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ミネラル第7回 植物とマグネシウム(苦土)

気になるマグネシウムの働き

<マグネシウム(化学式:Mg)>
マジ鉄の含有量 1.0%=10,000mg/kg(10,000ppm)

(働き)
・葉緑素(クロロフィル)の中心物質
・酵素の活性、炭水化物の代謝、たんぱく質合成のリボソーム構造維持
・光合成産物(糖)の果実や根への転流
・リン酸の吸収、運搬(リン酸はマグネシウムとペアで働く)

(欠乏症の要因)
・カリ過剰、窒素(アンモニウム)過剰、カルシウム過剰
・品種、管理(台木、整枝法など)の傾向
・土壌溶液への溶出が少ない(土壌消毒後や低pH)
・土壌のマグネシウム含有量の不足(10mg/100g以下)

動物と植物の「ポルフィリン」という物質

動物と植物の共通点として面白いのは、実は動物の血液に含まれる赤血球(ヘモグロビン)と、植物の緑色の元である葉緑素(クロロフィル)は、その構造がほとんど同じであるという事です。それは、一方は酸素を運ぶ役割、一方は光合成をする役割で、その働きは全く違うというのに、偶然にも?その構造体としての形が、ほとんど同じという、生命の不思議なのです。

動物と植物のもっているこの物質は、形が似ているものの、中にはめ込まれている金属元素が違います。具体的に言うと、前者は鉄(Fe)、後者はマグネシウム(Mg)を中心金属にしており、金属を保護するために、「ポルフィリン」という安全な入れ物(構造)によって守られた構造をしています。生き物にとっては便利であるが危険な金属を、安全に安定的に働かせる仕組みとなっているのです。

「ポルフィリン」という構造物は、生物が金属を安全に利用するときに大変重要な入れ物なのですが、ポルフィリンは、マジ鉄にも含まれているある特殊なアミノ酸を原料にして作られています。ポルフィリンがなければ、葉緑素は形成されませんから、マジ鉄が葉緑素の形成に重要な原料を提供していることが理解していただけると思います。

人の健康とマグネシウム

さて、人にとってマグネシウム(Mg)がいかに重要であるかは、知っておくほうが良いです。

人の体内に含まれるマグネシウムの約50%は、骨に含まれています。骨に貯蔵されていると言ったほうが良いかもしれません。十分なマグネシウムを、骨に貯蔵する理由は、それだけ大切や役割を担っているからです。

マグネシウムは、様々な生命活動を行うために必要な酵素の働きに欠かせません。人の体の中で起こるほとんどの生合成反応や代謝反応に、マグネシウムが関わっていると言っても過言ではないのですね。

下記に挙げるように、マグネシウムは、不足すると体には様々な不調があらわれます。主には筋肉の動きを正常に保つ働きをしているため、不足すると血液の流れや血圧に影響するようです。動悸、不整脈、心筋梗塞のほか、貧血、片頭痛、けいれんや足がつる、疲労感や無気力などの症状があります。

さらにマグネシウム不足が進行すると、血圧上昇、血糖代謝低下、動脈硬化促進、脂質代謝異常など、虚血性心疾患も引き起こされ、神経疾患や精神疾患が生じることもあります。様々な研究機関の疫学調査で、マグネシウムを多く含む食品をよく食べる人ほど、心疾患の発症リスクが最大で3割も低かったというデータや、糖尿病の発症率がおよそ4割も低かったという研究データが示されているんです!マグネシウムの重要性が分かりますね。

人の体には、鉄の約6倍ものマグネシウムが必要とされています。それだけ健康にとって重要という事ですが、日本人成人男性では1日300mgの摂取が望ましいと言われています。しかし、日本人の平均的な摂取量は、1日約100mg不足しているといわれており、野菜の役割は大きいと言えます。

マグネシウムが多く含まれる食品(東京慈恵会医科大学客員教授 横田邦信先生考案)
マグネシウムが多く含まれる食品
(東京慈恵会医科大学客員教授 横田邦信先生考案)

マグネシウムは、葉緑素の元であるので、葉に含まれることはもちろん、種子にも多く含まれています。具体的には、ホウレンソウやケールなどの葉物野菜、穀物の糠や胚芽の部分、大豆製品やアーモンドなどのナッツ類、ゴマ、昆布やワカメなどの海藻、海苔、ヒジキなどです。また、イワシなどの魚、アサリやハマグリなどの貝類、カキやエビなどにも豊富に含まれています。

白米や、精製された小麦粉は、せっかくのマグネシウムをそぎ落としてしまっているので、玄米を食べたり、分づきを落として、5分づきくらいにすると良いですね。パンを食べるなら、全粒粉パンにすると良いと思います。

土壌におけるマグネシウムとカルシウム、カリウムとのバランス

マグネシウムは、カルシウムやカリウムとのバランスが重要です。人には、カルシウム:マグネシウム=2:1の摂取量が理想と言われていますが、これは実は土壌も同じことです。つまり、植物にとってもそのバランスは、理想ということです。

肥料の用語では、マグネシウムのことを苦土(くど)といいます。マグネシウム(苦土)肥料には、「く溶性」と「水溶性」がありますが、それは遅効性と即効性というふうに考えればよいでしょう。

基本的には、雨で流亡しにくい「く溶性」の苦土(マグネシウム)を元肥として施用し、定期的にマジ鉄や本格にがり、または硫酸マグネシウムのような水溶性苦土を施用する管理を行うとよいでしょう。ただし、土壌pHが6.5より高い場合は、「く溶性」苦土は、土壌へ溶けにくくなるので、水溶性苦土をメインに対応することになります。

もう一つの注意点は、カリウムとのバランスです。肥料用語では、カリウムのことをカリ(加里)といいます。カリは、マグネシウムよりも優先して植物に吸収され、マグネシウム吸収の邪魔をするので、マグネシウムとカリのバランスも重要なのです。これも、マグネシウム:カリ=1:1〜2:1程度が良いとされています。

カリとのバランスで、マグネシウムが不足しやすいのは、大量の堆肥を施用した場合です。堆肥に含まれている大量のカリが、マグネシウムの吸収を邪魔してしまうのです。有機質の多い圃場では、積極的な苦土(マグネシウム)の施用が重要です。

「マジ鉄」のマグネシウムでバランスよく効かせる

マグネシウムが効果的に吸収されると、光合成が高まるためか、葉色は鮮やかな緑色になります。黒々とした緑の葉よりも、健康的な色です。

窒素過多、徒長を軽減してくれ、病害虫にも強くなります。

マジ鉄には、キレートマグネシウムが1.0%(10,000ppm)含まれています。葉緑素を作る際に、マジ鉄のマグネシウムと鉄とアミノ酸が一緒に吸収され、そのまま葉緑素の原料となります。

なお、苦土欠乏(マグネシウム欠乏)の症状が出ている場合には、マジ鉄の苦土(マグネシウム)だけでは足りませんから、硫酸マグネシウムを1〜2%濃度で水に溶かし、葉面散布や潅水を数回行ってください。

マグネシウムは、光合成能力だけでなく、糖の転流に非常に深く関わってきますから、栄養生長期にも、生殖生長期にも、切らさないように管理することが、とても重要なポイントですね。