去や土壌消毒、連作を避ける、マルチング、抵抗性品種あるいは抵抗性の高い接木苗を選ぶことが有効である。

塩基バランス
えんきばらんす

土壌中に含まれるカルシウム(石灰)・マグネシウム(苦土)・カリウムのバランスを指す。これらの成分は、土壌の健全性と作物の栄養吸収に重要な影響を与え、互いに影響し合っているため、適切なバランスが重要である。石灰、苦土、カリウムの比率が崩れると、土壌中にこれらの成分が十分に含まれていても作物に吸収されにくくなる。一般的にカルシウム(石灰)・マグネシウム(苦土)・カリウムのバランスは、5:2:1が理想とされている。

煙霧機
えんむき

施設栽培において、病害虫の防除を目的として使用される機械。薬剤を煙霧化し散布することで、作物の隅々まで効果的に薬剤を届けることができる。

塩類障害
えんるいしょうがい

土壌溶液中の塩類濃度が植物の許容値を超えたときに起こる作物の生育障害のこと。主に肥料に含まれる塩類の蓄積や、海水の農地への流入によって起こる。露地栽培では土壌中の塩類が雨水によって流亡するため塩類過剰は少ないが、施設栽培では肥料成分が蓄積しやすいため、塩類障害が起きやすい。

オーキシン
おーきしん

植物の生長と発達を制御する上で、重要な役割を果たす植物ホルモンの一種。

黄化葉巻病
おうかはまきびょう

黄化葉巻病は、トマト、ミニトマト、トルコギキョウなどに起こるウイルス病害で、主にタバココナジラミがウイルスを媒介する。1996年に静岡県の施設栽培トマトで初めて発見され、その後も広範囲で発生が確認されている。黄化葉巻病の症状は、新葉の縁が退色しながら黄化して葉巻し、のちに葉脈間が黄化して縮葉となり、株全体が萎縮する。ウイルスに感染したタバココナジラミは、最短約15分の吸汁でウイルスを媒介させるほどの感染力を持つ。黄化葉巻病は吸汁によって感染が拡大するが、経卵伝染や土壌伝染などは確認されていない。防除対策として、感染した植物の早期発見と植物残渣の処理、圃場周辺の除草、光反射マルチなどの活用が有効である。

晩生
おくて・ばんせい

作物の収穫までの期間が比較的遅い品種。同じ作物であっても、生育の速さによって早生(わせ・そうせい)、中生(なかて・ちゅうせい)、晩生(おくて・ばんせい)の品種に分類される。

お礼肥
おれいごえ

花が終わった後や実を収穫した後に植物に施す肥料のこと。生長や開花、実をつける過程で消費した栄養素を補給し、再生や新たな生長を促すために施される。一般的に、お礼肥えには速効性のある化成肥料や液肥が使用される。

か行

害虫
がいちゅう

植物に害を及ぼす昆虫や節足動物のこと。植物を食べたり、植物の汁を吸うなどして加害し、収穫量の減少や品質の低下、病原菌の伝播などの問題を引き起こすことがある。

果梗枝
かこうし

果実を付けるために枝や茎から分岐して伸びる細長い枝のこと。

ガス害
がすがい

土壌からガスが発生することが原因で生じる障害で、施設栽培で多く発生する。主なガス害は、亜硝酸ガスかアンモニアガスによる障害である。
亜硝酸ガス障害は、土壌中のアンモニアが微生物により分解される過程で亜硝酸ガスが発生する。土壌のpHが酸性である場合に発生しやすく、葉の萎縮、発育不良、組織の壊死などの症状を引き起こす。
アンモニアガス障害は、石灰質肥料を多量施用した土壌に窒素肥料や未熟堆肥などを施用した場合にアンモニアガスが放出される。土壌のpHがアルカリ性である場合に発生しやすく、葉が白化したり黒ずんで萎凋するなどの症状が現れる。

活着
かっちゃく

移植した植物や接木、挿し木などが、新しい植え替え場所で根を張って生長を続けることを指す。

株腐病
かぶぐされびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。キャベツやホウレンソウ、トマトなど多くの野菜や花などに見られ、10 〜25度ぐらいの時期に発生する。地際部が褐変して腐敗し、やがて株全体が枯れる。病斑部には淡褐色の菌糸や褐色で不整形の菌核が形成され、胞子を飛散させる。また、土壌から菌糸が伸長し、根や地際部の茎から侵入する。病原菌は、植物組織内や土壌中に菌糸および菌核の形で生存し、連作によって被害が拡大する。防除対策として、感染した株の除去や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、マルチング、抵抗性の高い接木苗を選ぶことが有効である。

カリウム
かりうむ

カリウム・カリ(K)は、植物の生育に必要な肥料の3要素の一つ。根肥(ねごえ)と呼ばれ、葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促したり、植物を丈夫にして病気などに対する抵抗力を高める働きがある。

カリ欠
かりけつ

カリ欠(カリウム欠乏)とは、植物の生育に不可欠な栄養素であるカリウムが欠乏した状態を指す。カリウム欠乏は、葉の枯れや生長不良、花や果実の発育不良、抵抗力の低下などの生理障害を引き起こす一因となる。カリウムは、水で流出しやすいため、腐植の少ない土壌や作物の生育後期には特に発生しやすい。

カルシウム欠乏
かるしうむけつぼう

カルシウム欠乏は、植物にとって重要な栄養素であるカルシウムが不足している状態を指す。カルシウムは植物の生長や発育に不可欠な栄養素であり、不足すると生長の盛んな新芽や根など、組織の先端に症状が現れる。カルシウム欠乏症が引き起こす生理障害として、トマトの尻腐れ症やハクサイのチップバーン・芯腐れ症などが知られている。
カルシウム欠乏症は、単に土壌中のカルシウムが不足している場合だけでなく、塩基バランスが崩れたり、土壌の酸性化、乾燥、窒素やリンなどの過多などの環境条件も障害発生の原因になる。カルシウム欠乏症は、引き起こす要因が複雑で対策を取りにくいが、カルシウムの葉面散布は、発生抑制のための有効な手段のひとつとされている。

環境制御
かんきょうせいぎょ

環境制御(環境制御型農業)とは、温室栽培や植物工場、水耕栽培などで生育環境(光、CO2、温湿度、気流)を調整することで、安定した収穫量や品質を維持するための農業技術。省人化や農薬の低減などといった特徴を持つ。そのほか、都市部や人口密集地域においても限られたスペースで効果的な農業を実現し、輸送コストや二酸化炭素排出量を削減可能な手段として注目されている。そのため、食料供給の安定化や環境保護の両面でプラスの影響をもたらし、持続可能な未来の構築に貢献することが期待されている。

潅水
かんすい

人工的に作物に水を供給すること。

潅水チューブ
かんすいちゅーぶ

大規模農場や施設園芸で行われる水やりに用いられる農業用ホースの一種。等間隔に配列された小さな孔から水やりを行うことで、水やりの労力と時間を節約しながら、効率的に散水できる。潅水チューブには、畝(うね)間に設置して使用するタイプや、ビニールハウスなどの天井部に設置して使用するタイプなど、様々な種類がある。

潅注
かんちゅう

植物の根域にそそぎかけること。

干ばつ
かんばつ

降水量が通常よりも極端に少なく、農作物に必要な水が不足する状態。

希釈
きしゃく

あるものに何かを加えることにより、薄める、濃度を低くすること。〇倍希釈という場合には、溶媒を加えて希釈した後の溶液が、もとの原液の〇倍の量になるということ。必要とする希釈した後の溶液の量を、〇倍の数字で割ると原液の量になる。そして、加える溶媒の量は、希釈した後の溶液の量から原液の量を引いて計算する。
たとえば、100倍希釈の本格にがり10Lを必要とするならば、10L÷100=0.1Lなので、原液の量は0.1L(100mL)。また、10L-0.1L=9.9Lなので、9.9L(9L900mL)の水を加えることになる。

キチナーゼ
きちなーぜ

キチンのグリコシド結合を分解する加水分解酵素。キチナーゼは、糸状菌(カビ)の細胞壁やセンチュウの卵を構成するキチンやタンパク質を分解する。土壌中の放線菌は、キチナーゼを分泌するため、病害虫の抑制に役立つ。

キチン
きちん

キチンは、エビ・カニなどの甲殻類や昆虫類などの外骨格(殻)の主成分で、カビ・キノコなどの細胞壁などにも含まれている。強度成分としての機能を担う難分解性の高分子多糖で、生体防御機能に重要な役割を果たす。
キチンは、病原菌や害虫の攻撃など外部の刺激を受けた際に、生体防御物質であるエリシターを生成する。エリシターは、病原菌に対して抗菌活性をもつファイトアレキシンの蓄積をするなどの働きをする。

共生微生物
きょうせいびせいぶつ

植物との共生関係において、互いに利益をもたらし、生態系の健全性や土壌の肥沃度を向上させる微生物の総称。菌根菌と根粒菌はその一例。

切り上げ剪定
きりあげせんてい

上に伸びようとする主要な枝を残し、下や横に伸びる枝を切ることにより、主要な枝により栄養や水分を集中させる剪定方法。切り上げ剪定により、植物ホルモンの働きが促され、品質向上や収量増加、病気や害虫の発生リスクの低下が期待される。

キレート
きれーと

炭水化物やアミノ酸などの有機酸が、吸収されにくい養分であるミネラルと結合することにより、植物や微生物にとって非常に吸収しやすい形態になること。
例えば、植物は根酸を分泌して周囲のミネラルをキレート化する。このキレートにより、植物の栄養吸収は促進される。

菌核病
きんかくびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。菌核病は多犯性で、大豆などの豆類、葉菜類、果菜類、果樹、イネ科の植物などさまざまな植物に被害をもたらす。雨によって伝播するので、多湿時に発生しやすく、梅雨や台風、秋の長雨の時期に多発する。葉の根元や茎の枝分かれ部分などに暗褐色のシミのような病斑が出現し、病斑は徐々に広がり、白い綿毛のようなカビに覆われる。白いカビはやがて黒い塊の菌核に変わり、植物全体を腐敗させる。病原菌は、気温が20度前後になると発芽し、小さいキノコのような子のう盤を生やして胞子を放出する。これらの胞子は、植物に付着したあとに泥はねや雨水がかかると、菌糸を伸ばして植物体内に侵入し、感染を広げる。病原菌は、植物組織内や土壌中に菌核と呼ばれる菌糸の塊を形成し、土壌中で4〜6年間生存可能であり、連作によって被害が拡大する。また、感染力が非常に強く、瞬く間に被害が拡大し、完治困難である。防除対策として、感染源となる感染株の早期発見と撤去、土壌消毒、連作を避ける、マルチングなどが有効である。

菌根菌
きんこんきん

植物の根の内外に菌根を形成して共生する真菌(カビ)。菌根菌は植物の根の表面や内部に着生し、菌糸を伸ばして根と絡み合い、根の表面積を増やすことで、土から取り入れた窒素、リン酸、カリウム、鉄などの無機栄養分を、植物が吸収しやすい形に変換したり、土壌病害から植物を守る働きをする。そして、菌根菌は植物が光合成で得た有機物を受け取り、生命活動を行う。
シメジや松茸、トリュフなど、自然界に生えるキノコの多くは菌根菌であり、アブラナ科とヒユ科以外のほとんどの植物と共生できる。

茎枯病
くきがれびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。特にアスパラガスに多く見られる。春から秋にかけて発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。茎の枝分かれする部分が茶色く変色し、黒い斑点が現れ、しだいに紡錘形に拡大して茎全体が枯れる。黒い斑点の中には、病原菌となる柄胞子が生成される。柄胞子は柄子殻と呼ばれる構造に守られ、成熟すると放出される。病原菌は、感染した株に形成された柄胞子の中で越冬し、春になると繁殖して柄胞子を飛散させる。感染防止対策として、感染株の適切な撤去や雨除け、定期的な薬剤散布、マルチングなどが有効である。

クロールピクリン
くろーるぴくりん

土壌をくん蒸消毒する農薬。土壌中の病原菌、害虫、センチュウ類を防除する効果があり、野菜、花き等に広く使用されている。ドジョウピクリンやドロクロール等の商品名で販売されている。気化しやすく、催涙を伴う強い刺激臭があるので、正しい取り扱いが必要である。

黒星病
くろぼしびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。バラやバラ科の果実に多く見られ、黒点病とも呼ばれる。葉に黒い円形の斑点が現れ、斑点がだんだん大きく広がっていくと、やがて斑点のまわりから黄色く変色し落葉する。黒星病は、土壌中に常在している病原菌が、雨滴のはね返りで葉や茎に付着することで伝染する。20~25度ぐらいの比較的高温で、雨が続く梅雨や秋雨、台風の時期に多発する。感染力がとても強く、瞬く間に被害が拡大し、完治困難なため、早期発見と対処が重要である。

ケイ酸カリウム
けいさんかりうむ

ケイ酸カリウム(珪酸加里)は、カリウムとケイ酸が結合した肥料で、植物にとって重要なカリウムを供給する。ケイ酸カリウムはカリウムを含む肥料の中でも、植物にカリウムを効率的に供給することができるため、農業や園芸で広く利用されている。カリは根肥といわれ根の発達や水分吸収、光合成、花や果実の形成などに関与する。

嫌気性微生物
けんきせいびせいぶつ

酸素の供給が制限された状況で生育する微生物の一群。土壌中では好気性微生物と嫌気性微生物が共存し、それぞれが土壌の生態系において重要な役割を果たしている。嫌気性微生物は、水没した領域や土壌中の深層部、堆肥などでも活発に生育し、有機物の分解や栄養循環を促進する。
また、嫌気性微生物は、嫌気的環境下でのみ発育できる「偏性嫌気性微生物」と、嫌気的環境でも好気的な環境でも発育増殖できる「通性嫌気性微生物」に分類される。通性嫌気性微生物は、酸素の少ない劣悪な環境でも活動できるため、土壌改良に役立つ。

好気性微生物
こうきせいびせいぶつ

酸素を利用して生育する微生物の一群。土壌中では好気性微生物と嫌気性微生物が共存し、それぞれが土壌の生態系において重要な役割を果たしている。
好気性微生物は、主に酸素が豊富な土壌中の表層部分で活発に生育し、有機物の分解や栄養循環などに役立つ。好気性微生物が有機物を分解する速度は、嫌気性微生物よりも格段に早い。

耕盤層
こうばんそう

耕盤層は、トラクターや耕うん機などで何度も田畑を耕うんすることにより、機械の重みなどが原因となり、作土のある特定の深さの下にできる硬い土壌層のことを指す。耕盤層は、通常は最も肥沃で、根の生長や水分の保持に重要な役割を果たす。しかし、耕うんのしすぎで耕盤層があまりにも硬くなってしまうと、土壌の水はけが悪くなったり、根張りが悪くなるため、収穫量の減少や冠水のリスクの増加に繋がる。

酵母菌
こうぼきん

酵母菌は、酵母菌が生成する酵素により、糖分を分解してアルコールや二酸化炭素を生成する。この特性は、ビールやワイン、チーズ、パンの発酵プロセスで活用される。
農業においても、酵母菌は土壌中の有機物の分解や病原菌発生の抑制、土壌構造の改善に役立つ。

根茎腐敗病
こんけいふはいびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。アスパラガスやショウガ、ミョウガに多く見られる。春から秋ごろまで発生するが、特に梅雨や秋雨の時期に多発する。茎の枝分かれする部分が茶色く変色し、黒い斑点が現れ、しだいに紡錘形に拡大して茎全体が枯れる。黒い斑点の中には、病原菌となる柄胞子が生成される。柄胞子は柄子殻と呼ばれる構造に守られ、水に濡れると放出される。病原菌は、植物組織内や土壌中に柄胞子の形で長期間生存可能であり、連作によって被害が拡大する。防除対策として、感染源となる感染株の撤去や土壌消毒、連作を避ける、マルチング、種子消毒が感染予防として有効である。

根圏微生物
こんけんびせいぶつ

根の周り(根圏)に生息する微生物のこと。根圏では、植物が分泌する根酸(クエン酸やリンゴ酸など)や、腐植酸(フェノール類など)といった有機酸などをエサに微生物が繁殖し、その微生物が窒素固定をするなど、作物と微生物が共生する活性の高い場となっている。

根粒菌
こんりゅうきん

マメ科植物の根に根粒を形成して共生する細菌。根粒菌は、大気の窒素を植物に供給しやすいアンモニアに変換し(窒素固定)、マメ科植物に窒素を供給する。また一方で、根粒菌はマメ科植物が光合成で得た有機物を受け取り、生命活動を行う。

さ行

サイトカイニン
さいとかいにん

サイトカイニン (cytokinin) は、植物ホルモンの一種。細胞分裂の促進、根の伸長抑制、老化抑制、種子の発芽促進などの重要な働きをする。

先白果
さきじろか

先白果とは、イチゴの果実において、先端部分が白く色づかずに残る現象を指す。通常、果実の先端から着色していくが、先白果は先端が白いまま残り、着色しないまま収穫適期となる。
秋口や春先など、栄養が生長に向かっている時期や、品種の特性によって発生することが多い。特に、窒素やカリが優先的に作用したり、水分が過剰な状態で発生しやすく、大玉果に多く見られる傾向がある。

酢酸菌
さくさんきん

酢酸菌は、乳酸菌や納豆菌と並ぶ食用の発酵菌の一種。酢酸菌が持つ酸化酵素で、ワインや日本酒に含まれるアルコールを酢に変換することができる。
好気性菌であり、食酢の醸造には欠かせない。原料によって出来上がるお酢の種類が変わり、米を原料にすれば米酢に、玄米が原料なら黒酢、果実が原料なら果実酢になる。
酢酸菌は、耐酸性があり、発酵が進むほど酸化が進むので、他の細菌を死滅させる殺菌効果がある。

作付け
さくつけ

農地に農作物を植え付けること。

残渣
ざんさ

残渣は、作物の栽培を終えたときに圃場に残る実以外の茎や葉、つる、根などの残骸物を指す。残渣は、病害虫や病原菌に侵されやすい傾向にあり、そのままにしておくと次の栽培に悪影響を及ぼす可能性が高くなる。残渣処理の方法には主に2つあり、残渣は焼却処分する方法と、できるだけ細かく裁断し、有機物と窒素肥料などを混ぜ合わせて発酵させて堆肥にする方法がある。

糸状菌
しじょうきん

糸状菌は、カビとして一般的に知られる細菌で、菌糸と呼ばれる糸状の構造を形成し、胞子を通じて増殖する。代表的な糸状菌には、キノコ類や麹菌、白癬菌などがある。糸状菌は、空気中や水中、そして人体など、さまざまな環境で生息する。特に土壌中には、糸状菌の種類が十万種以上存在し、放線菌よりも多く、土壌微生物の中で最も多いと言われている。糸状菌の中には植物の病害を引き起こすものもあり、炭疽病菌やうどんこ病菌など、さまざまな種類がある。
一方、糸状菌は土づくりにおいて非常に重要な存在であり、土壌の健全性や植物の生育を向上させる役割を果たす。特に、菌根菌と呼ばれる糸状菌は植物の根と共生することで、根の吸収力を高めたり、栄養を供給するのに役立つ。

シストセンチュウ
しすとせんちゅう

シストセンチュウは、連作障害を引き起こす植物寄生センチュウの一種。シストセンチュウの中でも、特に作物に大きな被害を及ぼす種類は、「ジャガイモシストセンチュウ」「ダイズシストセンチュウ」「クローバーシストセンチュウ」。
シストセンチュウは、特定の植物に寄生し、増殖率が非常に高いことが特徴。雌の成虫は体内に多数の卵を充満させ、自らの体をシストと呼ばれる卵の殻に変化させて繁殖する。シスト内の卵は、十数年にわたって生存することができるとされる。

就農
しゅうのう

農家に就職すること。仕事として農業をはじめること。

硝酸態窒素
しょうさんたいちっそ

窒素は、作物の生長に必要な窒素・リン酸・カリウムの中でも、葉や茎の生長に特に必要な栄養素である。硝酸態窒素は、植物が栄養として吸収しやすい形態に変換された窒素成分であり、即効性の高い肥料として利用される。ただし、硝酸態窒素を過剰に与えると、作物が必要以上に吸収してしまう。硝酸態窒素が残留した作物を摂りすぎると、健康リスクを引き起こす可能性がある。そのため、適切な硝酸態窒素の施肥が好ましい。

醸造発酵
じょうぞうはっこう

発酵とは、バクテリアや酵母などの微生物の働きにより、有機酸やアルコール、二酸化炭素などが作られる作用のこと。
醸造とは、発酵の作用を用いて食品を加工すること。アルコールを発酵させて作ったもののことを醸造酒という。他には、味噌、醤油、食酢なども醸造食品と呼ばれる。

植物酵素
しょくぶつこうそ

植物酵素は植物に存在する生物触媒。植物酵素は、生物由来の環境にやさしい方法で化学反応を促進するため、さまざまな分野で重要な役割を果たす。農業においては、生育促進剤や肥料の製造などで利用されている。

尻腐病
しりくされびょう

尻腐病(尻腐症)は、カルシウム欠乏が原因でトマトやナス、ピーマン、パプリカなどの果実のお尻が、腐ったように黒くなる生理障害。

代掻き
しろかき

代掻きは、田起こしが完了した田んぼに水を張り、土を細かく砕いてかき混ぜ、土の表面を平らに整える、田植えの前に行われる重要な作業を指す。
昔は、牛や馬に馬鍬(まぐわ・まんが)と呼ばれる農具を引かせたり、人力で代掻きを行っていました。現代ではトラクターにロータリーなどを装着して代掻きを行うことが一般的。

スリップス
すりっぷす

スリップス(Thrips)は和名をアザミウマといい、一般的な体長は、1~2mmの小さな昆虫。
雑草を含むさまざまな種類の植物に寄生し、種類も非常に多い害虫。梅雨から秋にかけて特に活発で、夏の暑い時期に大繁殖する。
スリップスが寄生すると、葉や花、果実から吸汁したり、作物にウイルス病を媒介するため、作物の生育や収量に重大な影響を及ぼすことがある。

生殖生長
せいしょくせいちょう

生殖生長とは、発蕾・開花・結実などの生殖に関係する生育過程を指す。

生理落果
せいりらっか

果樹の生理落果は、花が落下する「早期落果」と、収穫前の果実が落下する「後期落果」の2つに分けられる。
早期落花は、受精不良や栄養不良、気象不良が主な原因とされる。後期落果は、果実同士が生長に必要な栄養を競い合う養分競合が関与していると考えられている。このように、果樹の生理的な落果は、果樹自体が健全な状態を維持するための自己調節作用ともいえる。

石灰窒素
せっかいちっそ

石灰窒素は、カルシウムシアナミドを主成分とする、肥料・農薬・土作りの3つの機能を持つ化合物。シアナミドは、病害虫や雑草の防除をする農薬として効果を発揮したのち、アンモニア型主体の肥料成分に変化し、完全に分解消滅する。
石灰窒素の窒素成分は、主にアンモニア型であり、土壌中で硝酸型に変化しにくいため、作物にゆっくりと吸収される。 また、石灰窒素はアルカリ性のため、酸性雨による土壌の酸性度を中和し、土壌環境を改善することができる。

施肥
せひ

施肥とは、作物や植物の生長や生育を促すため、土壌や栽培環境に肥料で養分を供給することを指す。

センチュウ
せんちゅう

センチュウは、細長い線状の体を持つ、約1mm前後の小さな虫。センチュウは、地球上のいたるところに生息しており、種類はたいへん多いですが、自活センチュウと寄生センチュウの2つに分けられる。自活センチュウは、土壌中の細菌、カビ、腐敗有機物などを分解する有益なセンチュウだが、植物に加害する寄生センチュウは、連作障害の一因となる。代表的な寄生センチュウは、「ネコブセンチュウ」「ネグサレセンチュウ」「シストセンチュウ」の仲間。センチュウは、つる割病や青枯病、半身いちょう病などの土壌病害への感染や発病を助長させるので注意が必要。

ソルゴー
そるごー

ソルゴーは、イネ科の穀物。農業分野では、ソルガムとも呼ばれる。植物学的にはモロコシ、雑穀としてはタカキビ、茎から甘味料を得る時はソルゴーと呼ばれる。アフリカ原産で、暑く乾燥した地域でもよく育つのが特徴。
アブラムシが多く発生するので、それを食べる天敵も多く発生するため、バンカープランツとして利用されることがある。また、風や風害からの保護や土壌の保全を目的とした防風対策や、土壌改良や栄養補給のための緑肥としても広く栽培されている。

た行

台木
だいぎ

台木とは、接木をするときに土台となる植物のことを指す。

堆肥
たいひ

堆肥とはわらや落ち葉などの植物や、鶏や牛などの家畜の糞などの有機物を発酵させて作る土壌改良のための資材。堆肥をすき込んで、土の中の有効な微生物を増やし、土を肥沃にする働きがある。

太陽熱消毒
たいようねつしょうどく

太陽熱消毒とは、太陽の熱で土壌を高温にし、病原菌や有害微生物、害虫、雑草の種子などを死滅させる土壌消毒方法。

立枯病
たちがれびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。病徴は病原菌の種類によって特徴があるが、排水不良な土壌で増殖した病原菌の影響で、植物の茎が細くくびれて、作物が立ったまま枯れる。サツマイモ、ホウレンソウ、アスパラガス、ニラなどほぼすべての植物に発生する。春から秋ごろまで発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。病斑部に発生するカビの胞子は、適当な温湿度条件が整うと発芽し、菌糸または遊走子を形成し、伝播する。病原菌は菌糸及び菌核の形で、被害株残渣と共に土壌中で長期間生存可能であり、連作によって被害が拡大する。酸性土壌で発生しやすいので、石灰の多施用を控える。そのほか、感染予防対策として、感染した株の除去や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善などが有効である。

弾丸暗渠
だんがんあんきょ

田畑の土中に下水管の様な穴を作ることで土中の水を排出し、土を乾きやすくするための技術。弾丸暗渠の手順は、文字通り、「弾丸」の形をした金属をトラクターに付けて引っ張り、田畑の土中に「排水管(暗渠)」の役目を果たす孔を作る。

炭疽病
たんそびょう

糸状菌(カビ)の一種が原因となり、野菜や果樹などさまざまな植物の葉、茎、花、果実などに、灰褐色から黒褐色の病斑を生じる植物病害。露地栽培で多く見られ、春から秋にかけて発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。葉は穴があき、果実は腐り、茎や枝は病斑が生じた部分から上が枯れる。病斑上にできる胞子は、風や降雨による土の跳ね返りによって飛散し、下葉に感染する。病原菌は、菌糸または胞子の形で、被害株残渣と共に土壌中で越冬する。防除対策として、発病の早期発見と感染した株の除去、土壌消毒、連作を避ける、密植や水はけの改善、マルチングなどが効果的。

団粒構造
だんりゅうこうぞう

団粒構造とは、土が「団(かたまり)」と「粒(つぶ)」が結合してできる、作物の栽培に適した土壌の構造を指す。
土壌は、団粒構造によって多くの微小な隙間が生まれ、通気性や排水性、保水性などの性質が向上する。
団粒構造は、微生物やミミズなどの土壌生物の活動によって形成される。微生物が有機物を分解する際に分泌する粘性物質や、ミミズの糞などが接着剤となり、土壌粒子同士が結びつく。

窒素
ちっそ

窒素(N)は、植物の生育に必要な肥料の3要素の一つである。葉肥(はごえ)とも呼ばれ、主に葉や茎の生長には必要不可欠。光合成に必要な葉緑素、植物の体を形作るタンパク質など、植物が生長する上で重要な役割を果たす。

窒素固定
ちっそこてい

空気中の窒素を動植物が利用できるアンモニア態窒素に変換すること。通常、植物は、空気中の窒素を栄養素として根から直接吸収することはできないが、マメ科植物は、窒素固定ができる根粒菌と共生し、空気中の窒素をアンモニア態窒素に変える事ができる。マメ科植物の根には、根粒と呼ばれるコブ状の組織が形成される。根粒には根粒菌が共生しており、根粒内で窒素固定を行い、アンモニア態窒素をマメ科植物に供給する。マメ科植物は、この共生関係によって窒素を吸収し、生長することできる。

窒素固定菌
ちっそこていきん

窒素固定を行う細菌。窒素固定菌は、単独で窒素固定を行う単生窒素固定菌と植物と共生しながら窒素固定を行う共生窒素固定菌の2つに分けられる。共生窒素固定菌では、根粒菌と放線菌の一種であるフランキア菌の2種類が知られている。根粒菌は、マメ科植物に共生し、フランキア菌は、ヤマモモ科、カバノキ科、グミ科などに代表される8科200種類以上の樹木に共生することができる。単生窒素固定菌では、通気の良い土壌に存在するアゾトバクターと、通気の悪い土壌で発酵を行うクロストリジウムなどがある。

窒素固定微生物
ちっそこていびせいぶつ

窒素固定を行う微生物。「微生物」は「菌」とほぼ同じ意味で、「窒素固定菌」と「窒素固定微生物」は同義。

窒素循環
ちっそじゅんかん

農業における窒素循環とは、土壌中の窒素が植物や微生物によって吸収され、生態系内で循環するプロセスを指す。窒素は、植物の生育に必要な栄養素の一つであり、非常に重要な役割を果たす。

窒素同化
ちっそどうか

窒素同化とは、植物が、外界から取り入れた硝酸塩、窒素、アンモニアなどの無機窒素化合物を、生体を構成するタンパク質や核酸などの有機窒素化合物を合成する働きを指す。

チップバーン
ちっぷばーん

カルシウム欠乏が原因で、イチゴや葉菜類の葉の縁や先端部分が焼けたように褐変枯死する生理障害。

着果ホルモン
ちゃっかほるもん

着果ホルモンは、植物ホルモンの中でも、果実の発育と成熟に関与するホルモンを指す。主要な着果ホルモンには、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニンがある。

長期取り
ちょうきどり

長期にわたって収穫を行うこと。

追肥
ついひ・おいごえ

作物の生育途中で、肥料分が不足してきた時に施す肥料のこと。

つるぼけ
つるぼけ

窒素肥料のやり過ぎなどが原因で、作物の茎や葉っぱばかりが育ち、肝心の花や実が育たないこと。

つる割病
つるわれびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。春から夏にスイカやキュウリ、メロンなどウリ科の作物に多く発生する。土壌中の糸状菌が、降雨や土の跳ね返りによって茎に付着することや多湿が原因で、茎の地面に近い部分が縦に割れてカビが生える。日中つるが萎れるようになり、黄褐色に変色し、やがて地際部の茎が裂けるように割れて枯死する。病原菌は、土壌中や感染植物の残渣に、厚膜胞子という形で長期間生存可能であり、連作によって被害が拡大する。土壌中の病原菌は、植物の根の表面や傷口から侵入し、植物の体内で菌糸を広げ、維管束で胞子を増殖させる。感染対策として、土壌消毒や種子消毒、連作を避ける、マルチング、つる割病耐病性のカボチャ台木を選ぶことなどが有効である。

定植
ていしょく

植物を苗床などから栽培地に植え替える作業のこと。

低窒素栽培
ていちっそさいばい

低窒素栽培とは、窒素の施肥を削減して栽培することを指す。窒素は作物の生長に必要な要素だが、過剰な窒素の施肥は、作物の生育や環境への負荷を与えることがある。
低窒素栽培では、窒素固定菌が好む堆肥やぼかしを土壌に施し、窒素固定菌の活動を促進する。これにより、土壌内の窒素供給を増やすことができる。

手潅水
てかんすい

水をバケツなどで持ち歩き、人の手で植物の根に直接水やりをすること。育苗中の小さな苗は、手潅水などで一つひとつやさしく丁寧に潅水することで、苗へのダメージやを防ぎ、均一に水を供給することができる。

登熟
とうじゅく

穀物の種子がだんだん発育・肥大していくこと。成熟種子を生産対象とする穀類やマメ類などに用いられる。

倒伏
とうふく

稲・麦・樹木などが倒れること。

土壌EC値
どじょういーしーち

土壌EC値(Electrical Conductivity)は、土壌の電気伝導性を示す指標。EC値は、肥料分の調整に使われ、土壌中に含まれる溶解性イオン(肥料や塩分)の濃度が高いほど高くなる。土壌EC値は、硝酸態窒素との関係性が強いとされ、土壌中の硝酸態窒素の量を推定する際に利用されている。

土壌消毒
どじょうしょうどく

土壌の中に存在する有害微生物や病原菌、害虫、雑草の種子を除去・死滅させて無毒化すること。 土壌消毒の方法には、化学物質を用いる方法(殺菌・殺虫剤の注入)と、熱を利用する方法(焼土、熱蒸気消毒法、太陽熱消毒)などがある。

土壌善玉菌
どじょうぜんだまきん

土壌の中に存在する有益な微生物の一群。土壌善玉菌は、土壌の健康や植物の生長、土壌生態系のバランスを維持する重要な役割を果たす。

土壌微生物
どじょうびせいぶつ

土壌微生物とは、土壌中に生息する微生物の一群を指す。土壌微生物は、細菌、放線菌、糸状菌、藻類、原生動物、センチュウに分けられる。土壌微生物は、有機物の分解や栄養循環、病原菌制御、土壌構造を形成するなど、土壌の健全性や生産性に大きく影響を与える。

土壌病害
どじょうびょうがい

土壌に生息するウイルスや細菌、糸状菌などの病原体が、植物の根などから侵入して生ずる植物病害。具体的には、青枯病や萎黄病、つる割れ病、立枯病、萎凋病など。

土壌分析値
どじょうぶんせきち

土壌の特性や状態を評価するために行われる分析結果のこと。土壌分析は、土壌の肥沃度、pH値、EC値、塩基バランス、有機物の含有量などを評価し、適切な施肥計画や土壌改良に役立てるために行われる。

徒長
とちょう

日当たりや肥料などの栽培環境が原因となり、茎などがひょろひょろと通常よりも細長く伸びること。徒長すると、虚弱で倒れやすく、実りも悪くなってしまう。

な行

苗立枯病
なえたちかれびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。イネやトマト、ナス、キュウリ、オクラ、ネギなど多くの作物の育苗期間に発生する。発芽まもない苗が腐敗して、生育が止まり、枯死する。苗立枯病は、ピシウム属やフザリウム属、リゾープス属など、10種を越える糸状菌が病原菌となるが、その種類により病徴や発生原因、防除対策が異なる。

苗半作
なえはんさく

農家に昔から伝わる格言で、「苗の出来で作柄の半分が決まる」という意味。つまり、植物は、苗を育て上げるまでが重要であるということを意味する。

中生
なかて・ちゅうせい

作物の収穫までの期間を早・中・晩に分けたとき、中間になる品種。同じ作物であっても、生育の早さによって早生(わせ・そうせい)、中生(なかて・ちゅうせい)、晩生(おくて・ばんせい)の品種に分類される。

夏肥
なつごえ・なつひ

植物が最も活発に生長する夏季に行う追肥。

成り疲れ
なりづかれ

果樹や野菜などの作物が過剰な収穫や結実によって栄養を消耗し、生育や収量が低下する状態を指す。いわゆる、作物が繁茂し大量の実を付けることでエネルギーを使い果たし、生長が鈍化し、生産性が減少する「スタミナ切れ」の状態。

乳酸菌
にゅうさんきん

糖を分解して乳酸をつくる嫌気性の微生物の総称。一般的には発酵食品の製造に利用されているが、農業においても有用な細菌。
乳酸菌は、土壌の有機物を分解して土壌の肥沃化に貢献する。また、土壌のpH調整、病原菌や有害微生物の抑制、さらには作物の根の生長をサポートすることができる。

ネグサレセンチュウ
ねぐされせんちゅう

土壌中に生息し多くの作物に寄生して被害を与える、体長約0.5mm前後の細長いセンチュウの一種。
多くの作物に寄生し、根の中を移動・産卵しながら加害し、根を腐敗させる。また、活発に移動するため土壌病害の感染や併発を助長するので注意が必要。

根腐病
ねぐされびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。トマトやダイコン、レタスなど多くの野菜や花などに発生する。病原菌は作物の種類によって異なるが、好低温性と好高温性の菌が存在し、湿度の高い環境で多発する。作物の根が褐色に変色して腐敗し、しだいに葉が黄変して株全体に広がる。病原菌は、厚膜胞子の形で土壌中で2年以上生存可能であり、連作によって被害が拡大する。適切な条件が整うと、厚膜胞子は発芽して遊走子を放出し、根から侵入して発病させる。防除対策として、感染した株の除去や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、抵抗性の高い接木苗を選ぶことが有効である。

ネコブセンチュウ
ねこぶせんちゅう

土壌中に生息し多くの作物に寄生して被害を与える、体長約1mm前後の細長く透明なセンチュウの一種。種類によって寄主植物などが異なるが、土壌中で植物の根に寄生し、根こぶ(腫瘤)を形成する。この根こぶによって根の組織が破壊され、植物の水分吸収が悪くなり、ひどい場合は葉が黄変し枯れることもある。

根こぶ病
ねこぶびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害で、キャベツやハクサイ、カブ、ブロッコリーなどのアブラナ科にのみ感染する。感染すると、根に大小さまざまなコブを形成して、作物の生長を阻害する。排水の悪い土壌や酸性土壌を好む。生育適温は20度前後で、春から秋にかけて発生し、雨が続く梅雨や秋雨、台風の時期に多発する。また、pH6.5以下の酸性土壌で発生しやすい。病原菌は、感染株の根から休眠胞子として放出され、土壌内で10年以上生存することができる。適切な条件が整うと、休眠胞子は発芽して遊走子を放出し、根から侵入して発病させる。根こぶ病の病原菌は、風や水を通じて休眠胞子が拡散するなど、増殖力が強く、土壌内で長期間生存することができるため、一旦発病すると防除が困難である。予防対策として、感染した株の除去や土壌のpH調整、土壌消毒、水はけの改善などが有効。

ネマトリンエース
ねまとりんえーす

ネマトリンエース(石原ネマトリンエース粒剤)は、センチュウを防除するために使用される薬剤。

農研機構
のうけんきこう

農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)は、日本の農業と食品産業の発展を促進するために研究開発を行う研究機関。国や都道府県、大学、企業などとの連携した共同研究や技術移転活動で農業・食品産業の持続的な発展に貢献する。

濃度障害
のうどしょうがい

農薬や肥料などの過剰な施用や濃度の誤りによって生じる障害で、肥料焼けとも呼ばれる。濃度障害が生じると、根や葉が傷み、生育不良や枯れる原因となる。濃度障害を防ぐためには、正確な施肥や農薬の使用量の計量が必要。

農薬
のうやく

農作物等に加害する病害虫や雑草などから防除するために使用される薬剤。

は行

灰色かび病
はいいろかびびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。春から秋にかけて発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。特に施設栽培の密閉された多湿環境や密植、窒素過多で発病しやすい。葉や実などの一部に、水が染みたような淡褐色の斑点が現れ、さらに進行すると淡褐色のカビ状の菌糸に覆われる。トマトやイチゴ、バラなど、花や果実などの多くの植物に見られる。病斑上にできる胞子は、風や降雨によって飛散し、花穂や若葉の傷口などから感染する。そして、菌糸や胞子、または菌核の形で被害株の残渣や有機物内で生存する。防除対策として、発病の早期発見と感染した株の除去、密植や水はけの改善、マルチングなどが効果的。

葉かび病
はかびびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。春から秋にかけて発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。施設栽培されているトマトなどの作物によく見られる。主に葉に発生するが、激発時には茎や花、葉、果実などにも発生する。下葉に淡黄色の斑点が現れ、上位葉まで広がり、やがて葉の裏側に灰褐色のビロード状のカビ(胞子)が発生する。胞子は風によって飛散し、葉面に付着して菌糸を伸ばし、主に葉裏の気孔から侵入する。胞子は、被害株の残渣やハウスなどの資材の上で越冬する。防除対策として、発病の早期発見と感染した株の除去、密植や水はけの改善、マルチングなどが効果的。

播種
はしゅ

農作物を栽培する際に種をまくこと。

バチルス菌
ばちるすきん

バチルス菌(Bacillus subtilis)は、空気中や土壌中など、自然界に広く存在する好気性細菌の一種。稲ワラや枯れ草を分解することから枯草菌とも呼ばれ、納豆菌の一種としても知られている。「芽胞」を形成し、熱や酸、消毒液にも負けず生き延びることができるなどの特性を持ち、人の暮らしの様々な分野で活用されている。農業においては、土壌中の糸状菌(カビ)の増殖を抑えたり、土壌中の有機物を分解するなど、土壌改良に役立つ。

発酵リン酸
はっこうりんさん

発酵リン酸は、肥料の三大要素の一つであり、花や実、根の形成に必要な、リン酸を補うための肥料。土壌中のリン酸は、他のミネラル類(鉄、アルミニウムなど) と結合し吸収が悪いため、植物が利用しやすい形態に変換する必要がある。発酵リン酸は、有機物を微生物で発酵させることにより、リン酸を植物が吸収しやすい形態に変換した肥料。

バラゾウムシ
ばらぞうむし

体長2〜3㎜の小さな黒色の甲虫で、口の部分が象の鼻のように長い形状から名前が付けられている。バラの蕾が付き始める3月下旬ごろから加害する。バラの若くて柔らかい新芽や蕾などに産卵して、花首をかじって蕾を落下させる。産卵した卵は土の中で越冬するため、産卵された新芽や蕾は処分すること。予防策としては、新芽のころに殺虫剤を散布することが効果的。もし発生した場合は、捕殺か殺虫剤で駆除すること。

春肥
はるごえ・しゅんぴ

春肥は、早春から夏にかけて、作物に施す肥料を指す。

半身萎凋病
はんしんいちょうびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。気温22〜26度の多湿を好み、初夏から梅雨時と初秋の肌寒い気温のころに発病しやすい。下葉に淡黄色の斑点が現れ、葉や株の片側だけが黄色に変色して萎れ、のちに株全体が枯死する。ナスの他、トマト、ジャガイモ、メロンなど多くの作物に見られる。土壌伝染性の病害であり、病原菌は土壌中で菌核を形成し、3年以上生存可能であり、連作によって被害が拡大する。病原菌は根から侵入し、導管を伝って地上部へと広がっていく。防除対策として、発病の早期発見と除去、土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、抵抗性の高い接木苗を選ぶことなどが有効である。

pH
ぴーえっち・ぺーはー

pH(水素イオン濃度指数)は、水溶液の酸性・アルカリ性の強さを0〜14の値で表す指標である。
中性を示すpH7.0を基準とし、pH7.0より小さい場合は酸性が強く、pH7.0より大きい場合はアルカリ性が強いことを示す。
多くの作物はpH6.0~6.5の弱酸性土壌でよく育つが、作物の中には酸性を好むもの、アルカリ性を好むものがあり、それぞれの種類に適したpH値の調整が必要である。

微生物資材
びせいぶつしざい

微生物資材とは、微生物を豊富に含んだ粉末や液体の物質を指す。微生物資材には、生きた微生物だけでなく、微生物を安定して保持するための担体や微生物を活性化させるための栄養素などが含まれる。各微生物が得意とする分野は異なり、土壌のほか大気、水質などの改良に活用される。土壌改良においては、土壌中の有機物分解、窒素固定、病原菌の抑制などの働きをする。

微生物相
びせいぶつそう

土壌中の微生物相(土壌微生物相)は、土壌中に存在する細菌、放線菌、糸状菌(カビ)、藻類、原生動物などの様々な種類の微生物の集合体を指す。
土壌中の有機物は、微生物によって分解され、微生物の死骸や排泄物といったアミノ酸や糖類などの有機物も他の微生物の栄養源となり、生長や増殖に活用される。一部の微生物は窒素固定能力を持ち、他の微生物や植物に窒素を供給する。放線菌やバチルス菌などの微生物は、病原菌を抑制する働きを持つ。
これらの微生物相の多様性と相互作用は、土壌生態系の栄養循環と持続可能性において重要な役割を果たす。

病害
びょうがい

農業における病害とは、農作物などの病気による被害を指す。ウイルスや細菌、糸状菌(カビ)などの微生物が原因となり、農作物の性質や害虫、環境などの要素が重なって病害が発生する。

肥料
ひりょう

植物が健全に育つように土地に施す栄養分。窒素、リン酸、カリウムの肥料の3要素や微量要素を植物が吸収しやすい形で含んでいる。化学肥料のほか米ぬかや油粕などの有機物も肥料として使われる。

微量要素欠乏
びりょうようそけつぼう

植物が健全に育つために必要な微量要素が欠乏している状態で、生理障害を引き起こす一因となる。
植物の生育に必要な栄養素は17種類あり、そのうち微量要素と認められているのは、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、銅、モリブデン、塩素、ニッケルの8種類。

品種
ひんしゅ

品種とは、作物の栽培において、一定の特徴に基づいて同一の単位として分類される個体を指す。作物の品種の具体例は、ジャガイモの男爵、メークインなど。
なお、作物の品種は、交配種(F1)と固定種の2つに分類される。交配種は、雑種一代とも呼ばれ、異なる性質を交配することで品質や収量、育てやすさにおいて優れている(雑種強勢)が、二代目には引き継がれない。固定種は、自家採種した種で、同じ特徴を持った作物を作ることができる。

分けつ
ぶんけつ

イネ科の水稲や小麦、トウモロコシなどの植物の株元付近の関節から新芽が伸びて株分かれすること。分枝とも呼ばれる。

べと病
べとびょう

糸状菌(カビ)によって引き起こされる植物病害。初夏から梅雨時と初秋の多湿で肌寒い時や肥料切れで多く発生する。感染した葉が、湿度が高いとベトベトするので「べと病」と呼ばれている。ウリ科やアブラナ科、ネギ類、バラなど、多くの植物に見られる。症状は、葉のみに現れる。下葉に淡黄色の斑点ができ始め、葉裏にもカビが生じ、のちに上葉に広がる。病原菌は、雨や灌水の時に水が跳ね返ることで、葉裏に付着して侵入する。そして、病斑上で胞子をつくり、風などによって胞子が飛ばされて周囲にまん延する。防除対策として、発病の早期発見と感染した株の除去、密植や水はけの改善、マルチング、土壌消毒などが効果的。

防除
ぼうじょ

農業においては、生物(虫・動物・鳥)や雑草による被害を防ぐことを指す。

放線菌
ほうせんきん

土壌中に生息する、好気性細菌の一種。動植物に寄生して病原菌となる嫌気性放線菌も一部存在する。細胞の構造や大きさは細菌類と似ているが、糸状の菌糸を放射線状に伸ばして生育し、その先端に胞子を形成する。生態系においては、落葉などの有機物の分解や物質循環に関わる分解者として大きな役割を果たす。高温にも耐性があるため、太陽熱消毒後も生き残り、土壌構造の構成や土壌改良に役立つ。
抗菌薬ペニシリンや結核治療薬ストレプトマイシンは、放線菌が病原菌の生育を抑えるために出す抗生物質として発見された。現在でも医療現場で使用されている7割の抗生物質は放線菌由来である。

ぼかし
ぼかし

ぼかし(ぼかし肥料)とは、米ぬか・魚かす・油かす・骨粉・カニガラなどの有機質肥料を主な原料とし、それらを微生物により十分に分解、発酵させてつくる肥料のこと。「ぼかし」という名前は、土に混ぜることで、肥料分が薄められる(ぼかされる)ことに由来する。作物の生長初期に栄養分を迅速に供給することができるため、一般的に種まきや苗植えの際に使用され、土壌改良や微生物活性の促進にも寄与する。

甫場
ほじょう

田、畑、果樹園、牧草地など、農産物を育てる場所のこと。

保肥力
ほひりょく

土壌が持っている肥料成分を保持する能力のこと。 土壌に有機物を施用して微生物の働きを活性化させ、土壌を団粒構造にすると、保肥力が高まる。これにより、土壌中の肥料成分が流出せずに植物の根に吸収されやすくなる。

ま行

マルチ
まるち

農業におけるマルチ(マルチング)とは、畑の畝をビニールシートやポリエチレンフィルム、ワラなどで覆うことを指す。マルチを行うことで、土壌水分の蒸散を抑制したり、土壌温度の調節、 雑草抑制、肥料の流出抑制、病原菌の抑制など様々なメリットがある。

マルドリ栽培
まるどりさいばい

マルドリ栽培(マルドリ方式)とは、マルチ栽培と点滴潅水を組み合わせ、気象条件に左右されない環境で、潅水や施肥ができる仕組みを指す。

基腐病
もとぐされびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害で、サツマイモ(ヒルガオ科)にのみ感染する。近年では感染が多発し、壊滅的な被害をもたらしている。発病すると、地際の茎が黒変し、やがて地上部が枯死する。茎の黒変は本病原菌の胞子が詰まった柄子殻であり、水で濡れると大量の胞子を拡散し、周辺株にまん延する。感染した種イモや苗、土壌に残った残渣により伝染するため、種イモや苗の消毒と感染株の早期発見と除去、土壌消毒などが感染防止に効果的。

元肥
もとごえ

植物の種や苗を植え付ける前に、あらかじめ土に混ぜ込む肥料のこと。

や行

薬剤土壌消毒
やくざいどじょうしょうどく

土壌消毒剤を使用して、土壌の中に存在する有害微生物や病原菌、害虫、雑草の種子に対する土壌消毒を実施すること。
土壌消毒の方法には、化学物質を用いる方法(殺菌・殺虫剤の注入)と、熱を利用する方法(焼土、熱蒸気消毒法、太陽熱消毒)などがあるが、薬剤土壌消毒は化学物質を用いる方法にあたる。薬剤土壌消毒は、病原菌だけでなく、病原菌に対して抑制的に働く拮抗菌などの有益な微生物も同時に殺してしまうため、微生物の多様性や土壌生態系に対して大きな影響を与える。そのため、環境への影響や安全性への配慮も必要である。

有機
ゆうき

農業における有機とは、化学肥料や農薬の使用を制限し、自然環境との調和を目指す農業の概念として使用される。

有機酸
ゆうきさん

植物や微生物が有機物を分解して、エネルギーを得る際に分泌される化合物。微生物は、発酵の過程で有機物を分解し、有機酸を生成する。植物の根から分泌される有機酸は、根酸と呼ばれ、土壌中の栄養素の吸収を促進する。果実に含まれるクエン酸やりんご酸、ホウレンソウなどの一部の野菜に含まれるシュウ酸も有機酸の一種である。

有機酸鉄
ゆうきさんてつ

植物に吸収されやすい形態の鉄のこと。土壌中に鉄(酸化鉄)は豊富に存在するが、難溶性のため植物には吸収されない。しかし、植物の根や微生物が分泌する有機酸が鉄と結合して有機酸鉄になることで鉄がキレート化される。キレート化された有機酸鉄は、水に溶けやすくなり、植物の根により効果的に吸収される。

有機肥料
ゆうきひりょう

有機肥料は、化学合成された化学肥料とは異なり、有機物を原料として作られる。

有機物
ゆうきぶつ

有機物とは、広義では生物由来の炭素を含む物質を指す。
農業における有機物は、植物のくずや落ち葉や、家畜の糞などを堆肥化させることで得られ、土壌改良に役立つ。

陽熱プラス
ようねつぷらす

これまでの太陽熱土壌消毒をより効果的に実施するための技術体系。陽熱プラスでは、従来型の作業手順を見直して、太陽熱土壌消毒前に元肥、耕起、畝立てをする。さらに、太陽熱土壌消毒処理中に地温をモニタリングしながら適切な太陽熱土壌消毒処理時間を判断する。これにより、病害対策だけではなく、土壌の消毒や養分供給、生物相の改善などの効果を予測することが可能になった。

葉面散布
ようめんさんぷ

作物の葉や茎、実などの表面に養分が含まれた液体を散布し、栄養を与える施肥の方法。葉面散布は、土壌からの吸収に比べて養分の吸収効率が高く、迅速に栄養を供給できる。

ら行

ランナー
らんなー

イチゴやイチジク、ハナミズキ、キイチゴなどに見られる「匍匐茎(ほふくけい)」と呼ばれる茎のこと。 ランナーは、親株から地表面を這うように長く伸びて、先端から出てきた芽や根が子株として生長し、一定の大きさに生長すると、切り離して独立させることができる。

緑肥
りょくひ

主要農作物の間作として栽培し、生長後そのまま耕して肥料にすること。水田の休閑期に見られるレンゲソウなど。緑肥は、土壌改良や病害虫の予防、雑草の抑制などに効果がある。
代表的な緑肥作物には、イネ科とマメ科があり、特にマメ科の植物は、根粒菌の作用により窒素を固定する効果がある。

リン酸
りんさん

リン酸(P)は、植物の生長に不可欠な肥料の3要素の一つ。リン酸は、花肥(はなごえ)または実肥(みごえ)と呼ばれ、開花・結実を促進するほか、植物の遺伝情報の伝達のもととなるDNAやRNAの構成成分として重要な役割を果たす。

リン酸鉄
りんさんてつ

リン酸が土壌に施用されると、土壌中にあるカルシウムや鉄、アルミニウムなどと結合してリン酸塩(リン酸鉄)を形成するため、植物に吸収利用できない形態になる。この過程によって、リン酸鉄は土壌中に生成される。

連作障害
れんさくしょうがい

特定の作物を同じ場所で繰り返し栽培することによって、生育不良や病害虫被害が生じること。土壌中の栄養バランスの崩壊や病害虫の発生が主な原因。作物の輪作や緑肥の活用は、連作障害の予防に効果がある。

露地栽培
ろじさいばい

ビニールハウスなどの施設を使わず、屋外の畑で作物を栽培する方法。コストや手間がかからない反面、鳥獣や害虫の被害、気候変動の影響を大きく受ける。

わ行

早生
わせ・そうせい

作物の収穫までの期間が比較的短い品種。同じ作物であっても、生育の早さによって早生(わせ・そうせい)、中生(なかて・ちゅうせい)、晩生(おくて・ばんせい)の品種に分類される。