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硝酸トーク第8回 『窒素過剰と地球環境汚染〜亜酸化窒素N2Oとは〜』

窒素の種類と無機化

有機肥料を使用する場合に意識したいのは、無機化するタイミングについてです。もちろん、無機化は徐々に進むのですが、それが速い有機肥料や、遅い有機肥料があります。

植物が徒長し、軟弱となるのは、光合成の量に見合わないほどの過剰な窒素が吸収されたときです。理想的な施肥管理の考え方は、植物の葉面積や日射量などの光合成量に見合った窒素量を吸収してもらう事です。

ようやく離乳食を食べ始めた赤ちゃんに、どんぶりにお替りして食事を食べさせる親はいないでしょう。それと同じことです。消化するスピード、能力に合わせて、与えることが、強い体を作るためには大切なことですよね。

そういう意味で、有機肥料は、一般的な化成肥料よりも有利な肥料になる可能性が高いのです。有機肥料が徐々に無機化してアンモニアや硝酸に変化していくため、植物の生育スピードに合わせた管理が自然とできてしまうからです。

炭素窒素比(C/N比)とは

有機物や、畑に投入する資材の無機化のスピードや量を決めているのは、炭素と窒素のバランスです。これを専門用語で、炭素窒素比、通称C/N比(シーエヌヒ)といいます。

たとえば、炭素が窒素の2倍の時、C/N比=2です。炭素が窒素の10倍の時は、C/N=10です。C/N比というのは、炭素が窒素の何倍かを表しています

(概念的にはC/N比を理解していても、案外にその計算は出来ないものですね。計算方法まで確認したい方は、下の参照をご確認くださいね。)

すこし難しい話になりますが、畑に投入する有機肥料や堆肥などの投入資材のトータルのC/N比を15程度に設計しておくと、その無機化のスピードはちょうど植物の生育に合いやすいと言われています。(ただし、化学肥料の効き方に慣れている方には、物足りない感じがあると思います。また、無機化は微生物の活動に左右されるので、微生物の活動が弱い冬作はもっと低い設定の方が良いです。)

有機物の定義である「炭素」が含まれていることが、微生物を活性化し、肥料成分などの栄養の循環・サイクルを回してくれるんですね。栄養が絶えず根の周りで循環していることが、植物へ必要な養分を供給し、成育をよくしてくれるというわけです。炭素というのは、とても面白い「共生の仕掛け」のようなものです。

(参考)C/N比の計算方法の説明資料

畑に投入する資材のC/N比の計算方法をおさらいしておきましょう!
※C/N比とは、「炭素と窒素の比率」のことを言います。この比率は、土壌や肥料の中で、植物がどのように成長するかを理解するのに役立ちます。窒素が多いと植物はよく育ちますが、炭素が多すぎると分解が遅れるため、バランスが重要です。

計算の例:例として、硫安(化学肥料)とバーク堆肥を畑に施用した場合のC/N比の計算方法を見てみましょう。

施用量と肥料の内容:
硫安:40kg(窒素21%含有、炭素は含まないと見なす)
堆肥:1000kg(水分率25%、窒素現物当たり1%、C/N=20)

①まずは、全体の窒素量を求めます。
硫安:40kg×21%=8.4kg
堆肥:1000kg×1%=10kg

②次に、全体の炭素量を求めます。
硫安:0kg
堆肥:(窒素量)10kg×(C/N)20=200kg

③C/N比の計算
全炭素量÷全窒素量にて求めます。

200kg ÷(8.4+10)=C/N 10.8

(まとめ)この例では、堆肥と硫安を混ぜた場合、C/N比が約10.8となります。この比率は植物の成長に適しているかどうかを判断するのに役立ちます。C/N比が低いと窒素が多く、植物はより速く成長する可能性があります。高いとその逆です。まずは、前作で投入した資材のトータルC/N比を知ることから始めましょう。

窒素肥料と温室効果ガスと地球環境

さらにもう一歩踏み込んで、有機肥料の魅力をお話ししたいと思います。それは、地球環境への影響です。

よくヨーロッパなどの事例を取り上げて、堆肥などを野積みすると、硝酸態窒素が地下に流亡し、地下水を汚染するという話がありました。皆さんも聞いたことがあると思います。ですから、今は日本でも、畜産農家が糞尿堆肥を野外に野積みすることは禁止されていますね。

でも、農業における重要な環境汚染はそれだけではなかったのです。実は、有機肥料や化学肥料由来のアンモニアが硝酸に変わる過程では、その副産物として「亜酸化窒素(N2O)」という物質が、大気中に放出されてしまいます。

さらには、窒素過剰の状態で、窒素が微生物に分解されて空中に放出されてしまう「脱窒(だっちつ)」という反応でも、亜酸化窒素(N2O)が生成されてしまいます。

これがいま、地球温暖化の重大な要因の一つとして指摘されているんですね。亜酸化窒素(N2O)は、二酸化炭素の300倍もの作用を持つ温室効果ガスと考えられており、しかも紫外線と反応することでオゾン層を壊す原因物質でもあるのです。

亜酸化窒素(N2O)、非常に破壊的な物質です。その発生源の20%程度は、農地から発生しているそうですから、重大です。

私たち農家が、より地球環境にやさしい農業を考える場合には、これは非常に重要な知識です。

過剰な窒素施肥が、植物の生育を弱くし、作物をまずくするだけでなく、地球環境をも壊しているという事に気づく必要がありますね。

そういう観点からすると、吸収量に見合った量で徐々に無機化してくれるような有機肥料を使う事や、または被覆肥料のように徐々に溶け出してくれる化成肥料の使用は、望ましいものであると思います。(化成肥料を作る過程でも亜酸化窒素が放出されていると言われています。)

有機肥料の無機化しやすさの程度と適切な使い方

ちなみに、有機肥料も種類によって、無機化のスピードと持続性が違うので注意が必要です。

即効・短期グループ:魚カス、肉カス、肉骨粉、皮革粉

即効・長期グループ:大豆油カス、乾燥酵母、血粉、フェザーミール

遅効・長期グループ:米ぬか、菜種油カス、カニ殻、蒸製骨粉

そうはいっても、有機肥料は、いつ効くかが難しい。効かせたいときに効かない。実際の利用者の感覚はそれに近いと思います。無機化のタイミングが、微生物次第なため、逆に言うと「効きにくい」という感覚になってしまうんですね。

そのため、有機栽培では、ついつい過剰な肥料を施用してしまう方もいらっしゃるようです。それでは、本末転倒というものですね。

有機肥料を施用する場合も、きちんとした窒素量を計算し、無機化のタイミングを計算して施用しなければ、環境にやさしい農業もできず、そしてよい作物も作れませんよ、ということです。有機肥料も堆肥も、やりすぎは禁物です。

ちなみに、サンビオティックの「有機百倍」や「マッスルモンスター」は、これらのバランスを考えて設計されています。化学肥料のような感覚で、使いやすく、効果がある。そういう肥料を作るために、ち密な計算の元、設計した肥料になっています。