サンビオティック農業の考え方
サンビオティック農業が目指すカタチ
サンビオティック(Sunbiotic)農業とは、「太陽の恵み、自然の恵みと、生物的な(微生物の)働き、メカニズムを活かした、持続可能な農業を目指そう」という、私たちが提唱する新しい農業のカタチのことです。
その主役として活躍するのは、土壌中の様々な微生物(微生物群)の働きと植物の生理をうまく取り入れる技術です。
これまでの化学偏重の農業(化学肥料、化学農薬)から一歩進めて、安全性はもちろん、品質や収穫量も高めていく画期的な農業スタイルだと考えています。
植物を人に例えると分かりやすい!?
私は、植物の生理を、人間の生理に例えて話すことがよくあります。たとえば、植物の「栄養生長」と「生殖生長」は、人間の「こどもがすくすくからだを大きくする時期」と「おとなが伴侶を見つけ子どもを作る時期」に例えられます。そういうと、分かりやすいですね。
なぜ、植物と人間を、同列で話せるのか。これは、植物も、動物も、また微生物も、やはり同じ生きものとして、大変よく似ているからだと思います。
微生物が人の体質や健康に影響
最近になって、多くの科学者が最も熱い話題として取り扱っている研究課題のひとつは、人の腸内微生物です。有名な言葉で言えば、腸内フローラといわれ、もっと学術的にはマイクロバイオータといわれています。つい最近まで、人や生き物の詳細な設計図はすべてDNAに記載されている、といわれてきました。ところが、DNAをいくら解析しても、それだけですべての設計図が記載されているとはいえないことが分かってきたのです。
たとえば、体質や性格、病気については、むしろ違う要因があるようだ。そこで注目されているのが、人の腸内の微生物叢(腸内フローラ)というわけです。体質的に肥満型だとか痩せ型だとかいうのは、腸内細菌が大きく影響をしています。今では、肥満は単純なカロリーの収支だけでは説明がつかないというのは、もはや医者の間でも常識になりつつあります。
また、穏やかな性格だとか、怒りやすいとか、頭の良し悪しさえ、腸内の微生物叢(腸内フローラ)が影響しています。さらには、アトピー性皮膚炎やアレルギー、ガン、自閉症やうつ病の原因が、腸内細菌だったという実証例も多く出てきています。驚くべきことだと思いませんか?
人は、多くの多種多様な微生物と一緒に暮らしているということです。その微生物たちと共存してこそ、健康に生きられるということです。私たちは、自分自身を健康にしようとするのではなく、腸内細菌を育てようという意識で食生活をはじめ、日ごろの暮らしをしていくと、驚くほど健康になっていくのです。
植物の健康もまた微生物から〜そして農業への応用
このことは、植物も同じです。実は、植物の根と人の腸は、大変よく似ているといわれています。それは、ともに無数ともいえる多種多様な共生微生物とともに、栄養を分解、生成、吸収し、互いに支えあっているということです。植物も、多くの数え切れない微生物とともに共生してこそ、植物の健康がある。この事実に注目し、体系化した農業技術がサンビオティック農業です。
これまでの農業技術に、新しい視点を付け加えることで、皆さまの栽培技術はまた一段と進歩します。これまで、普段の食生活で腸内細菌を育てる、ということを意識しなかったように、植物の共生微生物を育てる、という意識をあまり持っていなかったかもしれません。生態系の底辺(基盤)を支える微生物に注目すると、これまでの農業技術をもう一歩進めることが出来ます。ぜひ私たちと一緒に、新しい農業へ歩みを進めましょう。