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病害虫の発生条件を知る 3大要因(主因、誘因、素因)

病害虫発生の3大要因とはなにか?

おはようございます。長崎は「また」今日も雨です。(^^;)

皆さんは、この図を見たことがありますか?
そうです、植物病害虫の3大要因の図です。

植物に病気や、害虫が発生するとき、どのような条件があるのか分解して考えたとき、3つの要素、つまり3大要因がありますね。とても分かりやすく、そして確かにそうだと思う図ですので、ぜひ知らない方は見てほしいと思います。

少しだけ、この図について説明しますと、病害虫が増えようとしているとき、そこに主因、素因、誘因という3つの要素が、重なって増殖する条件を満たしているいるとき、病害虫が発生しますよ、という意味です。

「主因」と言うのは、つまりその病原菌や害虫のことです。まず、私たちがいつも敵視している病原菌やウイルスというのは、「主因」という要因になります。つまり主な原因ですね。そもそも、主因が無ければ、病気が発生しないというのは、だれもが分かると思います。

ただし、主因である、病原菌が植物体に取り付いて、侵入して、病気を犯すには、あと2つの要因が重ならないと、発病しません。

私たちは、よく病害虫を予防するとき、または発生したものを取り除こうとするとき、この主因にばかり目が行きがちですね。主因を取り除く、防除することはもちろん方法の一つです。しかし、病害虫の3大要因を知れば、3つの視点から病害虫の防除ができるようになります。残りの二つを知ることで、そのリスクを大きく低下させることができるようになります。

「素因」と言うのは、その植物が、その病害虫に罹りやすいものなのか、それとも罹りにくいものなのか、ということです。その病原菌やウイルスがターゲットとしている作物(植物)の強さ、性質のことですね。抵抗性品種の導入などは、この「素因」にアプローチする代表的な病害虫対策です。

そして最後の「誘因」と言うのは、その病害虫が増えやすい条件であるか、ということです。たとえば、湿度が高い、気温が高い、日照が足りない、葉が薄く弱い、などが「誘因」の例です。環境、と言いかえてもいいと思います。

ひっかけ問題?いや、本気でそう考えている方が多いのです。

以前、講習会をしていた時、県の農業普及員の方が質問されました。
「いま、〇〇(作物名)の栽培で、〇〇病が非常に問題になっています。〇〇菌は、土壌消毒でもなかなか殺菌できないようなのですが、菌力アップをやると病原菌が死ぬのですか?」
講習中に、大変素晴らしい、よい質問をいただきました。JAの部会の方たちと一緒に、県の普及所の方も同席されていて、素朴なご質問をぶつけてくださいました。

最初、「お、ひっかけ問題かな?」と思いましたが、かなり若手の農業普及員の方でしたので、恐らく本気で、この素朴なご質問をされたのかな、と思い、お話したことが、この病害虫の3大要因のことです。

つまり、
「植物の病気、たとえば青枯病や萎黄病、炭疽病や立枯病、つる割れ病、根腐れ病など、非常に多種多様な病害がありますが、どの病気にも、共通するメカニズムがあります。病原菌は、この図でいう、いわゆる『主因』ですが、病原菌がいるだけで、必ず病気になるわけではありません。どの病気も、実は、『素因』と『誘因』という、3つの条件が重なったときに、発病し蔓延しやすくなります。ですから、どれか1つでも、条件が整わないようにできれば、病気の蔓延は防げるという考え方が重要です。」
とお話ししました。

意外にも、『「主因」である病害虫がそこにいるだけで、必ずその病害虫に侵される』と考えている人が非常に多いのです。

これは例えて言えば、インフルエンザのウイルスを吸い込んだら、必ずインフルエンザになると考えているのと同じです。病原菌や病原ウイルスが、ものすごく強力で、普通の生き物では歯が立たない最強の生物と考えているのかもしれません。
しかし、そんなことはないのです。最強の微生物や、ウイルスなどというものはどこにもいません。みんな、自然の生態系の中で、弱肉強食の世界にいて、食べたり、食べられたり、共生したり、競合したりしているのです。
もう一つの例として、たとえば、食あたり、食中毒は、分かりやすいかもしれません。

海の牡蠣(かき)を食べて、おなかを壊しやすい人と、何ともない、と言う人がいます。まったく同じ鮮度の牡蠣を、同じように加熱して食べているのに、ある人は、たった1個食べただけでおなかを壊し、ある人は何十個たべてもおなかを壊さないのでしょうか。

また、O-157に汚染された食べ物もそうです。0-157に汚染されたポテトサラダを食べて、おなかを壊したり、または不幸にも死亡する方は、幼児や高齢者です。健康な人は、おなかすら壊しません。

主因だけで、病害虫が発生し、まん延し、ひどくなるという訳ではないことが分かると思います。

3要素のそれぞれに、どうアプローチするか考えよう

先述のように、病気は、病原菌やウイルスがそこにいたら、必ず発病するというものではありません。それが発病するには、3つの要因が重なる条件が必要となります。
この3つの要因のそれぞれにアプローチすることで、病害虫の発生リスク、まん延リスクは格段に低下することになります。

「誘因」というのは、その病原菌やウイルスにとって、好適な環境であることですね。たとえば、高温多湿とか、逆に乾燥気味とか。または、土壌のpHが酸性気味とか、アルカリ気味とか。風があるとか、日照時間がどうとか。そのような環境は、一般的には、なかなかコントロールしにくいことが多いですが、土壌分析をしてしっかりとした土づくりを行う事や、畝を高く上げたり、暗渠排水を整備したり、または環境制御を取り入れたりすることは、非常に効果的な方法です。

もう一つの要因である「素因」も、コントロールできることが多くあります。一般的には、「素因」へのアプローチは、「抵抗性品種」の導入という事になると思いますが、それ以外にも植物そのものを強くする方法というのは、たくさんあります

たとえば、日照不足で光合成ができない場合、セルロースやリグニンやワックス層が不足して、細胞壁が弱くなったり、防御のための繊維が不足し、病原菌に侵入されやすい体質となります。

また、窒素過多でも同様のことが起きます。窒素の吸収量に対して、光合成が追いつかず、糖に対しての窒素量が多すぎるとき、いわゆる軟弱徒長という事になります。また窒素の吸収量が多すぎて、カルシウムやホウ素、ミネラルなど、細胞を強くする成分の吸収が追いつかない場合、細胞や繊維質は軟弱となり、病原菌が侵入しやすくなりますね。

このような「素因」へのアプローチとして、たとえば発根促進をする菌力アップの重要性や、マジカルやマジ鉄、本格にがりによってミネラルを供給する事、純正木酢液やイーオスによって炭水化物を供給することなどが、大きな意味を持ってくるという訳ですね。

「主因」(病原菌)を取り除くのは、農薬という事になります。もっとも直接的で効果のある方法ですが、これからの農業では、環境保全や環境負荷ということを考え、「素因」をいかにコントロールしていくか、という考え方にシフトしていかなければなりませんね。

多くの場合、実は「素因」の改善は、収量や品質の向上にも結び付くため、一石三鳥になることがありますね。サンビオティックでは、農薬を扱っていません。しかし基本的には、この「素因」や「誘因」を改善するための肥料や資材を開発しています。単に栄養を補給しようとする肥料会社とは、その点で発想が違います。

少し余談ですが、新型コロナ対策も、「素因」の改善が重要ですね。つまり、ウイルスに被爆しても、発病しない体を作ることです。基礎疾患のあるかたや、高齢者は、それでも戦えない場合があるので要注意ですが、健康な方は、まずご自分の免疫力を上げて、予防していきたいですね!