公式ブログ

ミネラル第2回 植物とミネラルの過剰障害と欠乏症

ミネラルの過剰症と欠乏症が出る理由

森の植物をご覧ください。そこには、美しく生き生きとした葉が輝いていて、生長点の壊死(えし)や、下葉の黄化や葉脈が浮いているようなことはほとんど見えません。森というのは、有機物(動植物の死骸)→微生物→植物の物質循環が回っていて、バランスの良いミネラルが常に供給されているからです。

もう一つ、森の物質循環を回しているのは、意外なところでは「雨」です。驚くことに、雨は、植物の持っている糖類や窒素(たんぱく質)やリン酸、そして多種多様なミネラルを、葉っぱから奪い取っていくのです。雨によって葉の栄養が溶脱するこの現象は、リーチングといいますが、実は物質循環の重要な役目を持っています。雨が降るたびに、森の植物は、自身が持っているミネラルを雨に溶かして、地面に天然の「ミネラル液肥」を落としているのです。

こうして、雨が降るたびにミネラルが循環しているから、森の植物は、ミネラル欠乏とは無縁の豊かな生物相を育んでいるのです。

しかし、畑に目を移してみると、意外にもミネラルの過剰障害や欠乏症が多いのはなぜでしょうか。それは、畑という独特の環境に原因があります。多くの畑、農場では、単一作物を連作しています。そこには、毎年同じような堆肥や肥料を施用し、生育スピードを上げ、自然界ではありえないような最大限の収量を上げています。

ミネラルの循環が少なく、しかも多くが収奪(収穫)されて圃場の外に持ち出されていれば、欠乏症が出るのは当然でしょう。さらには、石灰資材などでpHを人為的に上げると、ミネラルはさらに吸収が悪くなります。(低pHでも吸収が悪くなります。)

また、微生物が少なく、固く締まった土では、根は酸欠となり活性を失い、栄養を能動的に吸収することができなくなります。選択的に、不足しているミネラルだけを吸収することが難しくなるのです。そうなると、濃い肥料分や偏ったミネラルをありのままに吸収し、過剰障害を起こしたり、または不足して欠乏症を発症したりします。

主なミネラルの過剰障害と欠乏症

主な、ミネラルの過剰障害と欠乏症は、下の通りです。

基本的に欠乏症は、水に溶けやすく移動性の良いミネラル(マグネシウムなど)は、古い葉に症状が現れやすく、逆に移動性の悪いミネラル(ホウ素、鉄、マンガン、亜鉛、銅)などは、生長点や新葉に症状が現れやすくなります。

(鉄)

欠乏症:新葉から黄化(クロロシス)を生じる。葉脈の緑を残して、葉脈間が均一に黄や白色になる。褐色に壊死することはない。
過剰症:マンガンやリン酸欠乏が出やすい。

(マンガン)

欠乏症:新葉が薄い緑になる(白まではならない)。葉が小型なる。症状は新葉にも古い葉にも出やすい。 葉の先端や縁に褐色の斑点ができる。古葉に出やすい。
過剰症:鉄欠乏が出やすい。

(亜鉛)

欠乏症:新葉から緑が薄くなり、葉脈間が黄色くなり黄斑や縞状になる。進行すると中葉、全葉に及ぶ。葉が小型になり叢生状となる。褐色の小斑点ができることもある。
過剰症:褐色の斑点ができる。

(ホウ素)

欠乏症:生長点の生長が停止する。新葉はよじれ、黄化し、芯どまりする。葉柄や果実がコルク化した組織ができ、茎や根の中心から黒くなる。
過剰症:葉の縁から黄化、褐変する。

(マグネシウム)

欠乏症:古葉や果実周辺の葉の葉脈間が黄化し、葉脈が浮き出るように濃くなる。進行すると黄化部が褐色に壊死し、落葉する。
過剰症:カルシウム欠乏や加里欠乏が出やすい。

(銅)

欠乏症:新葉の先端から黄白化し、萎れる。
過剰症:根の伸長が止まる。

(モリブデン)

欠乏症:古葉から、葉がよじれ内側に巻き込む。葉脈間に黄斑が出る。

いかがですか?思い当たる症状はないでしょうか?

重要なことは、植物にとって必須微量要素のどれか一つが欠乏するだけで、重大な生理障害が起きるということです。また欠乏状態でなくても、どれか一つが不足しているだけで、代謝レベルは格段に低下し、本来の能力を発揮できなくなります。不足したミネラルが、生長のボトルネックとなるのです。
ミネラルは、バランスが重要ということです。二価鉄だけ、マンガンだけ、など単体でやることも良いですが、様々なミネラルがバランスよく入っている総合微量要素を与えていく意味は、そういうとこにあります。