葉のワックス層を考察する
ワックス層について気になります
先日、絶好調だというのでミニトマトの圃場にお伺いしました。そこでまず、目についたのは、この葉のワックス層です。
ワックス層というのは、皆さんもご存じの通り、葉のツヤツヤの部分ですね。日照量が落ちている時期なのに、なかなか良い感じです。病気が出ないので、農薬はかなり減ったと喜んでおられました。
すこし説明すると、葉の表皮には、クチクラ層という多糖類(ヘミセルロースやペクチン)とワックスの混合体の層があります。そして、その外側(表面)には、ワックスのみの層があります。これがワックス層です。ツヤツヤ、テカテカの部分ですね。
ワックスというのは、いわゆる油(油脂)です。これがあることで、葉が水に濡れにくくなり病原菌を寄せ付けない効果があります。また、ワックス層が水の蒸発を防ぎ、しおれを防止してくれています。だから、熱い地域の森林を見ますと、葉がテカテカの照葉樹林というのが広がっています。これは雨が多く、そして乾燥しやすい気候への適応なんですね。それ以外にも、ワックス層が紫外線や活性酸素、その他のいろいろな環境ストレスから身を守ってくれるクッションの役割があるんですね。
ですから、葉がツヤツヤと光っているときは、いかにも植物が健康に育っているという事の証明です。
ちなみに、ワックス(油)の原料は、「糖」です。光合成産物である「糖」の結晶が、油なんですね。ですから、ワックス層発達のために重要なことは、いかに光合成を促進し、そしてその「糖」の転流が合成を促すかという事になります。
ワックス層発達のためのポイント
主なポイントを考えてみたいと思います。
- 光合成の環境を整えること
光量、気温、水、CO2濃度
→光合成の条件は、光、温度、水、CO2(二酸化炭素)ですね。光量は、あまり強すぎてもダメいけません。夏の光線が強い時は、寒冷紗などで調整してあげることが大切です。水については、土壌水分だけではなく、空気中の湿度も関係しているので、ご確認ください。ハウス栽培の場合は、相対湿度と言われる湿度を調整してあげると、光合成の効率低下を防ぐことができます。 - 糖の蓄積と油脂合成を助ける栄養素の供給
リン酸、マグネシウム、鉄、マンガンなどの供給
→葉緑素が作られるためには、これらの栄養素が過不足なく供給されることが大切です。コーソゴールドやマジ鉄にこれらの栄養素が含まれています。 - 窒素過剰でないこと
窒素供給過剰でないこと
→窒素については、植物の栄養生長と生殖生長を決める一番の因子です。多すぎると、栄養生長に傾き、糖の蓄積が進みません。より理論的に説明すると、窒素は、糖と結合することによってアミノ酸になり、アミノ酸が結合してたんぱく質になります。
窒素が多いほど、たんぱく質を作ろうとするので、糖が消費されてしまい、ワックス層を作るための糖が不足するというわけです。窒素肥料を過剰に施用しないことや、アミノ酸態窒素での窒素施肥をすると、糖の不足が緩和します。 - カルシウムやカリ等が十分で植物pHがアルカリ側であること(生殖生長型)
→カルシウムやカリは、糖を転流するために働いています。カルシウムが効くと、急にワックス層が発達することがありますが、このような働きがあるためです。またカルシウムやカリは、アルカリ物質であり、植物の生殖生長を促進する働きがあります。つまり、糖の蓄積や転流を促進するという事です。本気Ca(マジカル)などの有機酸カルシウムを施用するとよいです。 - 糖類や植物ホルモン様物質を施用する
→3で説明したように、糖の不足がワックス層を貧弱にします。光合成が低下した時などは、特に分かりやすく、葉のツヤがなくなります。しかし、逆に糖類を植物に供給することで、それが解消されることがあります。酢酸や純正木酢液は、酢酸成分を含んでおり、植物に吸収され、酢酸が糖に変化することができます。また「海王(うみおう)」にも、多糖類が豊富で、これが植物に吸収され糖の不足を補うことができます。海王の植物ホルモン様物質も生殖生長を促し、糖の蓄積を促します。
以上のようにまとめられると思います。私の経験上は、発酵リン酸「鈴成」とコーソゴールドで、リン酸とカルシウムをしっかり効かせていくと、厳冬期でも写真よりもっとワックスが光ってきます。
病気に強い栽培を目指す方は、再度ハウスの環境や施肥を点検してみてはいかがでしょうか?