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ミネラル第4回 植物とミネラルバランス

作物に含まれるミネラルとバランス

作物には、どれくらいのミネラルが含まれ、どのようなバランスが必要でしょうか。まずは、ミネラルの含有量を「日本食品標準成分表」を参考に見てみましょう。

たとえば下の表は、緑の野菜の代表格、ホウレンソウです。

FeMgCaZnCuMn
ホウレンソウ2.069490.70.110.32

※可食部100gあたり含有量(mg)
※Fe(鉄)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Mn(マンガン)

これは、可食部100gあたりです。(根を含みません。)この数字を10,000倍してみると、単位は1000kg中の含有量(g)となります。つまり、出荷量1t当たりの含有量(g)と考えることができます。

たとえば、鉄(Fe)は、出荷量1tあたり20gの鉄(Fe)を含んでいます。これには、根が含まれていませんから、ホウレンソウ全体でいうと、ざっくりその1.5倍して、おおよそ30g程度が含まれていると想像できます。

ホウレンソウの平均収量は、ちょうど1t/10a程度です。つまりホウレンソウを1回作ると、少なくとも30g/10aの鉄が吸収され、畑から収奪されるということです。逆に言うと、1tの収量ごとに、それ以上の可給態の鉄を施用したほうが良い、という事になります。

有機質と微生物の豊富な野菜の、ミネラル含有量

農家にとって興味深いことは、有機質と微生物の多い土壌で育てた野菜は、根の細根が非常に発達するため、ミネラルの吸収力が高まり、鉄やマグネシウムなどの吸収量が増すということです。その量は、一説には化成肥料のみで育てた場合の数倍〜5倍程度になることもあるそうなので、驚きです。化成肥料だけで育てた野菜は、有機肥料や堆肥などを適切に使用した滋味豊かな野菜に比べれば、中身がスカスカってことでしょうか。

確かに、50年前の食品標準成分表を見ると、最近の野菜よりもはるかにミネラル含有量が多いんですね。50年前と言えば、化学肥料がまだ少なかった時代と言えるでしょう。そのころのホウレン草には、現在の5〜6倍の鉄分が含まれていて、ビタミンCなど、それ以外の栄養素も現在よりもはるかに豊富でした。この事実は、一考に値しますね。「そうか!だから昔の人は、血の気が多くて元気なのか!」とか考えたりします。(これは若い人の言い訳ですね。笑)

有機物をたくさんやって、土づくりを懸命に行われている畑ほど、植物は、一般の数倍もの鉄やマグネシウムを吸収し、畑から持ち出している、ということも意識しておかなければなりません。

(実は、後日書きますが、堆肥をやればやるほど、マンガンや亜鉛などのミネラルの吸収は難しくなるという側面もあります。有機栽培が有利、という単純な図式は成り立たず。)

植物の最適なミネラルバランスとは

もう一つの視点は、バランスです。標準成分表の通り、基本的には、植物にはカルシウム(Ca)とマグネシウム(Mg)が多く、次に鉄(Fe)が多く必要です。

データをよく見ると、銅(Cu)は、非常に微量です。なぜ銅が少ないのでしょうか。

それは、銅は、金属の中では最高クラスに結合力が強いという特徴があるからです。銅はプラスイオンのミネラルで、マイナスイオンである酸素やリン酸や窒素などと強力に結合する性質があります。一度結びついてしまうと、なかなか離れません。結合力が強いという事は、簡単に言うと固めてしまうということでもあります。体の中のリン酸や窒素などのマイナスイオンと結びついて、ゼリーのように、または石のように固めてしまうのです。

化学的な視点で例えてみると、「生命」は常に流動する「水溶液」の風船です。水の流れが滞ると、とたんに体の機能に変調をきたし、エネルギーや新しい細胞を作れなくなったり、栄養不足や酸欠や、または酸化で細胞が死んだりします。結合力の強い銅が過剰であれば、水の流れを止め、マグネシウムや鉄の重要な働きを阻害してしまうのです。

ボルドー(銅)で、植物の葉に薬害を起こしたことのある人もいらっしゃることと思います。50年も昔のことですが、銅山の近くで公害が発生し、農作物や人体に被害があったことがあります。銅は、過剰に体内に入ると毒物となるのです。もちろんこれは、銅に限ったことでは無いですね。何事も過ぎたるは及ばざるがごとし、ということです。

つまり、ミネラルの与え方では、バランスがとても重要だということです。結合力の強い亜鉛も、銅と同様に過剰な施用は注意しなければなりません。

逆にいうと、バランスの良いミネラルを摂取することができたら、植物も動物も、そして人間も、生き生きと健康に成長し、能力を最大限に発揮することができるようになります。

これが総合微量要素には、ミネラルバランスを追求した「マジ鉄」をお勧めする理由の一つです。また、サンビオティックの資材では、海藻や黒砂糖、または、にがりなど、天然、自然のミネラルを重視しているのは、こういった微妙なバランスを大切にしているからです。

ミネラルを与えるときは、成分量とそのバランスが大切、ということも覚えておいてくださいね。