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納豆菌と糸状菌が拮抗するというのは本当か

納豆菌と糸状菌の面白い関係

面白い研究ですね、これ。

細菌は菌糸の「高速道路」を移動し「通行料」を払う 〜細菌と糸状菌の知られざる共生関係を発見〜
https://research-er.jp/articles/view/92339

細菌とカビの密接な協力関係。ミクロワールドは不思議がいっぱいです。納豆菌で有名なバチルス・サブチリスという枯草菌(バチルス菌)土や植物にたくさんくっついている細菌と、糸状菌(いわゆるカビ)が、敵対ではなく、実はしっかり協力関係があったということが分かった、というお話です。

要約すれば、納豆菌はカビよりもはるかに小さく、移動性の悪い細菌ですが、実はカビの菌糸に乗っかって、カビの菌糸とともに拡散しているということ。そして、納豆菌は、より拡散できる範囲を広げるために、カビに栄養を供給し、菌糸の生長を助けていた、ということが分かったという事なのです。
これは、とても興味深く、そしてこれまでの微生物に関する説明を、考え直すきっかけになるかもしれません。

納豆菌によって糸状菌病害が減る、という理屈に疑問が出てくる

つまり、『納豆菌をやると病原糸状菌と拮抗して』病気が減る、と言われていた理屈が、自然界、土壌では少し違うのではないか、という事なのですね。

私は、土壌微生物は、微生物同士の共生関係も、そして拮抗・敵対関係も当然ながらあると思います。それが自然の摂理であると思います。当然と言えば当然のことなのですが、これが急に無視されて、「ある種」の微生物が一番優秀なのだと解釈され、説明されることがあります。こういう説明には、ちょっと踏みとどまってほしいと思うのです。

まったくの余談ですが、以前、ある中学校の先生から教えてもらったことが、『あー、なるほどな』と思うことがありました。
その先生がおっしゃるには、『成績が上がるクラス』には共通する特徴があるといいます。
なんでしょう。

『成績が上がるクラス』に共通する特徴、それは『男女の仲が良い』ということでした。

中学生くらいのお年頃になると、男女の仲が悪くなることありますよね。思春期で、異性を意識することが高まり、かといってうまく表現できないからです。
でも、お互いの違いを認めて協力し合える関係ができれば、自然とモチベーションも高まり、パフォーマンスも上がる。これが最強ということでしょう。

微生物の世界もそれと同じなんだな、と思います。いろいろな多種多様で量的に豊富な微生物が、調和が取れて協力して有機物を分解し、植物を育てて、そして自分たちの繁殖に繋げていく土壌。これが、理想なんじゃないでしょうか。

ぼかし肥料の意義

だから、昔の人は『ぼかし』というものを発明したのかもしれません。ぼかしというのは、沢山の種類の原料が発酵して、原型が崩れて、何がなんだか分からなくなった状態。だから、ぼかしっていうんだよ、と私が農業に関わり始めた頃に、人から教えられました。
なるほど〜硬いものや柔らかいものや、いろいろな種類のものが入ると、それだけ沢山の微生物種が育ち、バランスが取れてくる。ということなんですね。先人の知恵は素晴らしいと思います。

サンビオティック資材の開発思想もそういう部分に根底があり、何かの菌で何かの菌をころす、みたいなのはちょっと違うかな、とも思っています。実際にはそういう側面もあるんだと思いますが、やはり大事なのは全体の多様性やバランスでしょう。

ですから、サンビオティック資材の微生物資材「菌力アップ」には、なんと250種を超える微生物を含め、共生バランスを取ってあるのです。微生物は、このような発想で考える必要があると、思っています。ですから、土壌団粒化は、◯◯菌が大事、みたいなことも時より見かけますが、実際の土の中は、非常に多くの糸状菌と細菌たちの連携作業でそれが進んでいるんでしょう。多種多様な微生物を、バランスよく土に増やすことが大切という事です。

手づくりぼかしでも良いですし、菌力アップでも良いですが、土の微生物叢を豊かにするために、やはり『多種多様』というのは、キーワードのように思います。