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微生物談義第2回 「放線菌」vs「バチルス菌」2話

バチルス菌は農業の役に立つのか?

前回の話では、放線菌のお話を少ししました。とても優秀な微生物ですね。

森の土壌中の、とくに植物の根がある、地表から30cm程度の深さの部分の微生物相を調べると、細菌の中でも、放線菌が優勢となっているという事です。根域に放線菌が多いという事は、バチルス菌よりも放線菌の方が、生存環境に合っているという事です。

放線菌が、有機物の分解、植物への栄養の供給を活発にしてくれるため、森の植物は肥料をやらなくてもすくすくと育ちます。そして、森では土壌病原菌がまん延しないことに、放線菌が大きく作用していることは間違いありません。

では、もう片方の細菌である『バチルス菌』は、農業や植物の生育の役に立たないのでしょうか??
バチルス菌を一生懸命撒いてるんですけど、、、というかたもいらっしゃるでしょう。
安心してください。このバチルス菌も、実は農業には非常に有用な細菌なのです。

生命力の塊 バチルス菌

バチルス菌の特長は、何と言ってもその生命力です。

彼らは、非常に強力な芽胞をもつ胞子を形成できるため、乾燥や高温、酸や貧栄養などへの耐性が非常に高い微生物です。通常の細菌が生存しにくいような厳しい環境でも、仮死状態のような形態で、厳しい環境を生き抜きます。そして、栄養と生育環境が整うと発芽し、ものすごい爆発力で増殖できる微生物なんです。

バチルス菌は、放線菌よりも「肉食」というイメージがあります。特に、たんぱく質が多い有機物を好んで分解し、ドロドロにして食べつくす、という働きを持っています。

ですから、たんぱく質の多い鶏糞や豚糞の堆肥には、バチルス菌が多く含まれております。(放線菌も多いですが)また納豆菌のように、ほんの数日で、大豆などのたんぱく質の塊を、柔らかく溶かす力を持っています。バチルス菌は、カビよりもはるかに小さい体でありながら、カビをも寄せ付けないほどの繁殖力を発揮してエサを食べつくすのです。

そのため、生育環境を整えてやることで、バチルス菌の活躍も期待できます。例えば、糸状菌の病原菌が増えるよりも先に、バチルス菌が増えて、その病原菌の繁殖が抑制されるという事は、理論的に期待できると思います。実際に微生物農薬で、バチルス菌が利用されているものも多く市販されています。

ただし、難点は、バチルス菌の好むたんぱく質豊富な栄養が不足してきたり、乾燥などの環境にさらされると、すぐに仮眠状態、仮死状態に移行し、働かなくなるという事ですね。「やる気のある時は、ものすごい働くけど、大体いつもはグータラ」という性格。そんな感じです。

菌力アップに含まれるバチルス菌

このように、通常、自然界では、バチルス菌と放線菌は共存している細菌で、どちらが優れている、という優劣は難しいのです。それぞれに生育環境や、適応して繁殖しているエリアが少し異なっているという事です。

実は、これまであまり公表していないのですが、菌力アップにもバチルス菌が入っています。

バチルス菌の仲間でも、ラクトバチルスといういわゆる「乳酸菌」、それからパニエバシラス菌(これは、植物生育促進性根圏微生物:PGPRとして有名です。病原性糸状菌やセンチュウ抑制の作用や、窒素固定、植物ホルモンの生産など行います。)、またセンチュウを食べると言われるパスツーリア菌など、バチルス菌の仲間が、11種含まれています。

菌力アップには、放線菌、バチルス菌がバランスよく含まれ、両者の得意な環境で増え、そして共存することができます。これは、他の微生物資材には見られない画期的な特徴です。また、菌力アップには、放線菌やバチルス菌以外に、考え尽くされたその他の微生物種が非常に多く含まれており(計250種以上)、それらが協力して働く微生物資材となっているので、様々な土壌環境に適用範囲が広く、また有機物の分解力、占有性(病原糸状菌との拮抗性)、また植物生長促進作用が高いと言えます。

※バチルス菌の中には納豆菌のように、強烈な繁殖力や酵素を作るものがあり、時に放線菌の活動を阻害する種があります。また、納豆菌が属する「枯草菌」には、植物の発根作用を停止させてしまう種もあります。菌力アップに含まれるバチルス菌は、そのようなことが無いよう配慮しており、放線菌の活動を阻害せず、放線菌と共生して働く種を選抜してあります。

菌力アップがさまざまな圃場環境でも効く理由

いかがですか?畑や土の環境は、千差万別です。農業において「本当は、どの微生物種が優れているか?」という問いは、そもそも愚問だということです。畑の土壌環境が、実に多様だからです。

このような発想をもっている微生物メーカーや科学者は、まだ非常に少ないようです。ですから、多くの微生物資材や微生物農薬などは、「特定の微生物」を入れてあり、その微生物の働きのみを期待する資材となっています。しかし、その微生物が適用環境にない場合は、「全然効かない」という事になります。これが、他社の微生物資材、微生物農薬の限界ということですね。

土の中で、多種多様な微生物が、共存して働き、植物と共生する自然な姿が、最も良いということですね。大切なことは、土の中に、生態系が構築されているかということです。菌力アップは、そのような開発思想で作られていますから、さまざまな環境、さまざまな植物で、効果を発揮する資材となっています。

とても、面白いですね。このようなことを知ると、これまで悩んでいた土壌病害や連作障害が嘘のように解決の方向へ進んでいきます。

では次回は、さらに詳しく、放線菌の特徴と、バチルス菌の特徴についてお話ししたいと思います。お楽しみに!

※本記事中の「バチルス菌」には、乳酸菌などのラクトバチルス菌や、土壌に多い枯草菌や納豆菌を含めた意味で記述しています。