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微生物談義第1回 「放線菌」vs「バチルス菌」

「放線菌」vs「バチルス菌」

なんと、センセーショナルなタイトルでしょう!(笑)

しかし、別に対立をあおっているわけではありません。どちらも、自然界や農場では、とても重要な働きをする微生物(細菌)です。今日は、少しだけその特徴や働きなどについて、お話をしましょう。

まず、分類についての説明です。細菌というのは、バクテリア、といわれることもあります。(バクテリアは、「真正細菌」のラテン語です。)

細菌は、「原核生物」といわれ、細胞の中にDNAが漂っている、つまり核膜を持っていない微生物のことです。(以下、単に「細菌」といいます。)
これに対して、真核生物というのは、細胞の中にDNAを収納する核膜を持っており、そのためにミトコンドリアや葉緑体などの古代共生菌由来の高性能な小器官をもっています。(DNAの収納ボックスができたので、いろいろな共生菌を飲み込んで、機能強化できたといわれている。)

微生物では、真核生物の代表が、カビ(糸状菌)やキノコ、また酵母になります。また植物や昆虫や動物などの目に見える大きな生き物は、ほとんどが真核生物になります。そのため、カビや酵母などは、分類学上は細菌とは呼ばず、菌類や真菌類といわれます。

土づくりする微生物 放線菌とバチルス菌

さてさて、その細菌の中でも、農業でよく耳にする微生物が、放線菌と、バチルス菌(バシラス菌)ではないでしょうか?

どちらも、難分解性の有機物を分解する能力に優れ、非常に環境変化に強く、また繁殖力が強いという特徴があり、さらには、私たち農家にとっては有難いことに、糸状菌に拮抗する種の多い、強い味方なのです。

有用な種の多い放線菌とバチルス菌ですが、自然界では、放線菌とバチルス菌は、どちらが多く生息しているのでしょうか?その答えは、簡単ではありません。つまり、環境によって違う、といえるからです。
土壌微生物の分布

農機具メーカーのクボタから提供されている、「バクテリア」についての、面白い資料がありましたので、下にリンクを記載します。後ほどご覧ください。この資料の2ページ目のイラスト図を見ると、放線菌もバチルス菌も、土壌表層から深層部、そして根圏、根域にかなり多く生息していることが分かります。

注目すべき根圏微生物は、放線菌

注目すべきは、根圏、根域には、バチルス菌よりも放線菌が優勢であり、特に地表から10cm以下の部分には、放線菌が圧倒的優勢になっています。バチルス菌の2倍以上の放線菌が生息しているのが分かると思います。これは、作物の土壌病原菌の抑制を考える上では、とても重要なことだと思っています。つまり、植物の根が張る部分である、地表から30cm深の部分の生育環境に適しているのは、バチルス菌よりも放線菌が優勢であり、土壌病原菌と微生物の力で拮抗するには、放線菌の力を利用するのが、効率的であるという事です。

実は、菌力アップの微生物設計で、放線菌群をメインに据えているのは、こういう理由があるからです。放線菌は、農業現場で、もっとも効果を発揮しやすい微生物なのです。土壌を放線菌でいっぱいの土づくりをすることによって、実際にカビ類(糸状菌)による病気の発生リスクは、かなり低減します。

菌力アップには、20種以上の有用な放線菌が含まれています。おっと、いけません。文字数が多すぎました。続きは、また次回!(笑)

(参考資料リンク)Kubota 「バクテリア」 仁王以智夫=東京大学農学部附属愛知演習林
https://www.kubota.co.jp/siryou/pr/urban/pdf/14/pdf/14_2_3.pdf
※2ページめのイラスト図をご覧ください。
※イラスト図の左端の茶色(胞子形成細菌)が主にバチルス菌です。そのほかクロストリジウム菌が含まれていると思われます。そして、右端の紫色が放線菌となっています。
※このイラスト図は、細菌数の比較ですから、重量で換算すると、放線菌の方が圧倒的に多いと思われます。
※記事中の「バチルス菌」には、乳酸菌などのラクトバチルス菌や、土壌に多い枯草菌や納豆菌を含めた意味で記述しています。