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硝酸トーク第10回 『硝酸の人体への害と益』

植物の中で硝酸が多い部位は?

硝酸イオンは、根から吸収されると、根で同化され、アミノ酸やたんぱく質になるものと、そのまま「導管」へ運ばれ、葉に送られるものがあります。「導管」は、蒸散の多い葉へと水を送る水道管ですから、主に硝酸の行き先は、活発に光合成をしている「葉」になります。老化した葉や、生長点へはあまり運ばれません。

一方、光合成産物やアミノ酸などの栄養を運ぶ「師管」(本来は「篩管」が正しい表記です。)は、光合成の中心である「葉」から、生長点や果実や根へと、栄養を運ぶための管です。そこには、硝酸イオンはほとんど含まれません。光合成器官以外では、硝酸は役に立たないものだからです。

そのため、植物中で硝酸イオンが多いのは、葉や、茎、そして根です。野菜でいえば、ホウレンソウやチンゲンサイなどの葉物野菜や、大根やゴボウなどの根菜類には多く含まれています。一方、光合成産物の集積場である、トマトやキュウリなどの果菜類や、みかんやリンゴなどの果物、ブロッコリーなどの花蕾、アスパラガスなどの生長点、またコメ、麦などの穀物には意外に硝酸は少ないのです。

「硝酸は、体に悪い」は、もはや常識?

ところで、硝酸を食べると体に悪い、有毒だということは、農業関係の多くの皆さんがよくご存じだと思います。

硝酸が体内で変化してできる亜硝酸は、「メトヘモグロビン血症」という重篤な症状を引き起こし、全身が貧血になり真っ青になる「ブルーベビー病」の原因として、とても有名です。

これは、青草を食べる牛などでも問題になることがあり、肥料を多く与えた牧草を食べると、硝酸中毒という硝酸過剰の病気になるリスクがあるのです。そのため、EUでは過剰施肥や地下水汚染を防ぐために、施肥基準や、飲料水や野菜への厳しい硝酸残留基準などが設定されています。(牛などの反芻動物の胃袋では、一般の動物と比べ、硝酸から亜硝酸を生成する微生物の活性が高いため、硝酸中毒になりやすいのです。)

また亜硝酸は、ニトロソアミンという発がん性物質に変わり、がんを発生させるので危険である。と言われることもあります。

「怖いですねえ、硝酸。。。」と私も思っていました。

ところが、ところが、です。実は、最近になって、驚天動地の新事実が、次々に明らかになってきました

それは、「硝酸は、体にとてもよい!」という事です。

硝酸が体にいい!?驚くべき「硝酸有益説」

この驚くべき「硝酸有用説」の事の始まりは、1998年ノーベル生理学・医学賞を受賞した「一酸化窒素」の研究です。

人の体内で、一酸化窒素が、血管の弛緩や、神経伝達などの様々な生理反応の伝達作用があることが発見されたんですね。つまり、体内で一酸化窒素が増えると、血圧が下がり、血流が増える、という発見です。

このブログを熱心に読んでいらっしゃる?中高年の男性のみなさんならご存じの、「バイアグラ」や発毛剤の「リアップ」は、この原理が応用されているんですね!

自動車の排気ガスやたばこの煙に含まれ、これまで有害だとされていた一酸化窒素が、人体に非常に重要だ(有益だ)という事が証明されたのですね。

そしてさらに面白いのは、この一酸化窒素が、食品中の硝酸から生成されているということが分かったことです。

もう、これは興奮の新事実です!!

野菜に含まれている硝酸は、唾液中の微生物により亜硝酸に変化し、亜硝酸は、強酸性の胃液で一酸化窒素へと変化することが確認されました。また、体内の亜硝酸は、酵素によっても一酸化窒素へ変化することが分かりました。

さらには、アミノ酸のLシトルリンは、Lアルギニンに変換され、そこから酵素により一酸化窒素に変わる経路もあります。

体内では、一酸化窒素は数秒で壊れてしまうものです。しかし、これが血液という最も重要なものの調節に、なくてはならない働きをしていたというのは、とてもすごいことですね。

だから、野菜(硝酸)を喜んで食べよ!

研究では、野菜に含まれる硝酸は、食事のあと数分後には亜硝酸に変換され、数十分〜数時間の間、血中の一酸化窒素の濃度を高めてくれるそうです。

一酸化窒素が増えると、血流が増え、ミトコンドリアの働きが高まるため、体の中からエネルギーが湧き起ります。

元気が出るといわれる、Lシトルリン配合のサプリメントも、よく見かけるようになりました。

スポーツの前に、硝酸が多いビートジュースを飲むと、耐久力が増し、普段より良い成績が上げられるようになります。また日常的に、硝酸の多い野菜を食べることで、高血圧や脳卒中、心臓血管病の予防、がんの発生抑制、胃潰瘍の治癒、感染症の予防、認知症の改善、緑内障のリスク低下など、本当に様々な、素晴らしいメリットがあるとされています。

これまで、野菜にふくまれる「硝酸」は、有害であり、危険であるとさえ言われていたのですが、真実は全く「逆」だったのです。

最新の知見に基づく正しい情報には、こう書いてあります。「硝酸が含まれている野菜は、積極的に摂取しましょう!

やはり野菜は、私たちにとってとても「有益」なものだったんですね。

皆さん、野菜はどんどん食べましょうね!農作業の前には、ぜひ青汁も飲みましょう!きっと疲れが吹き飛び、たくさん働けますよ!

そして、健康に良い野菜をたくさん作って、全国の消費者の皆さんにも、健康のおすそ分けをしましょうね!

だいぶ書きました。これで、硝酸についての連載を終わりたいと思います。

皆様の硝酸に対する理解の一助になれば、嬉しく思います。