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硝酸トーク第3回 『美味しい野菜、果物のつくり方(後編)』

適度な食事(施肥)が健康の元

収量を伸ばし、そして美味しい作物を作るポイントは何でしょうか?収量を伸ばすためには、窒素が必要なことは疑いがありません。しかし、窒素をやると、糖度が下がるというわけですから、なかなか難しいように感じます。

しかし、難しく考えることはありません。実は、大切なことは、窒素で糖度が下がるという事は、単なる「食べすぎ」だったということなんですね。人も、「食べすぎ」が良くないわけで、昔から「腹八分が健康の元」と言います。

植物も、全く同じなんですね。

硝酸は、ある意味、生長のシグナル(信号)の様な働きをしています。正常な硝酸量よりも多くの硝酸を持っていると、「もっと太れ」という信号を全身に発してしまうんですね。

生きていくうえで必要だけど、貯めすぎは良くない、ということです。

ですから、栽培管理上で大切なことは、日照量(光合成量)に見合った、適量の窒素(硝酸)を与えていくという事です。葉の面積が増えれば、光合成も活発になり、糖類をたくさん作ることができます。そうなると、収量も、そして糖度などの美味しさをアップすることもできるのです。

光合成量に不釣り合いな、過度な硝酸を吸収してしまうと、植物には「成長信号」が走り、急に糖度を低下してしまう傾向にあるんですね。

窒素施肥によって糖度やビタミンCが低下する??

ここで、面白い話があります。

植物の硝酸含有量を増やすと、作物の糖度が下がることが知られていますが、実はそれと連動するように「ビタミンC」含有量も減少することが分かっています。

このことに興味を持った複数の研究者が、ある実験をしました。それは、窒素量を増減すると、本当にビタミンCの含有量が変わるのか、という実験です。作物はキャベツやスイートコーン、エンドウ豆など、また窒素形態は、化学肥料や有機肥料、または無施肥など。

すると、面白いことが分かったのです。実は、「ある条件」では、窒素量を増減したり、肥料の種類を変えても、ビタミンC含有量が変わらないことがあるということです。

その条件とは、相互遮蔽がないことです。つまり、「葉が影になることが無ければ」という条件だったのです。

意味が分かりましたね!

そうです。ビタミンCは、窒素量に反比例していたわけではなく、光合成量に比例していたんです。ただ、窒素量を増やすと植物はどんどん成長しますから、一般的に下葉が影になったり、隣の株の影となって、日当たりが悪くなります。

そうなると、光合成が低下し、ビタミンC含有量が低下していた、という事なんですね。

実に、面白いことだと思います。ビタミンCも、またブドウ糖も、光の強さ(光合成)に比例して生成されていますから、考えてみると当たり前のことだったんですね。

結論としては、作物の甘さやビタミンCなどの品質を上げるためには、まず日当たりが大切。ということです。また、少ない光でも光合成がたくさんできることや、エネルギー効率や酵素の働きなどの方が大切だという事です。(そういう意味で、窒素以外の栄養や有機質の意義があります。)

適度な葉面積指数:LAIを目指そう!

植物の葉が、密集しすぎることがなく、しかも葉の面積が多い(適度な葉面積指数:LAI)という条件を目指したいものです。また、1枚の葉が厚く、そしてワックス層が発達すると、光合成の効率が高まります。ハウスであれば、風通しや湿度も重要です。

Leaf Area Index(LAI)とは
葉の多少を示す指数。ある土地の上部にある植物のすべての葉面積を積算した値を土地面積あたりに換算した値。例えばLAI=3は、1平方メートルの地面の上にある葉の面積の合計が3平方メートルあることを意味する。
トマト葉面積指数(LAI)の簡易推定法(宮城県農業・園芸総合研究所野菜部)より抜粋https://www.pref.miyagi.jp/documents/20656/841794.pdf

そして、果菜類では着果量が増えると、光合成の効率が高まることが知られています。同じ葉の面積でも、光合成の効率を高めていくことが、非常に重要です。

また、窒素以外の土づくりで『働く葉』を作っていくことが大切ですね。窒素肥料で、「適度な葉の量(面積)をつくり、」

リン酸やマグネシウムやその他の有機物やミネラルで、「厚く、輝く、働きものの葉を目指す。

これが、高品質、そして高収量の秘訣のように思います。

※1 一般に窒素肥料を増やすと、増える栄養も当然あります。葉緑体のクロロフィルはもちろん、たんぱく質、βカロテンやビタミンB1、フラボノイド、ポリフェノールなどは、窒素量に相関して増加します。窒素肥料を減らしすぎると、多くの栄養成分が低下し、また抵抗力も低下しますから、減らしすぎるのも良くありませんね。