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ミネラル第9回 植物と亜鉛

植物と亜鉛

<亜鉛(化学式:Zn)>
マジ鉄の含有量 1,000mg/kg(1,000ppm)

(働き)
・生長ホルモン(オーキシン、ジベレリン)等の生成に関与
・各種酵素の構成金属として呼吸や新陳代謝に関与
・たんぱく質合成、葉緑素の形成、細胞分裂に関与

(欠乏症の要因)
・土壌pHの上昇(アルカリ土壌、pH7.0以上)
・リン酸、鉄、銅の過剰
・土壌中含有量の不足

窒素同化=たんぱく質合成 亜鉛の働き

亜鉛は、微量要素の中では非常に欠乏症状が発生しにくいミネラルです。他の代替ミネラルがあるからだと言われています。しかし、生育が全体に鈍化する「潜在欠乏」は意外にも多く、亜鉛を与えることで生育が良くなる現象があります。

特に、ミカンや梅では、亜鉛の要求量は高いと言われていて、不足すると葉脈や葉縁の緑を強く残して葉脈間が黄化する「トラ斑」や「肋骨症状」と言われる症状が見られます。マメ類でも、そのような事例が見られます。

亜鉛は、近年RNA合成やリボソームの機能に重要なことが分かってきており、アミノ酸をたんぱく質に合成する役割が指摘されています。亜鉛が不足すると、たんぱく質の含有量が低下し、細胞分裂が鈍化し、葉が小さくなったり、大きい葉と小さい葉が共存したりする症状も見られます。

サンビオティックが目指しているのは、高品質・多収穫を実現する栽培技術です。高品質・多収穫を実現するためには、いかにして、より多くの窒素を吸収させ、それをスムーズにたんぱく質に転化(同化)させるか、ということがとても大切となります。これを「高たんぱく栽培理論」といいます。

日々、植物と向き合っている方は、窒素をやれば植物には病気や害虫が増えることを肌身で感じていることでしょう。病害虫を減らそうと思えば、窒素の施用を減らせばいい、というのは簡単な理屈です。

しかし、それでは高品質・多収穫を実現することは難しいでしょう。より多くの窒素を「食わせ」つつ、植物の体内の無機窒素(硝酸態窒素やアンモニア態窒素)を少なくし、そしてたんぱく質を多くすることができれば、高品質・多収穫が実現していくことになります。つまり窒素の同化作用の促進です。この点に、亜鉛の役割は非常に大きいことになります。

窒素消化(窒素同化)が速く、高たんぱく栄養化した植物は、葉が大きく、かつ肉厚でがっしりと立っています。葉には、ツヤ(ワックス層)が美しく、止め葉まで葉の大きさがそろっていることが特徴です。作物である野菜や果物には、重量がありずっしりとして、食べると糖分だけではない、うま味、深みを感じられる美味しいものになります。

高たんぱく栽培理論(高たんぱく栄養化)は、以前より海藻を使った栽培技術で応用されています。サンビオティックにも、『海王』という優れた海藻資材がありますが、海藻には比較的多く亜鉛が含まれている点が、高たんぱく栽培に向いていると思われます。もちろん海藻は、亜鉛だけではなく多くの多糖類やアミノ酸、生長ホルモンなどが含まれていますから、バランスが優れています。マジ鉄と海王を混用してやることで、なお一層、窒素同化が促進され、高たんぱく栽培技術を実現することができます。実際、マジ鉄と海王を混用して葉面散布すると、葉肉に厚みが出てワックス層が発達してきます。

このような理論は、品質を上げるために、「水を切る」「肥料を切る」というこれまでの常識ともいえる栽培技術から、一歩踏み出すための非常に大きなヒントとなります。

「生殖のミネラル」亜鉛を多く含む作物を

亜鉛は、人間にとっては「生殖のミネラル」と言われています。人の体に含まれる亜鉛の90%が、筋肉や骨に含まれています。また、生殖腺には特に高濃度に含まれているといいます。

「精が付く」と言われる自然薯やニンニクに、亜鉛が多いことを考えると、作物の亜鉛含有量は、作物の価値に結びつく部分であると思います。特にこれからの少子化時代には大切なことかもしれません。

亜鉛は、細胞分裂の盛んな生殖細胞や、赤ちゃん~幼児の細胞に大変重要なミネラルです。それは、植物と同じように、人の体でも正常な核酸やたんぱく質を作るのに、大変重要な働きをしているからです。

お母さんの初乳には、生後3ヵ月後の母乳の約8倍もの亜鉛を含んでいるそうです。それだけ、細胞分裂に重要な働きをしていることが実感できます。亜鉛が不足すると、子どもの成長ホルモンの働きや、たんぱく質の合成が低下し、低身長や体重増加不良を起こします。

それだけではありません。亜鉛不足では、大人の健康も大きく損なわれます。味覚障害や免疫力の低下は、亜鉛欠乏の典型的な症状です。味がしない、風邪をひきやすいなどの方は要注意です。また、爪や皮膚の健康にも亜鉛が寄与しており、老人の食欲不振や床擦れ(褥創)、乾燥肌の多くは、亜鉛欠乏であることが多いのです。

また、なんとアトピーと亜鉛欠乏には強い関係があるそうです。近年ではアトピーの子どもが増えていますが、亜鉛や鉄などの微量要素の摂取を意識しておきたいものです。また、アトピーの症状の著しい場合は、専門機関で血液中の亜鉛含有量を検査してみると良いかもしれません。

このように大変重要なミネラルである亜鉛を、作物にどのように吸収してもらうかという事は大変重要なことだと思います。特に、種子を食べる作物であるマメ類や、トウモロコシや小麦、ゴマなどの穀物、そして果樹・果菜類の栽培には、亜鉛は意識してコントロールしたいミネラルです。マジ鉄により積極的に亜鉛を吸収させ、効かせることで、高品質かつ病害虫に強く、ひいては人の健康を守っていきたいと思います。