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糖の転流と分解と、免疫力の発動についての発見

ちょっとネット見てて発見した記事。

植物は細胞外の糖を減少させることにより病原細菌の増殖を抑制する山田晃嗣・高野義孝

(京都大学大学院農学研究科 応用生物科学専攻植物病理学分野)
http://first.lifesciencedb.jp/archives/14981

これは大変面白い話題だなぁ。農業関係者には、面白いかな!?

植物の免疫機構(「免疫」と呼んで良いのなら)は、まだまだ分かっていないことだらけだけれど、「糖」との関係での研究は、珍しいと思う。

植物は、一般的に葉の葉緑素で「糖」を作り、いったんデンプンとして(どこかに)ため込む。これを光合成が低下する夜などに、再度「糖」に分解して、茎を伝って、根や果実や生長点へ運ぶ。
その「糖」というのは、おもにスクロース、いわゆるショ糖で、これをさらに分解するとブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)になる、ということは、植物生理の復習ですね。

この論文で、へえと思ったのは、植物は、ショ糖をいったん細胞外に出して、酵素でブドウ糖と果糖に分解して、それをまた細胞内に取り込んでいるという事。知らなかったなぁ〜。細胞内に分解酵素を入れちゃうと、ショ糖(備蓄)がなくなって大変なことになるんだろうな。

そしてまた面白いのは、この病原微生物が接触しているというシグナルを受け取ると、このブドウ糖や果糖を「細胞内」に取り込むスピードが速くなるという。これによって、細胞外の、つまり表皮付近の糖度が下がり、病原菌に栄養を与えるチャンスを奪う、という事らしい。
実に、面白い発見です。

という事は、最近言われている、酵母細胞壁や糸状菌細胞壁が、免疫を作動しているのは、このメカニズム(も)働いている可能性があるという事ですね。
それに含まれるβグルカンなどの多糖類や、論文にあるような糸状菌などがもつ特有のたんぱく質が、植物の免疫スイッチを押して、病原菌が分解できない多糖類やセルロースで壁を厚くして固めたり、またはこのように、細胞外の糖度やアミノ酸を下げて、病原菌が少し侵入しても、栄養を与えない、という戦略をとっているという事。

そうすると、砂糖の酵母発酵液(乳酸菌や酵母の細胞壁がたくさん入っているであろう?)を散布すると病気が減ることや、堆肥の仕込み初期のころに出る汁(きっと糸状菌の細胞壁や特異たんぱく質がたくさん入っているであろう?)を植物にかけると病気が減る、というのは、なるほどこういうメカニズムがあるかもしれない、という事ですね。

さらに面白いのは、その免疫状態になったときに、もしかすると、農産物の甘味度が上がっているかもしれない、という事ですね。
だって、ショ糖よりも、果糖の方が2倍も甘いらしいので、ショ糖が分解された果糖が、どんどん細胞内に取り込まれると、それだけ果汁(液胞)の甘みは強くなるという事。
甘みの低いブドウ糖は呼吸によって消費されるけど、甘みの強い果糖は、液胞中に蓄積されますから、その免疫状態に入っていると、理論上はどんどん果糖が蓄積していくのでは?

まあ、これはあくまでも想像のお話ですけどね。とりあえず、面白い論文だと思ったので、皆さんにも、シェアしました。