農業用語集(病害虫・生理障害)

あ行

青枯病
あおがれびょう

土壌伝染性の植物病害で、感染した植物や土壌中に存在する細菌が原因で起こる。数日のうちに青いまま突然枯れてしまうことから「青枯病」と呼ばれる。トマト、ナス、ピーマン、ジャガイモをはじめとした多くの植物で発生する。地温が20度以上になると発病し始め、25~30度で多発する。原因菌は土壌の水中を泳いで移動し、根などの傷口などに集まって侵入する。そして、導管の中で増殖することにより導管が詰まり、水分の移動が妨げられ、萎凋、枯死する。被害株の茎を切ると細菌の集まった白濁液が流出することが診断の手がかりとなる。原因菌は感染した株や土壌中で2〜3年ほど生存できるが、乾燥させると死滅する。防除対策として、剪定に使用するハサミの消毒や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、窒素過多を避ける、マルチング、抵抗性品種あるいは抵抗性の高い接木苗を選ぶことなどが有効である。

アオミドロ
あおみどろ

淡水に生息する藻類の総称。水田で大量発生すると、苗の倒れや生長抑制などの悪影響がある。水温20度前後、有機物の使用、窒素やリンの過多などの条件で多発する。

アブラムシ
あぶらむし

新芽や新梢、葉裏などに群棲して植物の汁を吸い、生育を阻害する吸汁性害虫。体長1〜4mmぐらい、体色は緑、赤、黒、黄色など種類により様々。繁殖力が旺盛で、一年中発生するが、特に春と秋に発生が目立つ。ウイルス病を媒介したり、甘い排泄物がアリを誘引することがあるため、早めに防除することが望ましい。

アンモニアガス障害
あんもにあがすしょうがい

土壌からアンモニアガスが発生することが原因で生じる障害で、施設栽培で多く発生する。アンモニアガス障害は、石灰質肥料を多量施用した土壌に窒素肥料や未熟堆肥などを施用した場合にアンモニアガスが放出される。土壌のpHがアルカリ性である場合に発生しやすく、葉が白化したり黒ずんで萎凋するなどの症状が現れる。

萎黄病
いおうびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。気温22〜26度の多湿を好み、初夏から梅雨時と初秋の肌寒い気温のころに発病しやすい。下葉に淡黄色の斑点が現れ、葉や株の片側だけが黄色に変色して萎れ、のちに株全体が枯死する。ナスの他、トマト、ジャガイモ、メロンなど多くの作物に見られる。病原菌は、土壌中で菌核の形で3年以上生存可能であり、連作によって被害が拡大する。病原菌は根から侵入し、導管を伝って地上部へと広がっていく。防除対策として、感染した株の除去や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、抵抗性の高い接木苗を選ぶことが有効である。

異常気象
いじょうきしょう

通常の気温や気候パターンから、大きくかけ離れた気象現象のこと。異常気象の例としては、ゲリラ豪雨に代表される大雨や、遅い台風の襲来などがある。

萎凋病
いちょうびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。トマトやネギ類など、さまざまな農作物に見られる。露地、施設栽培ともに晩春から初秋にかけて発生し、高温時に多発する。下葉から黄化し、萎凋がひろがり、やがて枯死する。被害株の茎などを切断すると、維管束が褐変していることが診断の手がかりとなる。病原菌は、感染植物の残渣や土壌中で厚膜胞子の形で5〜15年生存可能であり、連作によって被害が拡大する。新たな作物が栽培されると、厚膜胞子は発芽し、根に侵入する。防除対策として、感染源となる感染植物の撤去や土壌消毒、根を傷めるセンチュウなどの防除などが効果がある。

うどんこ病
うどんこびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。葉面にうどん粉(小麦粉)を振りかけたようなカビが生えることから「うどんこ病」と呼ばれる。葉に白い粉状のカビが生え始め、徐々に株全体に広がって黄変し、最終的には枯れることもある。キュウリやトマト、バラなど、あらゆる植物に発生する。一般的に多くの糸状菌の植物病害は多湿で発生しやすいのに対し、うどんこ病は湿度が低い環境下でも発生するという特徴がある。
うどんこ病の菌は、糸状の菌糸から成り、胞子の入った子のう殻を作る。胞子は飛散して伝染し、地面に落ちた子のう殻は越冬し、翌年の作物に被害を及ぼすことがある。感染初期の段階であれば、病変箇所を除去することで自然治癒できるため、早期発見と対処が感染拡大を防ぐために効果がある。

疫病
えきびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。トマトやカボチャ、ピーマン、じゃがいも、スイカなど多くの野菜や花などに見られる。雨によって伝播するので、多湿時に発生しやすく、梅雨や台風、秋の長雨の時期に多発する。水が浸みたような褐色の病斑が葉の先に現れ、茎や果実にも広がり、腐敗して枯死する。湿度の高い環境では、白い霜状のカビを生じる。病原菌は土壌中に被害残渣とともに生存し、雨や灌水の時に水が跳ね返ることで、葉、茎、果実に付着し、病気を引き起こす。病原菌は菌糸を伸ばして胞子を形成し、水に濡れて飛散した胞子は、遊走子となって泳いで移動し、気孔から侵入する。病原菌は、感染植物の残渣や土壌中で厚膜胞子の形で越冬する。防除対策として、感染源となる感染植物の撤去や土壌消毒、連作を避ける、マルチング、抵抗性品種あるいは抵抗性の高い接木苗を選ぶことが有効である。

塩類障害
えんるいしょうがい

土壌溶液中の塩類濃度が植物の許容値を超えたときに起こる作物の生育障害のこと。主に肥料に含まれる塩類の蓄積や、海水の農地への流入によって起こる。露地栽培では土壌中の塩類が雨水によって流亡するため塩類過剰は少ないが、施設栽培では肥料成分が蓄積しやすいため、塩類障害が起きやすい。

黄化葉巻病
おうかはまきびょう

黄化葉巻病は、トマト、ミニトマト、トルコギキョウなどに起こるウイルス病害で、主にタバココナジラミがウイルスを媒介する。1996年に静岡県の施設栽培トマトで初めて発見され、その後も広範囲で発生が確認されている。黄化葉巻病の症状は、新葉の縁が退色しながら黄化して葉巻し、のちに葉脈間が黄化して縮葉となり、株全体が萎縮する。ウイルスに感染したタバココナジラミは、最短約15分の吸汁でウイルスを媒介させるほどの感染力を持つ。黄化葉巻病は吸汁によって感染が拡大するが、経卵伝染や土壌伝染などは確認されていない。防除対策として、感染した植物の早期発見と植物残渣の処理、圃場周辺の除草、光反射マルチなどの活用が有効である。

か行

害虫
がいちゅう

植物に害を及ぼす昆虫や節足動物のこと。植物を食べたり、植物の汁を吸うなどして加害し、収穫量の減少や品質の低下、病原菌の伝播などの問題を引き起こすことがある。

ガス害
がすがい

土壌からガスが発生することが原因で生じる障害で、施設栽培で多く発生する。主なガス害は、亜硝酸ガスかアンモニアガスによる障害である。
亜硝酸ガス障害は、土壌中のアンモニアが微生物により分解される過程で亜硝酸ガスが発生する。土壌のpHが酸性である場合に発生しやすく、葉の萎縮、発育不良、組織の壊死などの症状を引き起こす。
アンモニアガス障害は、石灰質肥料を多量施用した土壌に窒素肥料や未熟堆肥などを施用した場合にアンモニアガスが放出される。土壌のpHがアルカリ性である場合に発生しやすく、葉が白化したり黒ずんで萎凋するなどの症状が現れる。

株腐病
かぶぐされびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。キャベツやホウレンソウ、トマトなど多くの野菜や花などに見られ、10 〜25度ぐらいの時期に発生する。地際部が褐変して腐敗し、やがて株全体が枯れる。病斑部には淡褐色の菌糸や褐色で不整形の菌核が形成され、胞子を飛散させる。また、土壌から菌糸が伸長し、根や地際部の茎から侵入する。病原菌は、植物組織内や土壌中に菌糸および菌核の形で生存し、連作によって被害が拡大する。防除対策として、感染した株の除去や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、マルチング、抵抗性の高い接木苗を選ぶことが有効である。

カリ欠
かりけつ

カリ欠(カリウム欠乏)とは、植物の生育に不可欠な栄養素であるカリウムが欠乏した状態を指す。カリウム欠乏は、葉の枯れや生長不良、花や果実の発育不良、抵抗力の低下などの生理障害を引き起こす一因となる。カリウムは、水で流出しやすいため、腐植の少ない土壌や作物の生育後期には特に発生しやすい。

カルシウム欠乏
かるしうむけつぼう

カルシウム欠乏は、植物にとって重要な栄養素であるカルシウムが不足している状態を指す。カルシウムは植物の生長や発育に不可欠な栄養素であり、不足すると生長の盛んな新芽や根など、組織の先端に症状が現れる。カルシウム欠乏症が引き起こす生理障害として、トマトの尻腐れ症やハクサイのチップバーン・芯腐れ症などが知られている。
カルシウム欠乏症は、単に土壌中のカルシウムが不足している場合だけでなく、塩基バランスが崩れたり、土壌の酸性化、乾燥、窒素やリンなどの過多などの環境条件も障害発生の原因になる。カルシウム欠乏症は、引き起こす要因が複雑で対策を取りにくいが、カルシウムの葉面散布は、発生抑制のための有効な手段のひとつとされている。

干ばつ
かんばつ

降水量が通常よりも極端に少なく、農作物に必要な水が不足する状態。

菌核病
きんかくびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。菌核病は多犯性で、大豆などの豆類、葉菜類、果菜類、果樹、イネ科の植物などさまざまな植物に被害をもたらす。雨によって伝播するので、多湿時に発生しやすく、梅雨や台風、秋の長雨の時期に多発する。葉の根元や茎の枝分かれ部分などに暗褐色のシミのような病斑が出現し、病斑は徐々に広がり、白い綿毛のようなカビに覆われる。白いカビはやがて黒い塊の菌核に変わり、植物全体を腐敗させる。病原菌は、気温が20度前後になると発芽し、小さいキノコのような子のう盤を生やして胞子を放出する。これらの胞子は、植物に付着したあとに泥はねや雨水がかかると、菌糸を伸ばして植物体内に侵入し、感染を広げる。病原菌は、植物組織内や土壌中に菌核と呼ばれる菌糸の塊を形成し、土壌中で4〜6年間生存可能であり、連作によって被害が拡大する。また、感染力が非常に強く、瞬く間に被害が拡大し、完治困難である。防除対策として、感染源となる感染株の早期発見と撤去、土壌消毒、連作を避ける、マルチングなどが有効である。

茎枯病
くきがれびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。特にアスパラガスに多く見られる。春から秋にかけて発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。茎の枝分かれする部分が茶色く変色し、黒い斑点が現れ、しだいに紡錘形に拡大して茎全体が枯れる。黒い斑点の中には、病原菌となる柄胞子が生成される。柄胞子は柄子殻と呼ばれる構造に守られ、成熟すると放出される。病原菌は、感染した株に形成された柄胞子の中で越冬し、春になると繁殖して柄胞子を飛散させる。感染防止対策として、感染株の適切な撤去や雨除け、定期的な薬剤散布、マルチングなどが有効である。

黒星病
くろぼしびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。バラやバラ科の果実に多く見られ、黒点病とも呼ばれる。葉に黒い円形の斑点が現れ、斑点がだんだん大きく広がっていくと、やがて斑点のまわりから黄色く変色し落葉する。黒星病は、土壌中に常在している病原菌が、雨滴のはね返りで葉や茎に付着することで伝染する。20~25度ぐらいの比較的高温で、雨が続く梅雨や秋雨、台風の時期に多発する。感染力がとても強く、瞬く間に被害が拡大し、完治困難なため、早期発見と対処が重要である。

根茎腐敗病
こんけいふはいびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。アスパラガスやショウガ、ミョウガに多く見られる。春から秋ごろまで発生するが、特に梅雨や秋雨の時期に多発する。茎の枝分かれする部分が茶色く変色し、黒い斑点が現れ、しだいに紡錘形に拡大して茎全体が枯れる。黒い斑点の中には、病原菌となる柄胞子が生成される。柄胞子は柄子殻と呼ばれる構造に守られ、水に濡れると放出される。病原菌は、植物組織内や土壌中に柄胞子の形で長期間生存可能であり、連作によって被害が拡大する。防除対策として、感染源となる感染株の撤去や土壌消毒、連作を避ける、マルチング、種子消毒が感染予防として有効である。

さ行

先白果
さきじろか

先白果とは、イチゴの果実において、先端部分が白く色づかずに残る現象を指す。通常、果実の先端から着色していくが、先白果は先端が白いまま残り、着色しないまま収穫適期となる。
秋口や春先など、栄養が生長に向かっている時期や、品種の特性によって発生することが多い。特に、窒素やカリが優先的に作用したり、水分が過剰な状態で発生しやすく、大玉果に多く見られる傾向がある。

糸状菌
しじょうきん

糸状菌は、カビとして一般的に知られる細菌で、菌糸と呼ばれる糸状の構造を形成し、胞子を通じて増殖する。代表的な糸状菌には、キノコ類や麹菌、白癬菌などがある。糸状菌は、空気中や水中、そして人体など、さまざまな環境で生息する。特に土壌中には、糸状菌の種類が十万種以上存在し、放線菌よりも多く、土壌微生物の中で最も多いと言われている。糸状菌の中には植物の病害を引き起こすものもあり、炭疽病菌やうどんこ病菌など、さまざまな種類がある。
一方、糸状菌は土づくりにおいて非常に重要な存在であり、土壌の健全性や植物の生育を向上させる役割を果たす。特に、菌根菌と呼ばれる糸状菌は植物の根と共生することで、根の吸収力を高めたり、栄養を供給するのに役立つ。

シストセンチュウ
しすとせんちゅう

シストセンチュウは、連作障害を引き起こす植物寄生センチュウの一種。シストセンチュウの中でも、特に作物に大きな被害を及ぼす種類は、「ジャガイモシストセンチュウ」「ダイズシストセンチュウ」「クローバーシストセンチュウ」。
シストセンチュウは、特定の植物に寄生し、増殖率が非常に高いことが特徴。雌の成虫は体内に多数の卵を充満させ、自らの体をシストと呼ばれる卵の殻に変化させて繁殖する。シスト内の卵は、十数年にわたって生存することができるとされる。

尻腐病
しりくされびょう

尻腐病(尻腐症)は、カルシウム欠乏が原因でトマトやナス、ピーマン、パプリカなどの果実のお尻が、腐ったように黒くなる生理障害。

スリップス
すりっぷす

スリップス(Thrips)は和名をアザミウマといい、一般的な体長は、1~2mmの小さな昆虫。
雑草を含むさまざまな種類の植物に寄生し、種類も非常に多い害虫。梅雨から秋にかけて特に活発で、夏の暑い時期に大繁殖する。
スリップスが寄生すると、葉や花、果実から吸汁したり、作物にウイルス病を媒介するため、作物の生育や収量に重大な影響を及ぼすことがある。

生理落果
せいりらっか

果樹の生理落果は、花が落下する「早期落果」と、収穫前の果実が落下する「後期落果」の2つに分けられる。
早期落花は、受精不良や栄養不良、気象不良が主な原因とされる。後期落果は、果実同士が生長に必要な栄養を競い合う養分競合が関与していると考えられている。このように、果樹の生理的な落果は、果樹自体が健全な状態を維持するための自己調節作用ともいえる。

センチュウ
せんちゅう

センチュウは、細長い線状の体を持つ、約1mm前後の小さな虫。センチュウは、地球上のいたるところに生息しており、種類はたいへん多いですが、自活センチュウと寄生センチュウの2つに分けられる。自活センチュウは、土壌中の細菌、カビ、腐敗有機物などを分解する有益なセンチュウだが、植物に加害する寄生センチュウは、連作障害の一因となる。代表的な寄生センチュウは、「ネコブセンチュウ」「ネグサレセンチュウ」「シストセンチュウ」の仲間。センチュウは、つる割病や青枯病、半身いちょう病などの土壌病害への感染や発病を助長させるので注意が必要。

た行

立枯病
たちがれびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。病徴は病原菌の種類によって特徴があるが、排水不良な土壌で増殖した病原菌の影響で、植物の茎が細くくびれて、作物が立ったまま枯れる。サツマイモ、ホウレンソウ、アスパラガス、ニラなどほぼすべての植物に発生する。春から秋ごろまで発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。病斑部に発生するカビの胞子は、適当な温湿度条件が整うと発芽し、菌糸または遊走子を形成し、伝播する。病原菌は菌糸及び菌核の形で、被害株残渣と共に土壌中で長期間生存可能であり、連作によって被害が拡大する。酸性土壌で発生しやすいので、石灰の多施用を控える。そのほか、感染予防対策として、感染した株の除去や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善などが有効である。

炭疽病
たんそびょう

糸状菌(カビ)の一種が原因となり、野菜や果樹などさまざまな植物の葉、茎、花、果実などに、灰褐色から黒褐色の病斑を生じる植物病害。露地栽培で多く見られ、春から秋にかけて発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。葉は穴があき、果実は腐り、茎や枝は病斑が生じた部分から上が枯れる。病斑上にできる胞子は、風や降雨による土の跳ね返りによって飛散し、下葉に感染する。病原菌は、菌糸または胞子の形で、被害株残渣と共に土壌中で越冬する。防除対策として、発病の早期発見と感染した株の除去、土壌消毒、連作を避ける、密植や水はけの改善、マルチングなどが効果的。

チップバーン
ちっぷばーん

カルシウム欠乏が原因で、イチゴや葉菜類の葉の縁や先端部分が焼けたように褐変枯死する生理障害。

つるぼけ
つるぼけ

窒素肥料のやり過ぎなどが原因で、作物の茎や葉っぱばかりが育ち、肝心の花や実が育たないこと。

つる割病
つるわれびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。春から夏にスイカやキュウリ、メロンなどウリ科の作物に多く発生する。土壌中の糸状菌が、降雨や土の跳ね返りによって茎に付着することや多湿が原因で、茎の地面に近い部分が縦に割れてカビが生える。日中つるが萎れるようになり、黄褐色に変色し、やがて地際部の茎が裂けるように割れて枯死する。病原菌は、土壌中や感染植物の残渣に、厚膜胞子という形で長期間生存可能であり、連作によって被害が拡大する。土壌中の病原菌は、植物の根の表面や傷口から侵入し、植物の体内で菌糸を広げ、維管束で胞子を増殖させる。感染対策として、土壌消毒や種子消毒、連作を避ける、マルチング、つる割病耐病性のカボチャ台木を選ぶことなどが有効である。

倒伏
とうふく

稲・麦・樹木などが倒れること。

土壌病害
どじょうびょうがい

土壌に生息するウイルスや細菌、糸状菌などの病原体が、植物の根などから侵入して生ずる植物病害。具体的には、青枯病や萎黄病、つる割れ病、立枯病、萎凋病など。

徒長
とちょう

日当たりや肥料などの栽培環境が原因となり、茎などがひょろひょろと通常よりも細長く伸びること。徒長すると、虚弱で倒れやすく、実りも悪くなってしまう。

な行

苗立枯病
なえたちかれびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。イネやトマト、ナス、キュウリ、オクラ、ネギなど多くの作物の育苗期間に発生する。発芽まもない苗が腐敗して、生育が止まり、枯死する。苗立枯病は、ピシウム属やフザリウム属、リゾープス属など、10種を越える糸状菌が病原菌となるが、その種類により病徴や発生原因、防除対策が異なる。

成り疲れ
なりづかれ

果樹や野菜などの作物が過剰な収穫や結実によって栄養を消耗し、生育や収量が低下する状態を指す。いわゆる、作物が繁茂し大量の実を付けることでエネルギーを使い果たし、生長が鈍化し、生産性が減少する「スタミナ切れ」の状態。

ネグサレセンチュウ
ねぐされせんちゅう

土壌中に生息し多くの作物に寄生して被害を与える、体長約0.5mm前後の細長いセンチュウの一種。
多くの作物に寄生し、根の中を移動・産卵しながら加害し、根を腐敗させる。また、活発に移動するため土壌病害の感染や併発を助長するので注意が必要。

根腐病
ねぐされびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。トマトやダイコン、レタスなど多くの野菜や花などに発生する。病原菌は作物の種類によって異なるが、好低温性と好高温性の菌が存在し、湿度の高い環境で多発する。作物の根が褐色に変色して腐敗し、しだいに葉が黄変して株全体に広がる。病原菌は、厚膜胞子の形で土壌中で2年以上生存可能であり、連作によって被害が拡大する。適切な条件が整うと、厚膜胞子は発芽して遊走子を放出し、根から侵入して発病させる。防除対策として、感染した株の除去や土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、抵抗性の高い接木苗を選ぶことが有効である。

ネコブセンチュウ
ねこぶせんちゅう

土壌中に生息し多くの作物に寄生して被害を与える、体長約1mm前後の細長く透明なセンチュウの一種。種類によって寄主植物などが異なるが、土壌中で植物の根に寄生し、根こぶ(腫瘤)を形成する。この根こぶによって根の組織が破壊され、植物の水分吸収が悪くなり、ひどい場合は葉が黄変し枯れることもある。

根こぶ病
ねこぶびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害で、キャベツやハクサイ、カブ、ブロッコリーなどのアブラナ科にのみ感染する。感染すると、根に大小さまざまなコブを形成して、作物の生長を阻害する。排水の悪い土壌や酸性土壌を好む。生育適温は20度前後で、春から秋にかけて発生し、雨が続く梅雨や秋雨、台風の時期に多発する。また、pH6.5以下の酸性土壌で発生しやすい。病原菌は、感染株の根から休眠胞子として放出され、土壌内で10年以上生存することができる。適切な条件が整うと、休眠胞子は発芽して遊走子を放出し、根から侵入して発病させる。根こぶ病の病原菌は、風や水を通じて休眠胞子が拡散するなど、増殖力が強く、土壌内で長期間生存することができるため、一旦発病すると防除が困難である。予防対策として、感染した株の除去や土壌のpH調整、土壌消毒、水はけの改善などが有効。

濃度障害
のうどしょうがい

農薬や肥料などの過剰な施用や濃度の誤りによって生じる障害で、肥料焼けとも呼ばれる。濃度障害が生じると、根や葉が傷み、生育不良や枯れる原因となる。濃度障害を防ぐためには、正確な施肥や農薬の使用量の計量が必要。

は行

灰色かび病
はいいろかびびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。春から秋にかけて発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。特に施設栽培の密閉された多湿環境や密植、窒素過多で発病しやすい。葉や実などの一部に、水が染みたような淡褐色の斑点が現れ、さらに進行すると淡褐色のカビ状の菌糸に覆われる。トマトやイチゴ、バラなど、花や果実などの多くの植物に見られる。病斑上にできる胞子は、風や降雨によって飛散し、花穂や若葉の傷口などから感染する。そして、菌糸や胞子、または菌核の形で被害株の残渣や有機物内で生存する。防除対策として、発病の早期発見と感染した株の除去、密植や水はけの改善、マルチングなどが効果的。

葉かび病
はかびびょう

糸状菌(カビ)が原因の植物病害。春から秋にかけて発生し、特に梅雨や台風、秋の長雨など多湿な時期に多発する。施設栽培されているトマトなどの作物によく見られる。主に葉に発生するが、激発時には茎や花、葉、果実などにも発生する。下葉に淡黄色の斑点が現れ、上位葉まで広がり、やがて葉の裏側に灰褐色のビロード状のカビ(胞子)が発生する。胞子は風によって飛散し、葉面に付着して菌糸を伸ばし、主に葉裏の気孔から侵入する。胞子は、被害株の残渣やハウスなどの資材の上で越冬する。防除対策として、発病の早期発見と感染した株の除去、密植や水はけの改善、マルチングなどが効果的。

バラゾウムシ
ばらぞうむし

体長2〜3㎜の小さな黒色の甲虫で、口の部分が象の鼻のように長い形状から名前が付けられている。バラの蕾が付き始める3月下旬ごろから加害する。バラの若くて柔らかい新芽や蕾などに産卵して、花首をかじって蕾を落下させる。産卵した卵は土の中で越冬するため、産卵された新芽や蕾は処分すること。予防策としては、新芽のころに殺虫剤を散布することが効果的。もし発生した場合は、捕殺か殺虫剤で駆除すること。

半身萎凋病
はんしんいちょうびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害。気温22〜26度の多湿を好み、初夏から梅雨時と初秋の肌寒い気温のころに発病しやすい。下葉に淡黄色の斑点が現れ、葉や株の片側だけが黄色に変色して萎れ、のちに株全体が枯死する。ナスの他、トマト、ジャガイモ、メロンなど多くの作物に見られる。土壌伝染性の病害であり、病原菌は土壌中で菌核を形成し、3年以上生存可能であり、連作によって被害が拡大する。病原菌は根から侵入し、導管を伝って地上部へと広がっていく。防除対策として、発病の早期発見と除去、土壌消毒、連作を避ける、水はけの改善、抵抗性の高い接木苗を選ぶことなどが有効である。

病害
びょうがい

農業における病害とは、農作物などの病気による被害を指す。ウイルスや細菌、糸状菌(カビ)などの微生物が原因となり、農作物の性質や害虫、環境などの要素が重なって病害が発生する。

微量要素欠乏
びりょうようそけつぼう

植物が健全に育つために必要な微量要素が欠乏している状態で、生理障害を引き起こす一因となる。
植物の生育に必要な栄養素は17種類あり、そのうち微量要素と認められているのは、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、銅、モリブデン、塩素、ニッケルの8種類。

べと病
べとびょう

糸状菌(カビ)によって引き起こされる植物病害。初夏から梅雨時と初秋の多湿で肌寒い時や肥料切れで多く発生する。感染した葉が、湿度が高いとベトベトするので「べと病」と呼ばれている。ウリ科やアブラナ科、ネギ類、バラなど、多くの植物に見られる。症状は、葉のみに現れる。下葉に淡黄色の斑点ができ始め、葉裏にもカビが生じ、のちに上葉に広がる。病原菌は、雨や灌水の時に水が跳ね返ることで、葉裏に付着して侵入する。そして、病斑上で胞子をつくり、風などによって胞子が飛ばされて周囲にまん延する。防除対策として、発病の早期発見と感染した株の除去、密植や水はけの改善、マルチング、土壌消毒などが効果的。

ま行

基腐病
もとぐされびょう

糸状菌(カビ)が原因の土壌伝染性の植物病害で、サツマイモ(ヒルガオ科)にのみ感染する。近年では感染が多発し、壊滅的な被害をもたらしている。発病すると、地際の茎が黒変し、やがて地上部が枯死する。茎の黒変は本病原菌の胞子が詰まった柄子殻であり、水で濡れると大量の胞子を拡散し、周辺株にまん延する。感染した種イモや苗、土壌に残った残渣により伝染するため、種イモや苗の消毒と感染株の早期発見と除去、土壌消毒などが感染防止に効果的。